前田大然がノイアーの前でボールをかっさらう

 まずは森保ジャパンのメンバー発表を見て、外れた選手にサプライズがありましたが、選ばれた選手は順当でいいメンバーだと思います。ただ、ケガ人が多いのが本当に心配で、試合までにどれだけコンディションを上げられるのかが懸念材料ですね。


ワッキーさんは前田大然のスピードに期待している

 グループリーグ初戦のドイツ戦は、前田大然選手がキーになると思っています。おそらく4−2−3−1のシステムで、1トップに前田選手が入って、前からのプレッシングでボールを引っかけてショートカウンターというのが、日本の狙いになるんだろうと思います。

 そこで個人的に、前田選手には絶対にドイツGKのマヌエル・ノイアーからボールをかっさらうんだという気持ちでいてもらいたいんですよね。

 そのためには中途半端なところで自分の"最速"を見せずにいてほしい。「こいつ、ちっちゃくて大したことないな」と思わせておいて、「ここ取れるぞ!」っていうタイミングの時にトップスピードで行ってほしいんですよ。

 きっとドイツはDFラインを高くしてくると思うので、その裏のバイタルエリアあたりに落とすボールを入れると、ノイアーが出てくるはずなんです。彼は前に出てきて、自分でクリアするのが好きじゃないですか。

 そこを狙ってほしい。ノイアーよりも早く前田選手にボールを突いてもらって、入れ替わる。そのシーンはめちゃくちゃ想像できるんですよ。だから前田選手にはすごく期待しています。

 スコア予想は期待を込めて2−2。ワールドカップでは、やっぱり奇跡的なゴールが生まれると思うんです。ロシアW杯がまさにそうでしたよね。ベルギー戦で原口元気選手はあの1本しかシュートを打ってないし、乾貴士選手は無回転なんて持ってなかったんですよ。だからあの2点は奇跡的だなと。あれをドイツ戦も期待したいです。

三笘薫は先発で使ってほしい

 第2戦のコスタリカ。日本が勝つのはここしかない。絶対に落としちゃいけないという、プレッシャーのかかる一戦ですよね。コスタリカも勝つなら日本だと思っているはずで、お互いの気持ちがぶつかり合う、ものすごい緊張感のある試合になると思います。

 正直、よく知っている選手はケイロル・ナバスくらいしかいないんですけど、ブラジルW杯ではベスト8まで行っていて、その時のメンバーも残っているので経験があるというのは怖いなと。

 ある程度選手をターンオーバーさせる考え方もありますけど、僕は怖いんですよね。だから第2戦もベストメンバーで臨んで、変わったこともせず、4−2−3−1でいってほしい。スコア予想は1−0で、渋い試合になると思います。

 第3戦のスペインは、みんなわかっていますけどめちゃくちゃ強い。セルヒオ・ブスケツがアンカーに入って、4−3−3でポゼッションをベースに戦ってくるのは想像できますよね。そのなかで、日本戦で活躍されたら困るんですけど、ペドリとかガビ、アンス・ファティ、そういったニュースターみたいな選手が出てくるのをサッカーファンとしては楽しみにしちゃいますね。

 ボールはどうしてもスペインに握られてしまうと思います。だから日本は常にカウンターを狙う意識で準備しているだろうし、たとえボールを握られても全部攻めきられるわけじゃないんだから、きっとチャンスはあると思いますよ。

 そんなスペイン相手に日本は2−1で勝つ予想で、僕は三笘薫選手が決めてくれると信じています。

 僕は三笘選手について一つ言いたいことがあるんですよ。Twitterで三笘選手の起用の仕方について聞いてみたことがあって、結構な人が「相手が疲れてくる後半途中から出したほうが効く」という意見だったんですよね。絶対そっちのほうがいいって。

 僕は先発から使ったほうがいいと思っています。だって相手が疲れてきてからって、相手が疲れなかったらどうするんですか。90分、三笘選手のスタミナが持たないのかって、そんなことないですよ。

 相手が疲れるのを待っている間に、何点も取られちゃったらどうするんですか。だったら先発から出して、仕掛けるチャンスを少しでもたくさん与えてほしいと思うんですよね。やっぱりこういう短期決戦は、もっとも調子のいい選手をうまく活用するのが鉄板ですから、僕は先発三笘を推します。

鎌田大地、町野修斗に期待

 僕が今大会で一番期待しているのは、鎌田大地選手ですね。昔、サガン鳥栖でのデビュー戦をリアルタイムで見たんですけど、今でも忘れられないです。

 実況が下田恒幸さん、解説が玉乃淳くんで、鎌田選手が最初にボールを持った時に、すごくセンスを感じる持ち方をしているなと思ったら、同じタイミングで玉乃くんが「なんだこのボールの持ち方は!」って言ったんですよ。

 そのあと、ノールックで豊田陽平選手に綺麗なスルーパスを出して、「うおぉぉ!」としびれていたら、玉乃くんも「なんだこのボールは! 見ましたかこのスルーパス! これですよ!」って。玉乃くんも元々すごいテクニシャンなので、シンパシーを感じたんでしょうね。

 僕は逆にボールをただ追いかけるだけのプレーヤーだったので、彼のようにテクニック溢れる選手を見ると興奮しちゃうんですよ。さらにゴールまで決めちゃうんですけど、もう衝撃的なデビュー戦でした。

