ガラスの天才、マケレレ後継者、アフリカ王…。カタール行きを逃した12人のスター選手たち
ワールドカップという大会は、おそらくすべてのサッカー選手にとって、子どもの頃から憧れた夢の舞台だ。
しかし、そんなサッカー人生のハイライトを目前にしながら、ある選手はケガという不運に見舞われ、またある選手は栄枯浮沈とばかりに急成長を遂げる若手にポジションを奪われ......そんな例も決して少なくない。
ワールドクラスの知名度を持ちながら、カタール行きを逃し、塗炭の苦しみを味わうことになった男たちを紹介していこう。
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セレソンに選ばれなかったロベルト・フィルミーノ
<ロベルト・フィルミーノ(ブラジル/FW/リバプール/31歳)>
リバプールの大エースは同クラブに数々のタイトルをもたらしてきたが、ブラジル代表からは2021年のコパ・アメリカを最後に遠ざかっていた。今年9月の親善試合ガーナ戦とチュニジア戦で1年2カ月ぶりに代表復帰を果たしたものの、その2試合でも出番はなし......。カタールへの道は完全に閉ざされた。
フィルミーノの実力を熟知するリバプールのユルゲン・クロップ監督は「正直なところ、彼は(カタールW杯ブラジル代表メンバーに)値すると思う。ボビー(フィルミーノの愛称)のような選手を外すことができるほど、ブラジル代表は大変すばらしく、才能にあふれたチームなのだろう。(フィルミーノを外したことは)狂気の沙汰だ」と驚きを隠さなかった。
<ポール・ポグバ(フランス/MF/ユベントス/29歳)>
今夏マンチェスター・ユナイテッドから7シーズンぶりに古巣ユベントスへカムバック。しかし、プレシーズン中に右ひざを痛め、当初は保存療法での回復を目指していたものの、9月に入って一転、手術を受けることになった。
リハビリ期間を考えるとその時点でワールドカップへの参加は不透明という状況だったが、10月末になって大会の欠場が正式に決まった。2018年ロシア大会の決勝でも1ゴールを挙げ、20年ぶりにフランスへ優勝カップをもたらした中盤の王様は、今大会をピッチ外から眺めることになる。
<エンゴロ・カンテ(フランス/MF/チェルシー/31歳)>
フランス代表の先輩クロード・マケレレを彷彿とさせるボール奪取で、中盤に安定感をもたらす名ボランチ。8月中旬以降、ハムストリングの故障でピッチに立てない状態が続いており、ドクターと相談した結果、10月に入って手術を受けることを決断した。
フランス代表のディディエ・デシャン監督は「彼がいないということは、チームにとって弱体化を意味する。エネルギーと経験を失うのだから」とコメント。もうひとりの中盤の主軸ポール・ポグバの欠場も決まり、同監督は頭を抱えているだろう。
<マルコ・ロイス(ドイツ/FW/ドルトムント/33歳)>
世界に広く知られる選手でありながら、これほど数多くのビッグトーナメントと縁がない人物は、彼以外に存在しないかもしれない。おそらく今回がキャリア最後のワールドカップとなるはずだったが、その望みは足首の負傷によって潰えてしまった。
2011年10月にドイツ代表デビューを飾り、10年以上にわたって第一線で活躍してきた一方、ロイスのプロ人生はケガとの戦いだった。それが「Aマッチ48試合」という少なさにも表れている。2014年ブラジルW杯、2016年EURO、2020年EUROと、国際大会欠場は今回で4度目。「ガラスの天才」はまたも大舞台のピッチに立てなかった。
<マッツ・フンメルス(ドイツ/DF/ドルトムント/33歳)>
ドルトムントのDFラインを束ねるベテランも涙を飲んだ。ブンデスリーガ、欧州チャンピオンズリーグの双方で高い守備力を発揮し、順調なシーズンを過ごしていたが、あえなくW杯メンバーから落選してしまった。
ドイツ代表のハンジ・フリック監督は「(メンバーを選出することは)簡単な任務ではなかった。マッツはいいシーズンを過ごしているし、(落選に)もちろん失望していた」と前置きしつつ、「しかし我々には、高いクオリティを持ち、CBを本職とする選手が4人いる。そして未来にも目を向けて、より若い選手を選ぶことにした」とフンメルス選外の理由を語った。
<リース・ジェームズ(イングランド/DF/チェルシー/22歳)>
チェルシーのユース育ちで、各年代のイングランド代表を経験してきたエリートSB。初のワールドカップ出場を夢見ていたが、10月11日の欧州チャンピオンズリーグ、ACミラン戦でひざを負傷してしまった。
