松本明子が事務所社長に「どうかやらせて…」と直談判。車4台を一括購入してキャンピングカーレンタルの副業を始めた理由
松本明子インタビュー 前編
タレントの松本明子さんは、昨年3月から軽キャンピングカーのレンタル事業を展開している。アイドル歌手としてデビュー後、タレントや女優として40年間、芸能界で活躍してきた松本さんだが、コロナ禍で仕事が激減し不安な毎日を過ごすことに。そんな時、数年前からハマっていたアウトドアの趣味をヒントに"副業"を思いついたという。インタビュー前編では、タレント業のかたわら事業を始めた経緯を聞いた。
インタビューに答えるタレントの松本明子さん 撮影/山本雷太
【コロナ禍で仕事がキャンセルに】
ーー松本さんがアウトドアにハマったきっかけを教えてください。
松本明子(以下、同) 3年くらい前に、健康と運動不足解消のために登山を始めたんです。当時、舞台で飛び跳ねたりする役をやって膝を痛めてしまって。筋肉をつけないと膝の痛みも収まらないと聞いて、ちょっとずつウォーキング、ハイキング、登山と広げていきました。
ーーこれまでいくつの山に登られたんですか?
40座くらいですね。最初の登山は神奈川の大山で、最近は中央アルプスの木曽駒ヶ岳に登りました。初めは、筋肉痛が3日間ほどとれなかったし膝もガクガク。トイレに入っても、「いてててて」としゃがめないくらい(笑)。でも、今はおかげさまで膝の痛みも解消しました。
山に登ると、日常の疲れやストレスを一気に解放してくれるんです。「日本に生まれてよかったー!」と思える原風景を目の前で見られる幸せは何事にも代えがたいです。生まれ育った故郷の高松市も自然あふれるところだったので、山に行くと子どもの頃を思い出させてくれるんですよね。すっかりハマってしまいました。
今秋登った中央アルプス・木曽駒ヶ岳にて 写真提供/松本明子
ーーその後、どうしてキャンピングカーのレンタル事業を始めようと思ったんですか?
2020年、新型コロナの緊急事態宣言が出た時、決まっていたロケの仕事が全部中止になってしまったんです。県境をまたぐ移動もダメだったので、地方のテレビ局の仕事もキャンセル。これは困ったな......と思っていました。
そんななか、時間を見つけては近郊の山に登っていました。秋口には初めての本格登山となる2000m級の北アルプス・唐松岳(長野県・富山県)に挑戦。登り始めて眼下に美しい八方池が見え、隣の白馬岳が鏡のように映って本当にすばらしい景色でした。
唐松岳を歩く間に、1000人くらいとすれ違ったと思います。女子もたくさんいて、みんなリュックやらテントやらを背負ってえっちらおっちら。山登りがブームになっているんだなと実感しました。
ただ、山登りって日数もお金もかかって大変なんですよね。列車代に宿泊代、レンタカー代と、泊まりとなるとお金もかかります。私は節約も趣味なので、都会からでも山登りがもうちょっと手軽にできないかなと思ったんです。
事業の着想を得たという唐松岳の登山
ーー節約好きの松本さんならではの視点ですね。
そこで、テントを置いた軽トラみたいな車があったらいいなと、夜な夜なスケッチブックにイラストを描いて考えていました。実際に探してみたところ、似た車を発見。それが、青森にあるカーショップが作っている「ザ・バグトラ」という車でした。
これは私の理想だ!と一目ぼれ。こんな車があったら、夜中に都内を出発して、車内で仮眠して、夜明け前から登り始めれば日帰りで登山に行ける。初めは自分が乗りたくて探した車だったんですけど、泊まりと移動を一緒くたにした、女性でも初心者でも運転がしやすい軽キャンピングレンタカーがあったらいいと思いました。
芸能の仕事が減ってしまったということもあり、これで副業のレンタカーをしたいと思い立ちました。
テントを設置した荷台で宿泊ができる「ザ・バグトラ」
ーーそこから、事業立ち上げまではどのような道のりだったのですか?
