ワッキーチョイスのJリーグベストイレブン2022

毎節、相当数の試合やハイライトをチェックし、Jリーグ通として知られるお笑い芸人のペナルティ ワッキーさん。昨年に続き、今年もこだわりのJリーグベストイレブンを選んでもらった。

◆ ◆ ◆

名前がかっこいい

<GK>

上福元直人(京都サンガF.C.)

 今季の上福元選手でとくに目を引いたのは、セービングですね。僕が見た試合ではとにかく止める。めちゃくちゃ止める。京都のサポーターは上福元の"上"を"神"にして「神福元」と言いますけど、それくらいシュートストップというところで神がかっていました。


ワッキーさんも「とにかく止める」と、上福元直人のセービングに注目

 チームとしては16位で入れ替え戦に回りましたけど、失点数だけにフォーカスすると38点で上位のチームと比べても遜色ない数字を残しているんですよ。もちろん、セービングだけではなく、コーチングも優れていたんじゃないかと思いますね。

 普通は16位になるチームだったらもっと失点していると思うし、あのセービングがなければもっと失点していたんじゃないかなと。彼がいなければもう一つ下の順位もあり得たと思います。

 ほかにも悩んだGKはいたんですけど、チームを残留に導いた高い貢献度という点で上福元選手を選びました。ちなみに、誤解がないように言っておきますが、市船の後輩だから選んだわけではないですからね(笑)。

<DF>

永戸勝也(横浜F・マリノス)

 永戸選手はマリノスのサッカーにうまく適応して、左サイドを制圧して優勝に貢献した選手として選びました。彼は八千代高校から法政大を経て、ベガルタ仙台で大卒ルーキーとして出てきた時にめちゃくちゃよかったんですよ。僕は衝撃を受けて、それから彼に注目し続けていたんですね。

 ある時、彼は左利きなのに、カットインして右足で無回転のミドルシュートを打ったんですよ。「え、右足の無回転持ってるの!?」と思ったら、またある時はロングスローを投げていて、「え、ロングスローも持ってるの!?」って。いろんな武器を持っているんですよ。

 ある日、たまたま会った時に「右の無回転持ってるよね?」と聞いたら「えへへ」って笑ってました(笑)。でも、あんまり見ないんですよね。それからFKも、仙台の時の渡邉晋監督いわく「こんなにFKがうまいやつ見たことない」と。いろんな引き出しがある選手なので、もっと彼の武器を見てみたいですね。

アレクサンダー・ショルツ(浦和レッズ)

 まずはアレクサンダー・ショルツっていう名前がめちゃくちゃかっこいいですよね。それから彼が加入したことで、僕の大好きな槙野智章選手(ヴィッセル神戸)がポジションを失ったので、「おいおい、一体どんなやつだよ」って見てみたらとんでもなかった(笑)。

 彼のプレーで僕が好きなのは、ボールの持ち運びです。彼の、スペースとかタイミングを見た効果的な持ち運びが、たまらなく好きですね。それから忘れちゃいけないのがPK。今季は6点取っていますけど、そのうち5点がPKですからね。センターバック(CB)がPK職人、それだけでしびれますよ。

 PKがうまい=キックがうまいということで、ロングフィードとか、グラウンダーのクサビのパスとか、彼のところから一気に局面が変わるパスが出てきますよね。そのほかにもCBに必要な能力はすべてハイレベルで、Jリーグでも指折りの選手ですよ。個人的には今季の(Jリーグ選定の)ベストイレブンに選んでほしかったです。

監督に重宝されるDF

田中駿汰(北海道コンサドーレ札幌)

 彼を選ぶ人はたぶんなかなかいないと思いますけど、個人的にすごく好きなんですよ。CBとしてまあまあ縦のサイズはありますけど、横がなくて細いんですよ。でも競り負けない。細いのに体幹がしっかりしているのか、体が強いんですよね。

 昔の稲本潤一選手(南葛SC)を思い出すんですよね。細いのに稲本もめっちゃ強くて、ちょっとポジションは違うんですけど、彼を彷彿とさせるものがあります。

 ボランチをやることもあるだけにパスがうまくて、攻撃的にどんどん前に行くし、ミスもすごく少ないんですよね。ポジションが変わったとしても今季の田中選手は試合に出続けたので、それだけミシャ(ミハイロ・ペトロヴィッチ監督)サッカーの中心的選手だと言えると思います。

 高嶺朋樹、金子拓郎、田中駿汰の大卒三羽烏。同期のこの3人のなかで、金子選手は昨年あたりからドリブルの定評がよくて、高嶺選手もすごいロングシュートを決めたりとか、華やかな2人の陰に隠れて、ちょっと地味なところはあるんですけど、僕はあえて田中選手を推したいですね。彼に一つだけ言いたいのは、もっと筋トレしよう! そうしたらもっといい選手になるはず!

