ムードメーカーの板倉滉はスペイン戦を前に色めき立つ。「次の1試合で帰るわけにはいかない!」
コスタリカに敗れ、第3戦のスペインには勝つ、もしくは引き分けてドイツ対コスタリカの結果に委ねるか──という厳しい状況に置かれている日本代表。ドイツ戦からコスタリカ戦までの間とは、ムードは違ったものに感じられる。
コスタリカ戦翌日の11月28日は、練習が最初から最後まで公開され、試合に出たメンバーと出ていないメンバーが分かれてメニューをこなした。
ドイツを封じた板倉滉の守備はスペインにも通じるか
一方で、広報から発表があったのは、前日のコスタリカ戦で遠藤航が右ひざを痛め、病院に行ったということ。病院に長くいたわけではなく(おそらく特別な治療ではなく検査)で、28日の練習は休むということだけが発表された。
遠藤の具体的な症状について話はなかったが、森保一監督が初戦、第2戦とフル出場させチームの主軸と考えて間違いない選手の離脱は大きい。冨安の復帰と遠藤の不在では、プラスマイナスゼロだ。また、ドイツ戦で負傷し左もも裏の痛みをかかえる酒井宏樹も、引き続き練習には不在だった。
29日、30日の練習は冒頭15分のみの公開。この15分でわかるのは、誰が練習に出席しているか、どんなテーピングをしているか、もしくはしていないか、髪色は変わってないか、という程度。29日の練習では冨安が合流し、酒井と遠藤は不在だった。普通に考えれば、このふたりは「スペイン戦は回避」という可能性が高い。
気になったのは、練習がとにかく静かだということだ。単に落ち着いて練習を行なえているということなのか、それとも早くもスペイン戦に向けて高まっていることの証なのかはわからない。
スペイン戦の戦い方はドイツ戦と同じムードメーカーのひとりでもある板倉滉も、取材対応では引き締まった表情を見せていた。基本的には勝たなくてはいけない状況でスペインと対戦する──。厳しい試合になるだろうが、サッカー選手冥利に尽きるというものでもある。
「いいですよね。この状況でスペインを倒していけたらね、さらに盛り上がるし、日本としても勢いがつくので、最高の状態でスペイン戦はできるんじゃないかなと思います」
景気よくそう話す。戦い方については、ドイツ戦と同様引いて守ることと、守ったうえでチャンスを狙うこと、セットプレーは大切にしたいと話す。
「やっぱりゼロで抑えたいし、ちゃんと守っていれば間違いなくチャンスはあると思っているので。チャンスが来た時に失点していない、という状況を作りたいですね。スペイン相手なので、ブロックを引いて守る展開が多くなるとは思う。僕的にはセンターバックなので、サイドでやらせたくないなと」
話から察するに、イチかバチか前から取りに行くようなことはせず、じっくり引いてチャンスをうかがうことになりそうだ。また、相手の強烈なプレスも警戒しているが、その分チャンスはあると見ている。
「セットした状態からのプレスも早いし、もちろん奪ったあとの切り替えもすごく早いので、逆に僕たちがいい状況で奪えた時はチャンスになるシーンもあるなと。奪ったあとは、特に大事に思い切ったプレーをしていかないといけないな、というのはあります」
落ち着いて話すなか、少し色めき立ったのは「明日が(本大会)最後の試合になるかもしれないが、悔いは残したくないのでは?」という質問を受けた時だった。
「いやー、いやいやいや、次の試合を最後にできないですよ」
質問の意図を汲みつつも、真っ向から否定した。
「思いきってやるだけだと思うし、勝てば 16強にいけるので、まずはポジティブに捉えていいと思うし、このタイミングでスペイン相手に試合ができるって、勝ち上ったあともすごくいい勢いにつながると思う」
そう強気に言い放った。
板倉に最終ラインは託された彼だけではないが、板倉は今大会が初のW杯。にもかかわらず気負いのない、いつもどおりのプレーができている数少ない選手のひとりだ。
9月に負傷し、約2カ月試合をしてない状況でカタール入り。だが、ここまでの2試合で、そのブランクを感じさせないプレーぶりを見せている。
W杯の舞台について、独特の言い回しでその特別さを表現する。
「すばらしい舞台だな、というのは感じるし、もちろんその緊張感とか雰囲気というのは初めてですけど、ものすごいパワーがあるなという印象です。
あとは、カタールにいて日本の状況はわかってないですけど、盛り上がってるって聞いています。僕自身も4年前は逆にファンとして見てた側なので、その盛り上がりも覚えてるし、今ピッチに立てているということはうれしいですけど、逆に責任が沸いてるというか。
僕たちの力でみんなを喜ばせたいなという思いがあるし、日本を背負ってここに来ているので、次の1試合で帰るわけにはいかないな、という思いです」
「パワーがある」とW杯を表現しつつ、改めてスペイン戦での必勝を誓った。
基本的には勝たねばならないスペイン戦──。攻撃の前に守備が崩れては、本当に先が立たれてしまう。
決してひとりで守るわけではないが、最終ラインで安定感を見せる板倉は、スペイン戦でも頼もしい存在となりそうだ。