エンブラエルが開発を進めている「革命的な設計」をもつ新型旅客機設計案に新たなものが出現しました。より大型になりながら、最大の特徴である「革命的な設計」はそのままです。

2タイプの旅客機案が「新コンセプト」に

 2022年7月、ブラジルの航空機メーカー、エンブラエルが公式SNS上で「革命的な設計(revolutionary in design)」と紹介した新型旅客機設計案「ENERGIA」。2022年12月5日、このシリーズの新たなコンセプト案が公開されました。どういった旅客機を検討しているのでしょうか。


「ENERGIA HYBRID」の19人タイプ(画像:エンブラエル)。

「ENERGIA」はそれぞれエンジン方式やサイズが異なる、4つのサブタイプで構成。この原案は2021年に公開されました。このうち今回の発表でコンセプトが改められたのは、9人乗りで燃料(熱)と電気で動くハイブリッドタイプの双発機「ENERGIA HYBRID」と、19人乗りで水素燃料電池を搭載し、電気推進で動く双発機「ENERGIA H2 FUEL CELL」の2タイプです。

「ENERGIA HYBRID」は、当初9人乗りを予定していたのが、19人乗りと30人乗りの大型タイプの開発を検討するとのこと。エンジンは当初発表と同じハイブリッドタイプが採用される方向性です。実用化は2030年代初頭以降を目指しています。

 ここでは、従来の燃料と同等のクオリティや規格を維持しながらも、たとえば動植物油脂や廃食油、都市ゴミなど、化石燃料以外を原料として用いられたジェット燃料「SAF(持続可能な航空燃料)」を使用した場合、CO2排出量を最大90%削減できるとしています。

もう1機はどう変化?設計の最大の特徴は「そのまま」…なぜ?

 一方「ENERGIA H2 FUEL CELL」は、当初19人乗りを予定していたのが、それに加えて30人乗りの大型タイプの開発を検討するとのこと。水素燃料電池を搭載した電気推進で飛行することで、二酸化炭素排出をゼロとします。実用化は2035年以降を目指しています。


「ENERGIA H2 FUEL CELL」の30人タイプのイメージ(画像:エンブラエル)。

 これらの2タイプでは、コンセプトをそのままに機体の大型化が検討される形となりました。一方で、同社が掲げ続けている「革命的な設計」の部分は、継続して残っています。それは、エンジンの配置です。これらはプロペラが胴体最後部にある「リアエンジン機」なのです。

 エンブラエルでは2021年にこの機の開発原案を公開したときから、「リアエンジン」のスタイルを採用しています。ただし、「リアエンジン機」はジェット機などでは一般的ではあるものの、プロペラ機の場合、まず見られないユニークな仕様です。

 これについて過去に、エンブラエルの商用航空事業のCEO(最高経営責任者)アルジャン・マイヤー(Arjan Meijer)氏が公式Twitterで、「(リアエンジンのターボプロップ機とすることで)従来機よりも高速で、運用コストが低いほか、客室内の騒音を低減できる」とコメント。今回の2タイプの新たなコンセプト案でも、このもっとも特徴的な部分は踏襲されており、環境負荷の軽減はもちろん、客室の快適性の向上も図っていることが窺えます。

 エンブラエルは今回の新コンセプトは「まだ評価段階」にあるものの、50年にわたる技術的専門知識やエンジンメーカーとの共同研究に基づいたものとのこと。同社は「これらの2モデルの研究は、二酸化炭素排出ゼロへ、技術の観点からも現実的で、かつ経済性の面でも実現可能な可能性が高い、賢明な出発点だ」としています。