松田陸(セレッソ大阪)

 松田選手は監督が変わっても絶対に重宝されるんですよ。これが彼の選手としての能力の高さを表していると思うんですよね。酒井宏樹選手(浦和レッズ)とか、山根視来選手(川崎フロンターレ)とか、日本の右サイドバックにはレベルの高い選手が多いので、なかなかチャンスが巡ってきていないですけど、どこかのタイミングで代表に呼んでほしいとずっと思っています。

 彼は体が強くて、ケガも少ない。プレーもすごく安定していて、ミスが本当に少ないというのはDFにとって大事な能力だと思います。クロスの精度も高くて、アーリークロスなんかは抜群にいいですよね。

 見た目もスタイリッシュでかっこいいし、ちょっとやんちゃっぽく見えるのにラフプレーはしないし。今季のセレッソはルヴァンカップで決勝まで行って、すごくいいチームでしたけど、その好調を支えていた選手の一人だと思います。同姓同名の選手がツエーゲン金沢にもいますが、セレッソの松田陸を推します(笑)。

ピッチに3人いるんじゃないか?

<MF>

汰木康也(ヴィッセル神戸)

 汰木選手は、モンテディオ山形時代はドリブルばっかりしているドリブルお化けみたいな選手で、浦和に移籍した当初はそこがあまり出てなかったんですよね。でも1年くらいして徐々に彼独特のヌルヌル抜いていくドリブルが戻ってきて、それでいて浦和のサッカーにも合わせていて、すごくよかったんですよ。

 そう思っていたら神戸に移籍して、どうなるかなと思っていたらいい活躍をしていますよね。とにかく試合に出続けて左サイドでの局面打開を担って、とくに終盤は苦しんできたチームを救う活躍をしたと思います。

 シーズン後に神戸の華やかなセレモニーの一端を担っている今年の"三木谷良一賞"は彼が受賞しましたからね。一年通して頑張ったなと三木谷さんに思われているとなったら、選手としてもモチベーションになりますよね。そこはやっぱりワッキーのベストイレブンにも反映しないと、ということで選びました。

野津田岳人(サンフレッチェ広島)

 野津田選手はリーグで3位、天皇杯準優勝、ルヴァンカップ優勝という3つのコンペティションで上位、優勝争いに絡んだ充実のシーズンで、フル稼働で原動力となった選手の一人だと思います。

 彼はだいぶプレースタイルを変えたと思うんですよね。もともとはもっとオフェンシブなポジションで左足のバズーカ砲とか、クロスとかを武器にしていたのが、今や完全なるボランチの選手になりました。

 こんなにも走って、こんなにも守備をするんだって。それでありながら機を見て上がって強烈なミドルシュートを決める。隙あらば打つぞという意識をなくしていないのが、見ていてすごくうれしかったですね。

 広島ユースから上がってきて、なかなかレギュラーに定着できず、いろんなクラブを渡り歩きながら少しずつ成長して、ようやく居場所を見つけてレギュラーポジションを勝ち取ったのが広島だった。それが、本人はもちろん、周りの人とか、サポーターにとっても一番気持ちのいい、幸せな形ですよね。

奥埜博亮(セレッソ大阪)

 奥埜選手は「ピッチに3人いるんじゃないか?」っていうくらいすさまじい運動量で、どこにでもいるし、本当に効いていましたよね。シーズン前の『やべっちスタジアム』でベストイレブン考えてくださいって無茶ぶりがあったんですけど、その時に僕は奥埜選手を1トップに置いてますからね。

 ボランチですけどトップ下やトップもやっていた記憶があって、それくらいプレーエリアが広い選手。サイズは小さいですけど、体が強くてケガも少なくて、無理がきくんですよね。サッカーIQも本当に高くて、どの監督がどんなサッカーをしても絶対に使われると思います。

