高木豊の「助っ人」通信簿 
セ・リーグ編

 チームの順位に大きな影響を与える助っ人外国人。今季は際だった活躍を見せた選手が少ない印象だったが、かつて大洋(現DeNA)で活躍し、現在は野球解説者やYouTubeでも活動する高木豊はどう見ていたのか。セ・リーグ各球団の助っ人たちの貢献度を、チーム(野手・投手)ごとに【◎、〇、△、×】の4段階で評価してもらった。


日本シリーズでホームランを放ったヤクルトのオスナ(右)を迎えるサンタナ

◆ヤクルト【野手◎/投手◎】

 日本シリーズではオリックスに敗れたもののリーグを連覇したヤクルトは、日本シリーズでも活躍したホセ・オスナのほか、サイスニードやスコット・マクガフなどお馴染みの助っ人たちが、昨年に続いて重要な役割を果たした。

「ヤクルトの助っ人たちは野手も投手も◎です。ひとりひとりの成績が優勝につながっていますね。阪神との開幕カード3連戦は(ドミンゴ・)サンタナがすごかったですし、シーズン後半はオスナが活躍した。(パトリック・)キブレハンも、ゲーム差4で迎えた8月後半のDeNAとの天王山で1試合3本のホームランを打ちましたが、あのようなポイントで起用した助っ人が活躍してくれるとチームは本当に助かります。

 投げるほうでは、リーグ2位の38セーブを挙げたマクガフも、チームトップタイの9勝を挙げたサイスニードもよかったです。(A.J.)コールは外国人枠の関係で安定的に一軍にいることはできませんでしたが、それでも34試合に登板してリリーフ陣の穴を埋めました。あと、助っ人全員がチームに溶け込んでいて仲がいいので輪を乱すことがないのもいいですね」

【主な助っ人外国人の成績】

(野)オスナ 138試合 打率.272 20本塁打 74打点 出塁率.312 OPS.751

(野)サンタナ 60試合 打率.275 15本塁打 35打点 出塁率.353 OPS.904

(投)サイスニード 23試合 9勝6敗 防御率3.54 QS率52.2

(投)マクガフ 55試合 2勝2敗4ホールド38セーブ 防御率2.35 

◆DeNA【野手×/投手○】

 夏場に球団記録となる本拠地17連勝を記録。一時は17.5ゲーム差をつけられた首位のヤクルトに4ゲーム差まで迫るなど、リーグ2位で終えたDeNA。エドウィン・エスコバーが70試合に登板する鉄人ぶりを発揮するも、昨年同様に主軸として期待されたタイラー・オースティンとネフタリ・ソトが誤算に終わった。

「野手は×です。特にオースティンはほとんど試合に出ていませんし(38試合出場)、打率が1割台で1本塁打では話になりません。戦列に加わった時期も遅すぎて代打だけの出場でしたからね。大型契約(昨シーズン終了後に3年契約を締結)をしたことが、心理的にマイナスに働いた部分もあるかもしれませんね。

 ソトは悪いなりに頑張ってくれましたけど、2人を総合すると×です。やはりプロ意識が足りないというか、開幕に間に合わせるのがレギュラーの宿命というか責任なのですが、そういうことが果たされませんでした。

 投手ではエスコバーが登板過多で相当疲労がたまり、最後のほうは打ち込まれることも多かった。でも、本当によく投げてくれたということで、エスコバー個人は◎でいいと思います。(フェルナンド・)ロメロは勝敗数(6勝8敗)が逆だったら○でしたが、負け越してますからね。やはり助っ人なんで勝ち越してほしかったです」

【主な助っ人外国人の成績】

(野)ソト 117試合 打率.266 17本塁打 49打点 出塁率.342 OPS.815

(野)オースティン 38試合 打率.156 1本塁打 3打点 出塁率.289 OPS.602

(投)ロメロ 23試合 6勝8敗 防御率4.87 QS率22.2

(投)エスコバー 70試合 4勝2敗34ホールド2セーブ 防御率2.42

◆阪神【野手×/投手○】

 阪神は昨年に128試合に出場して22本塁打を放ったジェフリー・マルテが、今季はわずか33試合の出場。日本野球への適応が期待されたロハス・ジュニアも期待外れの結果に終わった。守護神候補として期待されたカイル・ケラーは開幕戦で負け投手となるなど出だしで苦しんだが、一軍復帰後は一定の活躍を見せた。

「(ジョー・)ガンケルがシーズン序盤で多少活躍して、あとはロハス・ジュニアが8月だけはよかった。でも、助っ人全体としては低調でしたね。

 ケラーはいいピッチャーであることに間違いないんですが、彼のカーブはなぜか打たれるんですよね。打たれているのはほとんどカーブでしたから。ただ、最終的によくなったので、来年もいてくれたらというピッチャーです。開幕戦で打たれるなどつまずきましたけど、一軍に復帰して中継ぎで登板していた時に投げていた真っ直ぐはそうそう打てませんよ。抑えで起用されると打たれてしまうので、精神的に弱いのかもしれません。

