堅守が持ち味の真砂寧々(履正社高)

 11月23日、東京ドームで開催された「ジャイアンツ・ファンフェスタ 2022」。コロナ禍で3年ぶりのファン感謝祭は、3万8595人(球団発表)が訪れる盛況ぶりだった。

 ドラフト1位指名の浅野翔吾(高松商高)の背番号「51」初披露など多彩なイベントが行なわれたなか、2023年シーズンから本格始動する「読売ジャイアンツ女子チーム」のメンバーも発表された。

 女子チームには、16選手が入団。浅野と同じく香川県出身のホープが加わることになった。履正社高女子硬式野球部の遊撃手、真砂寧々(まさご・ねね)。浅野は、中学時代に対戦したこともある旧知のライバルだ。

 11月3日には、女子高校野球選抜チームの一員としてイチローが率いる草野球チーム「KOBE CHIBEN」と東京ドームで対戦し、真砂は「投手・イチロー」から1安打を放った。背番号「9」を背負う真砂はいったいどんな選手なのだろうか。浅野やイチローのエピソードも交えながら、インタビューを行なった。

"イチローファン"だからこその攻略法

「実は打席での記憶はあまりなくて......振ったらレフト前に落ちたという感じでした。打った時にたくさんの方々が拍手をしてくれたし、こんなに多くの人が女子野球を見てくれていることに感動しました」

 真砂は「投手・イチロー」から技ありのヒットを放った感想をこう話しだす。

 野球をしていた父や兄に憧れ、幼稚園児の時から地元の小豆島のグラウンドでベースランニングに参加した。小学1年で男子に混じって野球を始めた時から、「動画を見てマネをしていた」のが、イチローだった。いわゆる"イチローファン"だからこそ、「KOBE CHIBEN」のエースを務めるイチローの配球も分析していた。

 では、真砂のイチロー攻略法とは?

「右打者に対してはコントロールもいいですし、インサイドへのスライダーもすごくキレがあります。ただ、私のような左打者には少し苦手意識があるようにも感じたので、高めに手を出さなければ打てると思いました。ストレートを狙っていました」

 真砂は第1打席から、積極的に振って合わせていく意識で、投手横を抜けるゴロ。一塁駆け抜け4秒を切る俊足を見せるも、遊撃手の松坂大輔の攻守に阻まれた。

 だが、2打席目は「詰まったら負け」と、体重移動してから前で打つ技ありのバッティングでレフト前にポトリ。これは、イチローの特長でもある打撃の技術だ。みごと、初回に適時3塁打を放った、同じく巨人女子チームへ加入する森崎杏(福知山成美高)に続く、"イチロー撃ち"を成し遂げてみせた。

「(コロナ禍で)高校入学時は小豆島の自宅でできることから始めた高校野球でしたが、周囲の仲間がいたからこそ、ひとりでできない経験も積めました。(女子高校野球選抜チームに)参加したい選手が多くいるなかで行かせてもらって感謝してますし、これからも仲間を大切にしていきたいと思います」

 高校3年ではキャプテンに就任。真砂は、チームを堅実な守備と粘り強い打撃で引っ張り、仲間とともに全国大会で8強入りを果たした。

 そして履正社のユニフォームを着ての最後の試合は、東京ドーム。「守備の時もブラスバンドの音楽に合わせてステップを踏みながら守ったり、すごく楽しめた」と笑顔で振り返った。


巧みなバッティングも魅力だ

浅野翔吾はずっとライバル

 真砂には、ライバルとして強く意識する怪物がいる。親同士が知り合いで、小学生の時から互いを知る、浅野である。

 真砂は小豆島中の野球部で、主力選手として四国総体出場も果している。中学3年春の練習試合では投手を務め、屋島中の浅野と対戦した。真砂が「様子を見ようと思って投げた」というカーブを、浅野にレフト場外へと運ばれた。

「当時からすべてにおいてバケモノだった」と浅野の実力を認める。女子野球をできる環境を求めて香川を離れ、大阪へ向かった高校時代には、浅野が活躍する姿を見て大きな刺激を受けた。

「見た目はゴツいですが、内面は真面目で一生懸命に研究していることがプレーからも見えます」

 再会すれば、打撃理論や練習内容、将来の夢、時にはキャプテン同士の労苦を分かち合う同志でもあった真砂と浅野。では、同じ巨人のユニフォームに袖を通す彼女に心境とは。

「近くにライバルがいるのは安心するし、心強いです。自分ではこれからもライバルだと思っています」


インタビューに応じた真砂

大きな夢を抱いて

「高校3年になってから、『私には野球しかない』『挑戦できるなら絶対に行きたい』と思ってつかみにいきました」

 真砂は、並々ならぬ意気込みを持って巨人女子チームのトライアウトを受験。そして、みごと入団をつかみ取った。

「モットーである『エンジョイ・ベースボール』を忘れずに自分を強化して、女子でも男子のようなプレーができることをみせたい。侍ジャパン女子の代表入りも目標のひとつです」

 もっと先の未来には、大きな夢がある。

「皆さんから応援され、憧れられる選手になりたい。そして小豆島に野球を広めて、楽しさを知ってもらいたいんです」

 巨人女子チームの初代監督で元巨人投手の宮本和知は、小豆島で野球教室を開いた際、真砂を教えた縁がある。宮本のように、小豆島で「野球伝道師」となるべく、真砂は巨人女子チームとともに新たな歴史を紡いでいくーー。

(文中敬称略)

真砂寧々 まさご・ねね
2004年、香川県・小豆島生まれ。幼少期から野球を始め、履正社高女子野球部時代には全国高校女子硬式野球選抜大会でベスト4。堅守と打撃技術が強み。2023年からは内野手として「読売ジャイアンツ女子チーム」への入団が決まっている。右投左打、背番号は9。