11月6日のブンデスリーガ第13節レバークーゼン対ウニオン・ベルリン戦。ベンチスタートした原口元気(ウニオン・ベルリン)に出場機会はなかった。チームは0−5で敗れ、第6節から続いていた首位の座から陥落、3位にまで転落した。試合後、原口に話を聞いた。

 11月1日にカタールW杯日本代表メンバーが発表されて以来、最初のリーグ戦。落選に関して、初めて公の場で口を開いたことになる。代表については、「あんまり喋りたくないですね......」と、穏やかな口調ながら、いったんは話すことをきっぱりと断わった。それでも、自身がウニオン・ベルリンでスタメンに定着しきれていないもどかしい状況と絡めながら、自ら代表についても触れていった。


ブンデスリーガでは首位争いをしているウニオン・ベルリンの原口元気

 ウニオン・ベルリンで、今季の原口は難しい時間を過ごしている。リーグ戦は第13節まで終えて、スタメン出場3回、途中出場3回で、7試合は出場していない。ヨーロッパリーグ(EL)は1次リーグ6戦すべてに出場しているが、先発3回、途中出場3回。フル出場はともに1回もない。

 それでも、開幕当初よりは状況は改善されていた。このレバークーゼン戦の3日前に行なわれたELサン・ジロワーズ戦には先発出場し、勝利と決勝トーナメント進出に貢献、さらにその前のリーグ戦第12節ボルシアMG戦では、0−1から途中出場し、チームを逆転勝利に導いている。

 だが、レバークーゼン戦では出場機会がなかった。

「ちょっと理解できないですけどね、正直な話。でも、今季はたびたびこういうことがあるので......」

 原口に求められているものと、現在のパフォーマンスや結果との間に、合致しない点があるということか、と尋ねてみた。

「まあ、いろいろ不満はあるんですけどね。チャンスがきた時に、結果は出していると思ってるので、なかなか理解しにくい部分はあるんです。でも、愚痴っても仕方がないので、次はおそらく、おそらくチャンスがあるだろうと思うので、次に見せるだけと思います」

「おそらく」と2回繰り返したのは、やはりチャンスを得られるという確証がないからなのだろう。

「せめて笑って終われる2022年に...」

「今シーズンはいろいろと悔しいことが続いて、あまりよくない流れをしっかり自分自身で切らないといけないかなと思う。僕がいいとか悪いとか言うのは自己判断でしかないですけど、それ(自分のパフォーマンス)に対しては、別に悪いとは思ってないです。だけど流れとしてよくないかな、というのはあるので......」

 毎回のパフォーマンスに関しては、やりきっていると言う自負がある。それでもトータルで見れば、W杯メンバー落選も含めて、流れとしてよくないということだろう。

「試合も出たり出なかったりですし、『(チャンスを)つかんだな』と思ったらつかめなかったりということが続いている。9月(の日本代表合宿)が終わったくらいから、また少し自分にも流れがきているかな、僕が出ていない試合は勝ってなくて、僕が出た試合は勝つという試合が続いているので、あと一歩自分自身の結果さえ出てしまえば完全に逆転するのかな、というのはあるので、最後は自分でいい流れに持っていけるようにしたいなと」

 悪い流れを断ち切るのはあくまで自分自身。自らのプレーでしかそれはできないとわかっていた。

「(EL第6節サン・ジロワーズ 戦のように)スタメンで出て勝って、それでも状況が変わらないんだったら、数字を残すしかないなと。今のポジション的に毎試合、数字を残すのはなかなか簡単じゃないですけど、まあトライして。せめて笑って終われるくらいの2022年にしたいと思います、ハハハ」

 森保ジャパンでの原口は、出場時間こそ短いものの、毎回選出されてきたレギュラーメンバーだった。 昨年9月からのW杯アジア最終予選では全10試合中9試合に出場。6月に4試合、9月に2試合行なわれた親善試合でも、出場なしは2試合だけだった。

 そういう選手を選ばないということは、これまでの日本代表の活動そのものを否定するようなものではないかと感じられた。原口個人を見ていても、年齢を重ね、仲間を鼓舞する姿に、成長を感じるようになったし、そこにこそ存在意義があるようにも思えた。複数のポジションをこなすユーティリティプレーヤーでもあり、試合終盤に投入されればちゃんと試合を終わらせることのできる、経験値からくる安心感のある選手でもある。そしてポジション争いに苦労しているとはいえ、ブンデスリーガで首位争いを演じているチームの一員だ。

 原口は言う。

「僕は1日1日、一生懸命生きてますし、本当にウニオンには面白いミッションがある。ブンデスで首位争いをして、ELでも勝っていて。非常に面白いなかにいるので、ああいうことが起きても、すぐにELもありましたし、そこに出るように、すぐそっちに切り替える......」

「切り替えることができた」とは言わなかった。だが、ウニオン・ベルリンでの苦しくとも刺激的な環境があるからこそ、"ああいうこと"の直後も日々のトレーニングに没頭せざるを得なかった。気を紛らわせる一助になったのだろう。

「僕のサッカー人生は続いていくので。ただただ続いていくので。まあ、楽しんでやっています。なかなか思いどおりにいかないシーズンですけど、全然楽しくポジティブにやっている。自分自身の価値を高めるチャンスがこのチームにはあると思うので、自分自身にまだ期待して、楽しんでいこうと思います」

 最後はにっこり笑って締めくくったが、瞳には光るものがあったようにも見えた。「自分自身に期待する」と言う原口のこれからに大いに期待しながら見ていこうではないか。今季の原口はドイツの地で大きく羽ばたくに違いない。