激闘来たる!カタールW杯特集

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 今回のカタールワールドカップに出場する日本代表のうち、前回のロシア大会から引き続きメンバーに名を連ねる選手の数である。

 ともに4大会連続の出場となる川島永嗣(ストラスブール)と長友佑都(FC東京)を筆頭に、3大会連続の酒井宏樹(浦和レッズ)と吉田麻也(シャルケ)、そして2大会連続の遠藤航(シュツットガルト)と柴崎岳(レガネス)の6人だ。

 2大会ぶりのメンバー入りとなった権田修一(清水エスパルス)を含め、ワールドカップ経験者は7人のみ。初出場組が19人と、メンバーは大幅に入れ替わることとなった。


ロシアW杯では3試合に先発した当時25歳の昌子源

 平均年齢28.3歳と史上最も高齢だった前回のロシア大会では、長谷部誠(フランクフルト)をはじめ、本田圭佑(当時パチューカ→無所属)、岡崎慎司(当時レスター→現シント・トロイデン)らオーバー30の選手が多く、カタール大会に向けて日本代表が"過渡期"にあったのは事実。

 とはいえ、ロシア大会当時、26歳以下(1992年生まれ以降)の中堅・若手と位置づけられる選手たちは、4年後のカタール大会で主力となることが期待されていた。

 監督が代われば選考基準が変わるとはいえ、新監督(森保一)は西野朗監督の下でコーチを務めていた人物であり、彼らの能力や経験を高く買っていたはずだ。しかし、結果的にカタール大会のメンバー入りは、遠藤と柴崎のふたりにとどまった。

 ロシア大会で1992年生まれ以降の選手は、全部で8人。遠藤(浦和/当時、以下同)と柴崎(ヘタフェ)のほか、植田直通(鹿島アントラーズ)、昌子源(鹿島)、宇佐美貴史(デュッセルドルフ)、武藤嘉紀(マインツ)、大島僚太(川崎フロンターレ)、そして中村航輔(柏レイソル)である。

 なかでも、昌子への期待は大きかっただろう。ロシア大会では4試合中3試合にフル出場。ベスト16進出の立役者のひとりだった。

最年少23歳で選出されるも...

 CBのタレント不足が指摘されていた当時、年齢的にも昌子が次の日本代表を背負って立つ存在だと思われていた。しかし、ACL優勝を置き土産に鹿島アントラーズからフランスに飛び立ったあたりが、ケチのつき始めだったかもしれない。

 移籍先のトゥールーズでは当初は主力として活躍しながら、翌シーズンに負傷に悩まされ、出番を失った。2020年に中学時代を過ごしたガンバ大阪に"復帰"するも、チームの低迷も相まって、その力を発揮できなかった。

 森保一監督率いる日本代表には2019年に3試合出場するも、以降はケガの影響でメンバーから遠ざかり、その間に冨安建洋(アーセナル)をはじめとする東京五輪世代のCBが台頭。2021年6月に代表復帰を果たすも、同月に行なわれたキルギス戦が森保ジャパンにおける最後の代表出場となった。

 同じCBの植田も、昌子とともに最終ラインを支える存在となるはずだった。ロシア大会での出場はなかったが、高さと強さ、スピードも兼ね備えた規格外のCBには大きな期待が寄せられたものだ。

 ロシア大会終了後にベルギーのクラブ(サークル・ブルージュ)に移籍した植田は、森保監督のチームにもコンスタントに招集されてきた。若手が主体だった2019年のコパ・アメリカでは3試合にフル出場している。しかし、そのポテンシャルはクラブと同様に代表でも開花されたとは言いがたく、ついには主軸となれずにカタールの地にはたどり着けなかった。

 ロシア大会では23歳と、最年少としてメンバー入りしていた中村も、この4年間で苦しんだひとり。ロシアでは植田と同様に出番はなかったが、当時川島が35歳、もうひとりのGK東口順昭(ガンバ大阪)が32歳であることを考えれば、4年後に守護神として日本のゴールマウスに立っていたとしてもおかしくはなかった。

 しかし、柏レイソルでハイパフォーマンスを続けていた中村は、ワールドカップ後のシーズンで負傷を強いられ離脱。J2で戦った2019年こそフル稼働するも、2020年には再びケガに悩まされ、なかなかピッチに立つことができなかった。

 ポルトガルのポルティモネンセに移籍後もチャンスを掴めず、ようやく今季(2022-23シーズン)に入って出場機会を増やしているが、アピールには遅かった。結局、森保体制下では2019年のE-1選手権の2試合出場に終わった。

もしあの時ケガしなければ...

 ケガに苦しんだのは、大島も同じだろう。川崎フロンターレの10番は、黄金期を築くチームのなかでもその技術の高さは群を抜いている。もっともその能力とは裏腹に、ケガとは切っても切れないキャリアを過ごしている。

 コンディションさえ整えば、日本の大黒柱になれる存在だろう。今季のJリーグでもピッチに立てばハイパフォーマンスを見せているが、稼働率は上がらなかった。結局、森保監督就任後の日本代表での出場は中村と同様に、2019年のE-1選手権の2試合のみ。川崎勢の多い今の日本代表にこの男が加わっていれば、果たしてどんなチームになっていただろうか。

 ドイツで長くキャリアを築いた宇佐美は2019年にガンバ大阪に復帰するも、ここ数年は結果を出せないチームにおいて自身の調子も上がらず。今季はアキレス腱断裂の大ケガにも見舞われた。

 宇佐美と同様、長くヨーロッパに身を置いてきた武藤は2021年からヴィッセル神戸でプレー。Jリーグでは質の高さを示し、今年7月にはE-1選手権のメンバーに選ばれながら、負傷で辞退し、アピールの機会を失った。

 森保体制下で、宇佐美は1試合、武藤は4試合の出場に終わっている。久保建英(レアル・ソシエダ)をはじめとする東京五輪世代の活きのいいタレントの台頭もあり、実績十分の実力者も2度目のワールドカップには届かなかった。

 4年の月日のなかで、次々にタレントが台頭し、新陳代謝が促され、序列は変化する。それほど、サッカー界の進化のスピードは速い。

 そう考えると、長年日本代表であり続ける川島、長友、吉田、酒井のベテラン勢はもっとリスペクトされるべきだろう。経験が求められるポジションとはいえ、想像を絶する努力を続け、自らを律し、トップレベルをキープし続けてきたのだから。

 日本代表は安住の地ではない。4年後の日本代表も顔ぶれは大きく変わるだろう。そのメンバーに想いを馳せながら、まずはカタールで戦う26人に最高のパフォーマンスを期待したい。