 アルカンタラは春先はよかったですが、中継ぎで防御率が4点台だと厳しい。5勝のウィルカーソンは、勝ち星よりもいいピッチャーだなという評価ですね」

【主な助っ人外国人の成績】

(野)ロハス・ジュニア 89試合 打率.224 9本塁打 27打点 出塁率.322 OPS.732

(野)マルテ 33試合 打率.256 1本塁打11打点 出塁率.324 OPS.624

(投)ガンケル 16試合 5勝5敗 防御率2.73 QS率50.0

(投)ウィルカーソン 14試合 5勝5敗 防御率4.08 QS率35.7

(投)アルカンタラ 39試合 1勝3敗17ホールド1セーブ 防御率4.70 

(投)ケラー 34試合 3勝2敗5ホールド3セーブ 防御率3.31

◆巨人【野手○/投手×】

 5年ぶりのBクラスに終わった巨人。アダム・ウォーカーとグレゴリー・ポランコが揃って20本以上の本塁打を放つなど一定の活躍を見せたが、投手陣は低調に終わった。メジャーで46勝をマークしているマット・シューメーカーらは先発ローテーションの一角として期待されたが振るわなかった。

「ウォーカーとポランコが20本以上打ってくれましたが、守備力が低かったので20本ぐらいのホームランを損失している感覚です。一長一短があるということで◎にはなりません。

 巨人はバッターの助っ人は及第点ですが、ピッチャーがよくなかったですね。(CC.)メルセデスが勝てずに信頼をなくし、(ルビー・)デラロサは投げれば打たれていました。シューメーカーはゲームを作るという面ではベテランらしい投球を見せてくれるのですが、有効な球種がスプリットぐらいしかなくて......。ランナーを出したときも隙がありすぎます。あの歳(36歳)でクイックができないのは、日本で野球をやる上では致命的ですね」

【主な助っ人外国人の成績】

(野)ウォーカー 124試合 打率.271 23本塁打 52打点 出塁率.306 OPS.821

(野)ポランコ 138試合 打率.240 24本塁打58打点 出塁率.306 OPS.762

(投)メルセデス 20試合 5勝7敗 防御率3.18 QS率40.0

(投)シューメーカー 18試合 4勝8敗 防御率4.25 QS率44.4

(投)デラロサ 30試合 0勝0敗11ホールド1セーブ 防御率2.30

◆広島【野手○/投手×】

 主に4番で打線を牽引したライアン・マクブルームは、本塁打と打点でチームトップの成績を残すなど一定の活躍を見せた。一方で先発ローテーションの一角として期待されたドリュー・アンダーソンは3勝4敗と勝ち星を伸ばせず、左のセットアッパーとして45試合に登板したターリーは安定感を欠いた。

「マクブルームは悪くはなかったですね。鈴木誠也の代役というポジションでハードルは高かったと思いますが、得点圏打率(.317)は悪くないですし、4番打者としてある程度の勝負強さはあります。日本の投手にアジャストしてきたと思いますし、来年もカープでプレーするのであれば今年より打つと思いますよ。
 
 投げるほうでは、ターリーはもっと活躍するかなと見ていましたが、期待外れでした。角度があって球も速いですし、左バッターは嫌だろうなと思っていたら簡単に打たれますからね。アンダーソンは初登板の巨人戦ですごいピッチング(5回まで完全投球、勝ち投手に)をしていましたが、その後は故障もあったりして勝ち星が伸びませんでした。先発を任せる助っ人が3勝では厳しいです」

【主な助っ人外国人の成績】

(野)マクブルーム 128試合 打率.272 17本塁打 74打点 出塁率.352 OPS. 794

(投)アンダーソン 13試合 3勝4敗 防御率3.60 QS率46.2

(投)ターリー 45試合 2勝4敗14ホールド 防御率3.11

◆中日【野手△/投手◎】

 56試合に登板し39セーブ、防御率0.97と圧巻の数字を残したライデル・マルティネスがセーブ王に。同じく56試合に登板したジャリエル・ロドリゲスも45ホールドポイント、防御率1.15と負けず劣らずの活躍を魅せ、最優秀中継ぎのタイトルを獲得した。打つ方では、来日7年目のダヤン・ビシエドは14本塁打、63打点と振るわなかった。

「クローザーのマルティネスとセットアッパーのロドリゲスは文句なしの◎です。この2人に繋いだら絶対に試合を落とさなかったですから。でも、なかなかそこまで繋げられないんですよね。結果論ですが、中日はDeNA戦(6勝18敗と大きく負け越し)がなかったらAクラスに入ってますし。

 ビシエドは、ほとんどBクラスに決まりかけたシーズン後半、気楽なゲームで打っていましたけど、春先は全然ダメだった。貢献度、殊勲打も少なかったですね。ただ、他の打者が打てないからビシエドにかかる負担がすごく大きくて、そこは酷だなと思いますが......。

 途中から加入した(ペドロ・)レビーラは守備がよくなかった。広いバンテリンドームであの守備力だと厳しいです。(アリエル・)マルティネスは、バッティングは悪くはないですが、守備に不安がありましたね。野手はビシエドも含めてよくなかったです。

【主な助っ人外国人の成績】

(野)ビシエド 129試合 打率.294 14本塁打 63打点 出塁率.355 OPS.792

(野)A.マルティネス 82試合 打率.276 8本塁打 24打点 出塁率.350 OPS.787

(投)ロドリゲス 56試合 6勝2敗39ホールド 防御率1.15 

(投)R.マルティネス 56試合 4勝3敗5ホールド39セーブ 防御率0.97 

【「期待外れ」が多かった今季のパ・リーグ助っ人たち。4段階で最高評価◎のチームはゼロ>>】