カタールW杯の優勝国を浮き彫りにする「4つのジンクス」。「バロンドールの呪い」やFIFAランキングなどから導き出された国は?
2022年カタールW杯が11月20日(日本時間11月21日)に開幕する。注目の優勝争いは、FIFAランキング1位のブラジルをはじめ、フランス、アルゼンチン、イングランドらが有力視されているが、ドイツ、スペイン、ベルギー、オランダ、ポルトガルなども差はなく、激戦必至の様相だ。ところが、近年のW杯にはいくつかのジンクスや法則があり、実はそこから優勝国を浮き彫りにできる。そこで今回は、W杯における絶対的な「4つの掟」を紹介し、今大会で頂点に立つチームを占ってみたい――。
前回W杯のロシア大会を制したフランス。photo by Getty Images
◆レアル・マドリードの法則
1992年に欧州カップがUEFAチャンピオンズリーグ(以下、欧州CL)へと名称が変更されて以降、同一年に欧州CLとW杯のダブル優勝を達成した選手が4名いる。実はそのすべてが、レアル・マドリードに所属して欧州CLを制した選手なのである。
1998年のクリスティアン・カランブー(フランス)、2002年のロベルト・カルロス(ブラジル)、2014年のサミ・ケディラ(ドイツ)、そして2018年のラファエル・バラン(フランス)だ。
そして、2021−2022シーズンの欧州CLで戴冠を遂げたのは、レアル・マドリード。近年、同クラブが欧州CLで優勝した場合に限り、W杯との二冠選手が誕生するという法則にならえば、今回のW杯の優勝国は昨季の欧州CLで優勝を経験した選手が所属する国、ということになる。可能性があるのは、以下の8か国に絞られる。
ブラジル(エデル・ミリトン、カゼミロ、ビニシウス・ジュニオール、ロドリゴ)、ベルギー(ティボー・クルトワ、エデン・アザール)、フランス(カリム・ベンゼマ、エドゥアルド・カマビンガ)、スペイン(ダニエル・カルバハル、マルコ・アセンシオ)、クロアチア(ルカ・モドリッチ)、ウルグアイ(フェデリコ・バルベルデ)、セルビア(ルカ・ヨビッチ)、ウェールズ(ガレス・ベイル)。
◆FIFAランキングの法則
W杯の組み合わせ抽選にFIFAランキングが用いられるようになった 1998年W杯以降、優勝チームはすべてトップシードの国となっている。今回は、開催国のカタールをはじめ、ベルギー、ブラジル、フランス、アルゼンチン、イングランド、スペイン、ポルトガルの8カ国となるが、より有力視されるのは先の「レアル・マドリードの法則」で絞られた8カ国と重複する国。ブラジル、フランス、スペイン、ベルギーの4カ国である。
また一方で、1992年12月にFIFA加盟国の公式ランキングが算定されるようになってからこれまでに7度のW杯が開催されてきたが、開幕直前にFIFAランキング1位のチームが大会を制した例はない。そして今回、W杯前最後(10月6日)のFIFAランキングで1位になったのは、ブラジル。同国の優勝はないと見ていい。
残るは、フランス、スペイン、ベルギーの3カ国。ちなみに、大会直前のランキングで最も優勝しているのは2位のチーム。今回の2位はベルギーとなっているが、はたして......。
【大会直前のFIFAランキング1位国のW杯成績】
1994年W杯:ドイツ=ベスト8
1998年W杯:ブラジル=準優勝
2002年W杯:フランス=グループリーグ敗退
2006年W杯:ブラジル=ベスト8
2010年W杯:ブラジル=ベスト8
2014年W杯:スペイン=グループリーグ敗退
2018年W杯:ドイツ=グループリーグ敗退
【W杯優勝国の大会直前のFIFAランキング】
1994年W杯:ブラジル=3位
1998年W杯:フランス=18位
2002年W杯:ブラジル=2位
2006年W杯:イタリア=13位
2010年W杯:スペイン=2位
2014年W杯:ドイツ=2位
2018年W杯:フランス=7位
◆優勝監督の法則
これまで21度のW杯が開催されてきたが、すべて自国の監督が率いたチームが優勝している。となると、前出で絞られた3カ国のうち、スペイン人のロベルト・マルティネス監督が指揮を執るベルギーは厳しい状況。ジンクスどおりならば、初優勝はお預けとなる。
ちなみに、他国を率いて最もW杯優勝に近づいたのは、1958年W杯でスウェーデン代表を率いたイングランド人ジョージ・レイナー監督と、1978年W杯でオランダ代表を率いたオーストリア人エルンスト・ハッペル監督。いずれも準優勝に終わって、栄冠にあと一歩届かなかった。
◆バロンドールの呪い
W杯で最も有名なジンクスと言えば、直近のバロンドール受賞者がいるチームは優勝ができないという「バロンドールの呪い」だろう。今回は10月にフランス代表のカリム・ベンゼマがバロンドールを受賞。ジンクスどおりならば、前回覇者フランスの連覇はないということになる。
【W杯直近のバロンドール受賞者と同選手所属国のW杯成績】
1957年:アルフレッド・ディ・ステファノ/1958年W杯:スペイン=予選敗退
1961年:オマール・シボリ/1962年W杯:イタリア=グループリーグ敗退
1965年:エウゼビオ/1966年W杯:ポルトガル=3位
1969年:ジャンニ・リベラ/1970年W杯:イタリア=準優勝
1973年:ヨハン・クライフ/1974年W杯:オランダ=準優勝
1977年:アラン・シモンセン/1978年W杯:デンマーク=予選敗退
1981年:カール・ハインツ・ルンメニゲ/1982年W杯:西ドイツ=準優勝
1985年:ミシェル・プラティニ/1986年W杯:フランス=3位
1989年:マルコ・ファンバステン/1990年W杯:オランダ=ベスト16
1993年:ロベルト・バッジオ/1994年W杯:イタリア=準優勝
1997年:ロナウド/1998年W杯:ブラジル=準優勝
2001年:マイケル・オーウェン/2002年W杯:イングランド=ベスト8
2005年:ロナウジーニョ/2006年W杯:ブラジル=ベスト8
2009年:リオネル・メッシ/2010年W杯:アルゼンチン=ベスト8
2013年:クリスティアーノ・ロナウド/2014年W杯:ポルトガル=グループリーグ敗退
2017年:クリスティアーノ・ロナウド/2018年W杯:ポルトガル=ベスト16
こうして「優勝監督の法則」でベルギーが、「バロンドールの呪い」でフランスが消え、最後に残ったのはスペイン。今回もW杯におけるジンクスが覆されることがなければ、スペインが2010年大会以来2度目の優勝を遂げることになりそうだ。