早速、バグトラを作っているショップに電話したんです。「もしもし、松本明子と申しますけれども......」と言ったら、社長さんが疑いの声で「本当に松本さんですか?」と(笑)。そこで、提携の神奈川にあるお店を紹介してもらい、すぐにそのお店へアポなしで行きました。
そこで、バグトラともうひとつ、アメリカンバス風に塗装した軽バンにも一目惚れしちゃって。この2種類の車をレンタカーできたらいいなとどんどん夢がふくらみ、結局、それぞれ2台ずつを購入しました。
レンタカー事業の経営にあたっては、地元・香川の小中学校の同級生で商社マンの友人に相談。そのつながりで、キャンピングカーのレンタカー事業を行なっている「バンライフレンタカー」を紹介してもらい、この会社のフランチャイズ店として契約させていただきました。
ならば、ということで、今度は(所属事務所の)ワタナベエンターテインメントの社長室に直談判へ。社長に「本業とは違う仕事ですけれども、将来を見据えてどうかやらせていただけないでしょうか」とお願いしました。
アメリカンスクールバスをイメージした「ブギーライダー」
ーーそして、ついに「オフィスアムズ(バンライフレンタカー東京杉並店)」を東京・杉並区に開設されました。
山梨や長野に人気の山が多いので、最初は甲府や松本の駅前でやったほうがいいのかなと思っていました。その時に、キャンプのYouTubeでも人気の芸人のヒロシさんに電話して、「キャンプや山登りのためのレンタカーをやろうと思っているんですけど......」と相談したんです。
すると、ヒロシさんから「駐車場代などは高いかもしれませんけど、絶対都内でやるべきです。大学生や若いカップル、夫婦で、免許は持っているけど車を持ってない人たちのために手軽にアウトドアができるレンタカーをぜひやってください」と背中を押されました。
そこで、新宿からもアクセスがいい方南町で、事務所の物件と駐車場を探しました。店舗オープンは、2021年3月でした。
ーースタッフはいるんですか?
スタッフは私を入れて3人です。先ほどの同級生に相談役として入ってもらいつつ、現場は私と、芸能のほうで長年送り迎えをお願いしている方の2人で回しています。
ーー初期費用はいくらくらいかかったんですか?
初期費用の大半は車代ですね。新車代はローンを組まずに定期預金を崩して支払い。初期投資は思いっきりいきましたね(笑)。あとはどうしてもかかってしまう、駐車場代や事務所の家賃など。あとあと、保険代や車両の点検費用もかかってきました。
ーー滑り出しは順調でしたか?
事務所で電話の前にずっと座って、今日も電話が鳴らなかったな......という日々。最初の3カ月くらいはまったく予約がありませんでした。その後、口コミやテレビで紹介されるたびに少しずつ予約が増えてきました。
今は1台減らし3台で営業していますが、おかげさまで毎週末は3台のうちどれかは予約をいただいている状態です。
もちろん不安もありましたけれども、根拠のない自信というか、「思い立ったら進むしかない!」という性格もあって、ここまで続けてこられましたね。
インタビュー後編<若い人は私を知らない...松本明子の副業・キャンピングカーレンタルは知名度より車のよさで人気?「コロナ禍のピンチをチャンスに」>
【プロフィール】
松本明子 まつもと・あきこ
1966年、香川県生まれ。1982年、日本テレビのオーディション番組『スター誕生!』で合格し、翌年、歌手デビュー。その後、『進め!電波少年』『DAISUKI!』など人気番組に出演。現在まで、バラエティー番組、ドラマ、映画、舞台と幅広く活躍。コロナ禍で登山などのアウトドアに傾倒し、2021年、副業としてキャンピングカーレンタル事業をスタート。東京・方南町にオフィスアムズ(バンライフレンタカー東京杉並店)を構える。