男と女は全く別の生き物だ。それゆえに、スレ違いは生まれるもの。

出会い、デート、交際、そして夫婦に至るまで…この世に男と女がいる限り、スレ違いはいつだって起こりうるのだ。

-あの時、彼（彼女）は何を思っていたの…？

誰にも聞けなかった謎を、紐解いていこう。

さて、今週の質問【Q】は？

▶前回：イブのデートで、六本木の街に1人取り残された男。女がアッサリ帰ってしまった理由は…




数ヶ月前から、私たち夫婦の雲行きは怪しかった。そして年末に、遂に爆発してしまったのだ。

「和樹と結婚したこと、やっぱり間違っていたと思う」

売り言葉に買い言葉とは、まさにこのことだ。

「そんなこと言うなって…」
「だってそうでしょ？和樹は結局、何も変わらないんだよ」
「人はそう簡単には変わらないから。今年ももう終わりなんだから、喧嘩はやめよう」
「そうやって、いつも話をはぐらかす。和樹の悪い癖だよ」

でもこの時、私は和樹と本気で離婚する気なんてまったくなかった。ただの、いつもの痴話喧嘩だと思っていた。でも、時既に遅し。和樹の真剣な眼差しに、私はハッとした。

「有紗。そんなに言うんだったら、もう離婚しよう。子どももいないし、今がいいタイミングじゃない？」

この1週間後、私は本当に和樹から離婚届を突きつけられてしまった。

離婚なんて望んでいたわけではない。今回のことだって、ただの些細な喧嘩に過ぎない。でも和樹の決意は固かった。

果たして私たちの夫婦生活は、どこから歯車が狂ってしまったのだろうか…。


Q1：夫婦が結婚前にすべきだったことは？


和樹と結婚したのは、1年前のこと。出会いは共通の友人の紹介だった。

左右アンバランスな奥二重で、色白の塩顔はタイプど真ん中。そして身長も高くて稼いでいる和樹に、私がハマるのに時間はかからなかった。

「私、和樹と結婚したいの」
「うん、僕も考えてるよ」

当初から、そんな会話をしたことを覚えている。

そして交際は順調に進み、1年後にプロポーズをされた。この時私は27歳で、和樹は31歳だった。




両家への挨拶と顔合わせが終わり、私は和樹の妻になれることが心底嬉しかったし、結婚生活も順調そのものだった。

「有紗、今日のご飯はどうする？僕が作る？」
「うん、ありがとう」

和樹は料理が得意だったので、率先して食事を作ってくれた。特に週末は、和樹の手料理を食べながら家で晩酌するのが定番となっていた。

でもこれは、私が強要したわけではない。和樹が自発的にやってくれていたことだ。

「和樹、食事の用意大変じゃないの？」
「作るの好きだから。その代わり、洗い物頼んだ！」
「え…。洗い物のほうが面倒だから、嫌だよ。私が洗い物をしたら、和樹は絶対に文句を言うし」

正直、私は家事が嫌いだった。というよりも、一緒に暮らし始める前から気になっていたことだけれど、和樹はむしろ潔癖症過ぎるフシがあった。

「文句なんて言わないよ」
「いや、言うよ。グラスに水滴がついてるとか…」
「そんなこと言ったっけ？でもワイングラスは洗い終わった後、ちゃんと拭かないと」
「うるさいなぁ。小姑なの？」

和樹の神経質すぎる性格に、ついていけないことも多々あった。でも私は私なりに我慢していたし、頑張っていたと思う。それに些細な喧嘩がない夫婦なんていないと思う。




ちなみに苦手な掃除や料理も、和樹が「やってほしい」と言うときにはちゃんとやっていた。

「有紗、今夜も帰り遅いの？」
「うん。今日も接待なんだ。でも洗濯乾燥機は回しておくから」

私は営業職のため、接待も多い。だから夜出歩くことも多かった。和樹は外資系コンサル会社勤めで、彼も忙しそうだけれど、そこはお互いさま。それでも和樹が要求してくることは多々あった。

「有紗、洗面所を使い終わったら髪の毛は拭いてほしいんだけど」
「落ちてないよ、そんなに」
「気にならないの？」
「気になる人が拭けばいいでしょ」

和樹の潔癖症に付き合いきれなくなった私だけれども、ここで放置していたわけではない。

今の時代には、アウトソージングという解決策があったから。


Q2：夫が妻に対して耐えきれなかったことは？


でも家事代行を頼むことにしてから、夫婦仲は良好だった。この世の中、お金で大体のことは解決するものだ。

ただ土曜日の夜。

「ご馳走さまでした。とりあえずお皿はシンクに入れておけば、明日家事代行の人が洗ってくれるよね？」

使った食器をキッチンへ持って行くと、和樹は変なことを言い始めた。

「一晩、この状態で食器をシンクに置いておくの嫌じゃない？食洗機に入れればいいだけの話だし」
「え？何のための家事代行なのよ…やってもらえばいいじゃん」
「気になるから、やっちゃうわ。食洗機に入れるだけだから」

私は和樹のこの考えがよく理解できなかった。高いお金を払って人を雇っているのに、自分がやるんだったら意味がないと思ったから。

「でもそれだと、家事代行に高いお金払ってる意味なくない？」
「でも住み込みで24時間いるわけじゃないしさ」
「じゃあ日数増やす？」
「日数増やすなら、有紗も払ってよ。今は全額こっちが払っているし」
「それならいい」
「でしょ？だから少しは自分たちでやろう」

こんな会話は頻繁にあったけれど、大喧嘩をしたわけではない。それに仲も良かったし、私たちは将来の話もちゃんとしていた。




「和樹、子どものことなんだけど」
「うん。有紗はどうしたい？」
「私は今すぐ作ってもいいかなって思ってる」
「そっか。ただちょっと今僕の仕事が忙しいし、もう少し夫婦二人の生活を楽しみたいかな」

こればかりは二人のタイミングが合わないと、どうしようもない。和樹が欲しいと思ってくれるときまで、私は待つことにした。




大晦日前日、私たちは子どもの話をしながら大掃除をしていた。

「私たち二人の子どもは、絶対に可愛いよね」
「うん、そうだね」
「でも他の人たちは、もう妊活しているから…。私たちも作ると決めたら早めに病院とか行ったほうがいいかなって思うの。いつ作るのか、早く決めて欲しいな」

もしかして、子作りに関してプレッシャーをかけすぎたのだろうか。

「わかった。考えているから、ちょっと待ってほしい。有紗、とりあえずそこ拭いて」
「もう拭いたよ」
「じゃあ次はゴミをまとめて」
「はーい」

なぜならこの会話をした翌日、プチ喧嘩が勃発してしまったから。

突然和樹が、私の実家へ行くことを渋ったのだ。

「なんで？夫として最低限のこともできないの？自分の実家だけ行かせて、私の実家へ行かないのはありえないから」

私たちは二人とも東京出身だった。たしかに和樹のご実家は祐天寺にあり、私の実家は練馬区なので、若干遠いのはわかる。

「都内にいる限り、双方に挨拶をするのが常識でしょ？」
「そうだけど…。わかった、ごめん」

結局ここから話はさらに発展し、離婚の話になってしまった。

でも今から考えると、どうして彼が私の実家に来ることを嫌がったのかもわからない。今までそんなことはなかったから。

― 私の親が原因ってこと…？子どもを作るのが、そんなに嫌だったの？

結婚生活、わずか1年。何をどう間違ってしまったのだろうか。

▶前回：イブのデートで、六本木の街に1人取り残された男。女がアッサリ帰ってしまった理由は…

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夫が三行半を突きつけた理由は？