ワールドカップ出場をあきらめずリハビリに励んでいたが、11月9日に「ケガをした時から、ワールドカップへの参加は厳しくなるのではないかと思っていた。出場のために想像以上の努力をしてきたし、チームを助けられると信じていた」とインスタグラムに更新。メンバー外になった無念さを書き込んだ。
<チアゴ・アルカンタラ(スペイン/MF/リバプール/31歳)>
1994年のアメリカW杯を制したブラジル代表MFマジ--ニョを父に持ち、バルセロナ、バイエルン、リバプールと欧州各国の強豪クラブに所属してきた2世フットボーラー。完璧な軌道で味方に到達するパスと、まるで足に吸盤でもあるかのようなトラップは、もはや芸術と呼ぶにふさわしい。
イタリアで生まれ、ブラジルのフラメンゴを経由して5歳の時に家族とともにスペインへ。スペイン代表の各カテゴリーを経験し、2011年にA代表デビューを果たした。2015年頃から常時招集されるようになったが、昨年開催された欧州選手権を最後にスペイン代表とは縁がなくなっていった。
<セルヒオ・ラモス(スペイン/DF/パリ・サンジェルマン/36歳)>
レアル・マドリードで数々のトロフィーを獲得し、スペイン代表ではAマッチ180試合に出場して2010年の南アフリカW杯も制したベテランDF。昨シーズンはケガもあって新天地パリ・サンジェルマンで順風満帆とはいかなかったものの、今季は先発の座を確保していた。
カタール行きが実現すれば2006年ドイツW杯から5大会連続でのワールドカップ出場だったが、その夢も叶わなかった。ただし、スペイン代表メンバーが発表された直後、自身のインスタグラムを更新し「頑張れ!スペイン!」とエールを送っている。
<サディオ・マネ(セネガル/FW/バイエルン/30歳)>
2019年と2022年にアフリカ年間最優秀選手を受賞したセネガルのエースストライカー。6年間所属したリバプールを離れて今季から3年契約でバイエルンの一員となったが、11月8日のブンデスリーガ1部ブレーメン戦で右足の腓骨を負傷してしまった。
当初はワールドカップの序盤を欠場し、途中から復帰できるという見方もあった。しかし、手術が必要であることが判明し、大会開幕が目前に迫った17日の夜、インスブルックでメスを入れることに......。大黒柱の離脱によるセネガル代表の戦力ダウンは計り知れない。
<ジョルジニオ・ワイナルドゥム(オランダ/MF/ASローマ/32歳)>
2014年からオランダ代表のレギュラーを張っていたワイナルドゥムだが、2021年夏のパリ・サンジェルマン移籍から歯車に狂いが生じ始めた。リバプール時代のような圧倒的な存在感に陰りが見え、出場機会は次第に減少。威信を取り戻すべく、今シーズンはASローマへのレンタル移籍を選んだ。
しかし、移籍直後の8月に脛骨骨折という大ケガに見舞われ、復帰時期は「2023年以降」という診断結果に......。ワールドカップに出場するという野望は、夏の時点で早くも崩れ去ってしまった。
<ディオゴ・ジョッタ(ポルトガル/FW/リバプール/25歳)>
10月中旬のマンチェスター・シティとの大一番で、終了間際に負傷退場。正確なフィニッシュだけでなく、周囲の状況を素早く判断して味方の得点をお膳立てできる攻撃のキーマンが不在となったことは、ポルトガル代表にとって大きな痛手だ。
手術の必要こそないものの、リバプールのクロップ監督は「数カ月の離脱になる。彼にとっても、我々にとっても、ポルトガルにとっても、とても悲しい知らせだ。ふくらはぎの筋肉に、かなり深刻な怪我を負っている」と語り、本人も「夢は最悪の形で終わってしまった。最後の1分で、ひとつの夢が崩れ落ちた」と嘆いた。
<ジオヴァニ・ロ・チェルソ(アルゼンチン/MF/ビジャレアル/26歳)>
2021年のコパ・アメリカ優勝にも大きく貢献し、今のアルゼンチン代表で最も重要な選手のひとり。トッテナム・ホットスパーから今季、ビジャレアルに期限つき移籍したラ・リーガで悲劇が訪れた。
10月30日に行なわれたアスレティック・ビルバオ戦、前半25分で筋肉系のトラブルで交代。初期段階の検査では大腿筋の軽い負傷程度と思われたが、結果的に筋束断裂を負っていることが判明。カタールへの道が閉ざされた。アルゼンチン代表のリオネル・スカローニ監督は、「選手の数という意味では、代役を立てることはできる。しかしサッカー的には、彼の代役はいない」と落胆した。
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