 鎌田選手はデビュー戦でもそうでしたけど、どんな舞台でもまったく慌てないんですよね。それで「いや、そこは無理でしょ」っていうところに平然とパスを通しちゃう。もう"平然力"がすごいんですよ。だからワールドカップでも平然と、飄々とプレーする鎌田大地が見られるんじゃないかと思っています。

 デビューから見ているぞって、古参アピールするおじさんというだけなんですけど(笑)。でもそこからフランクフルトで活躍して、一番いい状態で森保ジャパンに選ばれてワールドカップを迎える。そのストーリーを追ってきているから楽しみで仕方ないですね。

 それともう一人、追加招集で選ばれた町野修斗選手です。彼も今季好調だった選手で、とくにFWは点を決めているという自信が大事なポジションですからね。彼の勢いがどこかで日本を救ってくれるんじゃないかと期待してしまいます。

 Jリーグファンとしては夢がありますよね。彼は大阪の履正社高校出身で、僕も同じ高体連出身なんですよ。そしてJ2のギラヴァンツ北九州でチャンスを掴んで湘南ベルマーレに移籍して、今季残留争いするチームを救う活躍をして最後の最後にW杯メンバーを掴み取る。サンドウィッチマンのM−1じゃないけど、まるで敗者復活みたいな感じで。

 海外組がほとんどのなかで、Jから選ばれるのはうれしいです。「Jを盛り上げるために」って森保一監督はそこまで考えてくれたんですかね。ゴールを決めて、あの忍者ポーズをやって、日本中の子どもたちがマネするような未来を夢見ちゃいます。

楽しみはメッシの活躍

 日本戦以外での楽しみは、アルゼンチン代表のリオネル・メッシですね。メッシと言えば、やっぱりディエゴ・マラドーナと比較される宿命じゃないですか。そのメッシにおそらく最後になるだろう今大会でワールドカップを取らせてあげたいと、サッカーファンは考えてしまいます。

 パリ・サンジェルマンに移籍してから、全盛期と比べてプレースタイルもちょっと変わってきましたよね。自分が得点を取るばかりではなくて、アシストに回ることも多くなってきた。それが奇しくも晩年のマラドーナとも重なるんですよ。同じ路線をメッシも歩んでいるんだなと。

 1986年メキシコW杯でアルゼンチンが優勝した時、マラドーナひとりで勝てたかというとそうじゃない。ホルヘ・ブルチャガやリカルド・ジュスティといった周りで助けてくれる選手たちがいたからこそ、マラドーナが輝けたわけです。

 アルゼンチンはやっぱりそういう国なんですよ。今大会は昨年コパ・アメリカを優勝した自信、勝者のメンタリティがあるチームですよね。だから、あとは周りの選手がメッシをどれだけ輝かせてあげられるか。そこに注目しています。

 優勝予想はフランスを挙げます。フランスはディディエ・デシャンがもう10年ほど監督をやっていますよね。僕は監督にとって一番必要なのは、選手を深く知ることだと思っていて、10年もやっているデシャンは選手たちを熟知しているだろうし、信頼関係もあるはず。もともと強い国で、その体制で継続しているというのは大きいと思います。

 選手で一番注目されるのはキリアン・エムバペだと思いますけど、僕はウスマン・デンベレが好きです。鎌田選手ほどじゃないですけど、レンヌからドルトムントに移籍してきたデビュー戦を見ていて、めちゃくちゃ綺麗なドリブルをする選手がでてきたなと。

 左右どちらの足でもボールをさらすことができて、めちゃくちゃスムーズで綺麗なシザーズをするし、キックフェイントの美しさは世界一だと思います。エムバペとデンベレは親友みたいなので、相性のいい両翼で活躍してくれると思います。

"監督のために"となると、チームが強くなる

 フランスを優勝予想に挙げた一番の理由は、さっきも言ったデシャン監督の存在です。これは完全に見た感じの印象でしかないんですけど、デシャンはあまり背が高くないじゃないですか。なんか選手たちに愛されているような気がするんですよね。10年も監督をしているわけだし。

 2002年の日韓W杯でブラジルが優勝した時に、リバウドやロナウド、ロナウジーニョ、ロベルト・カルロスとか、錚々たるメンバーが、当時のルイス・フェリペ・スコラーリ監督のために優勝したかったんだと、インタビューでそう答えているのを雑誌で読んだんですよ。

 なにかの"ために"っていろいろあるじゃないですか。チームのために、国のために、家族のために。そこに"監督のために"が乗っかると、チームがすごく結束して強くなる。それが今大会のフランスにもあるような気がするんですよね。

 僕はその"監督のために"が、日本にも言えると思っているんです。先日、スタジアムにサッカーを見に行ったら森保監督がいて、僕のところに向こうから来てくれて「いつも日本サッカーを盛り上げていただきありがとうございます」と頭を下げられたんですよ。

 僕はもう泣きそうになって......。自分がやってきたことは間違いなかったんだなって思えたんですよね。そんな人だから選手も絶対に「森保監督のために」って思ってくれると思う。森保監督を中心に日本代表が結束して、グループリーグ突破、そしてベスト8進出。カタールで奇跡を起こしてくれることを信じて、応援したいと思います。

ペナルティ ワッキー 
1972年7月5日生まれ。北海道出身。吉本興業所属のお笑い芸人。1994年に高校・大学の先輩であるヒデとお笑いコンビ「ペナルティ」を結成。濃いキャラクターやギャグで人気を博し、さまざまなメディアで活躍中。サッカーでは名門・市立船橋高校出身で全国高校サッカー選手権に出場した。
SNSアカウントは、Twitter:@wakitayasuhito/Instagram:@japan_wacky