 恐ろしいほど黒子に徹することができて、ちょっと目立たないタイプなんですけど、僕はめちゃくちゃ好きですね。もし日本代表が汗かき役が必要なシステムだったら、絶対に選んでほしいと思う選手です。

ものまねをするくらい大好き

<FW>

アダイウトン(FC東京)

 僕はアダにボールが渡ったらめちゃくちゃ楽しみなんですよ。ボールを持ったらほとんど仕掛けて、相手をなぎ倒すように突破していくじゃないですか。本当に見ていて面白いですよね。今季はずっと先発というわけではなかったけど、12得点を挙げて流れを変える選手として存在感がありました。

 ジュビロ磐田時代から見ていますけど、僕はプライベートで磐田の開幕前のキャンプを見に行ったことがあるんですね。練習時間とかわからなくて、行った時間がちょうど練習終わりだったんですよ。そうしたらアダが普通に歩いていて、話しかけて写真をお願いしたら、めちゃくちゃ笑顔で撮ってくれたんです。

 それでバイバイをしたら30メートルくらい離れてもまだ手を振ってくれていて、もうそこからめちゃくちゃファンになりました。僕がSNSでアップしているJリーグものまねシリーズで、アダのものまねをするくらい大好きです。

 その磐田の時に一度大ケガをしたんですよ。そこから戻ってきた時に、ケガしたヒザがまだ怖いのか、プレースタイルが変わっていたんですよね。それを見て「うわぁ、マジかよ」って思っていたんですけど、FC東京に行って昔のアダに戻っていて、めちゃくちゃうれしくて、もうたまらないです。個人的なエピソード込みでちょっと贔屓目にアダを入れさせてください(笑)。

町野修斗(湘南ベルマーレ)

 町野選手の特徴だと思うのが、シュートを打つ時にすごく力が抜けているところ。それなのにコースに鋭くシュートが飛んでいくんですよね。それが両足でできるというのはすごいと思いますね。

 彼を選んだ一番の理由は、彼の活躍が湘南を残留に導いたと思うからですね。終盤の3試合連続得点はすごかったし、日本人最多の13得点は本当に見事だと思います。得点王は取れなかったけれど、湘南を救うことができた点に価値を感じます。

 23歳と若いのも魅力だし、追加招集でワールドカップメンバーにも選ばれて、やっぱり今年は持っているんだと思います。忍者ポーズは海外の人は絶対に好きじゃないですか。だからワールドカップで得点して、あのポーズを世界中に流行らせてほしいですよね。

家長昭博(川崎フロンターレ)

 家長選手に関しては、なにを語るかっていうくらい語るべきことがたくさんある特別な存在だと思います。キャリアハイの12得点を挙げて、優勝こそ叶わなかったですけど、傑出した活躍でした。

 昔から天才と言われて、天才って短命説がありますけど、今年36歳で彼はどこまでできてしまうんでしょう? 今季もリーグ34試合全部に出て、ほとんどがフル出場で、もうずっと出てるやんって。それでいて彼がいないと、チームが変わってしまうほど影響力があるという。

 家長選手と言えば、右腕をうまく使って相手をブロックしながら、左足で自分の一番いいところにボールを置くキープが特徴的ですけど、あれを一度味わってみたい。どれだけ強くて、懐に入れないんだろうっていうのを体感してみたいですね。

 今年は2位でしたけど、最後まで楽しませてくれたのは川崎の存在があったからだし、その中心が家長選手でした。現実的には難しいかもしれないですけど、もう一度日本代表のユニフォームを着てプレーしてほしい選手です。

<ワッキーがベストイレブンに入れたくて悩んだ選手>

岩田智輝(横浜F・マリノス) 
喜田拓也(横浜F・マリノス) 
エウベル(横浜F・マリノス) 
マルシーニョ(川崎フロンターレ) 
満田誠(サンフレッチェ広島) 
東口順昭(ガンバ大阪)

ペナルティ ワッキー 
1972年7月5日生まれ。北海道出身。吉本興業所属のお笑い芸人。1994年に高校・大学の先輩であるヒデとお笑いコンビ「ペナルティ」を結成。濃いキャラクターやギャグで人気を博し、さまざまなメディアで活躍中。サッカーでは名門・市立船橋高校出身で全国高校サッカー選手権に出場した。
SNSアカウントは、Twitter:@wakitayasuhito/Instagram:@japan_wacky