解説者5人が語るカタールW杯プレビュー/注目選手紹介編

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世界中のサッカースターの共演が見られるのが、ワールドカップの楽しみなところ。カタールW杯で、見る者を引きつける活躍をするのは誰になるのか。ここでは5人の解説者に、大会のMVP候補やぜひ見てもらいたいという注目選手をそれぞれ挙げてもらった。


大活躍だった4年前から、さらにグレードアップしているフランスのエムバペ

ひとりで何人もの相手をやっつける

風間八宏氏

◆注目選手=キリアン・エムバペ(フランス)

 MVP候補として挙げるとすれば、フランスのキリアン・エムバペになる。あの能力は異常だと思うし、4年前と比べても各段の違いがある。

 エムバペは、誰が見てもすぐにすごい選手であることがわかると思うが、そのこと自体が、いかに彼が特別な選手であるかを証明している。初めてW杯を見るような人にとっても、スピードの違いはすぐにわかるし、ボールを持っていてもスピードが落ちない。

 わかりやすく言えば、ひとりで何人もの相手をやっつけてしまえる選手だということだ。相手のペナルティーエリアに入った時に面白いプレーもできて、得意なゾーンもあって、シュートもうまい。そういう特別な選手は、W杯のような舞台では特に目立つ傾向があるので、彼のプレーだけを見ていても十分に楽しめると思う。

 そのほかでは、最近違いを見せるようになってきているドイツのジャマル・ムシアラ。もちろん、ブラジルのネイマールも注目の選手だ。ネイマールは、以前のようにただ転んでいるような選手ではなく(笑)、パリ・サンジェルマンで周りを生かすプレーも覚えてきているので、ロシアW杯の時と変化した部分も見てほしい。

代表に復活してW杯に臨むふたり

福田正博氏

◆注目選手=カリム・ベンゼマ(フランス)、マリオ・ゲッツェ(ドイツ)

 今回は、ここ10年の世界のサッカーを牽引し、一時代を築いてきた、リオネル・メッシ(アルゼンチン)やクリスティアーノ・ロナウド(ポルトガル)らのスター選手が、おそらく最後のワールドカップになるだろう大会。

 そして、日本が対戦するドイツにはジャマル・ムシアラ、スペインにはガビなど、10代の選手の活躍も期待され、新しいスター候補がたくさん出てくる大会になる。

 そうしたなかで楽しみにしているのは、5年ぶりにドイツ代表に復活したマリオ・ゲッツェだ。ドイツが優勝した2014年のブラジルW杯決勝で決勝ゴールを挙げた時は22歳。その後体調不良やコンディションを落としたりしてうまくいかず、オランダでプレーしたりしたが、今季フランクフルトで好調なプレーを見せて代表に戻ってきた。

 日本戦では静かにしておいてもらいたいが、何かやってくれそうな期待感がある。

 もうひとり注目しているのは、フランスのカリム・ベンゼマだ。現在34歳の彼はチームメイト恐喝に絡んだ罪で代表チームを追放されていた時期があり、自分がいい年代の頃にワールドカップに出場していない。

 しかし、ここ数年のレアル・マドリードでの活躍はすばらしく、年齢を重ねても十分にやれることを証明してバロンドールを獲るまでになった。昨年、5年半ぶりに代表に復帰し、今回ワールドカップでプレーすることになる。

 そんなストーリーを持っているふたりが、どんな姿を見せるのかに注目している。

本人も相当気合いが入っているはず

福西崇史氏

◆注目選手=リオネル・メッシ(アルゼンチン)

 今回は、メッシが相当気合いが入っているのではと思っている。いい加減優勝しないといけないと、メッシ自身もアルゼンチン国民もそう思ってきた。今回最後のワールドカップになるかもしれないなかで、国を挙げての優勝への思いは楽しみだ。

 アルゼンチンはうまく組織化してきた。これまでは攻撃はメッシにお任せで、あとはみんなで守るという形だったのが、今は守備がしっかりしているうえで、チームがメッシの能力をうまく使うような感じになってきている。

 そうなると、これまでうまさがありながらも「脇役」として見られてきた周りの選手たちが、相手にとっては油断できない「曲者」として生きてくる感じになる。

 アンヘル・ディ・マリアやラウタロ・マルティネスらとの絡みでメッシが躍動すれば、アルゼンチンの優勝はあり得るので注目だ。

セリエAから紹介したい選手たち

名良橋晃氏

◆注目選手=テオ・エルナンデス(フランス)、ニコラ・ザレフスキ(ポーランド)

 ここは注目している選手ということで、私がよく見ているセリエAから2人を紹介したい。

 ひとりは、フランスのテオ・エルナンデス。ミランでプレーしているが、左サイドの「槍」みたいな選手だ。力強さとスピードと思いきりのよさがあり、前に前にとどんどん行ってくれるので、見ていて清々しい。

 フランスは3バックを敷くことがあるが、そうなるとより攻撃に特化したプレーができて期待。うしろのDFは兄のリュカ・エルナンデスが務めるので、コンビネーションもよく、左サイドの攻撃で躍動できるかに注目している。

 もうひとりは、ローマで活躍している、ポーランドのザレフスキ。まだ20歳と若いが、ほぼ両利きと言えるプレーをして、技術もあって、創造性豊かな選手。

 キックの質も高いので、レバンドフスキへいいアシストをするのではないか。左サイドのポジションに入ると思うが、ワールドカップで活躍したらビッグクラブに引き抜かれるのではないかと思っている。

プレーの"遊び感覚"を見てほしい

木村和司氏

◆注目選手=ネイマール

 うまい選手というのは、ボールの持ち方がいい。ネイマールもそう。しかも、ボールの置きどころが本当にいい。しかも余裕があって、周りが見れているし、対峙する相手もしっかり見えている。だから、決定機を演出できるし、いろんなアイデアを持っていて、それを実践できる。

 そんなネイマールのプレーを見ていて、特に好きな部分は"遊び感覚"を持っているところ。できれば、そういったところを多くの子どもたちに見てほしいと思っている。もしブラジルが優勝して、彼がMVPを獲れば、「ああいうプレーをしたい」「あんなふうになりたい」と思う子どもたちがもっと増えるはずで、将来日本の子どもたちからもネイマールのような選手が出てくるかもしれない。そういう意味でも、ネイマールには活躍してほしい。

 あとは、素質ある若い選手たちにも注目している。W杯は次世代のスター候補が誕生する舞台でもあるし、そういう選手が出てくると大会も盛り上がる。今大会では新たにどんなスター選手が出てくるのか、非常に楽しみだ。