平畠啓史の勝手にJ2アワード優秀選手 後編

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日本屈指のJ2ウォッチャー平畠啓史さんが、今季J2で活躍した優秀選手を紹介する後編。こちらでは、サイド、FW、若手の部門で目立った、おススメの選手たちを語ってもらった。

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横浜FCでホットラインを作った小川航基(左)と長谷川竜也(右)

<サイド部門>

井上健太(大分トリニータ)

 特にリーグ戦終盤がすごかったですよね。特筆すべきはあのスピードです。ビュンビュンです! またビュンビュンに飛ばしたあとの仕事の質が、シュートにせよクロスにせよ格段に上がりました。

 スピードのある選手ってたくさんいますが、最後に何ができるかを僕は大事にして見ています。井上選手が速いのはわかってましたが、最後の質の部分が格段に上がったのが印象的でした。中央で待っている選手も、井上選手ならクロスが上がってくるだろうなと信頼していると思います。

 初めてサッカーを見る人でも、わかりやすいすごさ。ひと目見たら「あいつ速ぇ〜〜な!」となると思います。そういうサッカーの魅力って本当に大事だと思ってるんで、好きな選手ですね。

山下諒也(横浜FC)

 この選手も速さがやばいっす! 足の回転の速さが漫画です(笑)。漫画で足の速さを表現する時って、足が丸になってグルグル回るじゃないですか。まさにあんな感じなんですよね。ストライドの広さではなく、足の回転数で一気にブワーっと行く走りで相手をぶっちぎるんです。

 自らドリブルで仕掛けるのもすごいんですが、後ろからのロングフィードに対して相手のDFとかけっこになった時に、あの速さでぶっちぎっていく。あと「負けたくない」という気持ちがものすごく伝わってくるのが好きです。

 身長の小さい選手が体の大きい選手に向かっていくのって、見ていて痛快じゃないですか。今シーズンはスパイクが脱げて裸足でシュートを決めるシーンもありましたので、インパクトも残しましたね。

 横浜FCはイサカ・ゼイン選手や近藤友喜選手などサイドでいい選手が豊富で、毎試合誰が出てくるのか楽しみにしていました。山下選手は途中から出てきても試合の表情を変えてしまえる選手です。

杉山直宏(ロアッソ熊本)

 カットインしてからの左足は魅力ですよね。パンチ力があります。形があるので、見ているほうもカットインした瞬間、期待感がありますよね。

 ボールの置きどころがうまくて独特です。相手との間合いのとり方がうまい。シュートもスピードがありながらカーブもかかっていて、ゴールに吸い込まれていくような軌道なので見ていて気持ちいい。

 人を使うのもうまいので、コンビネーションでも崩していける。カットイン型の選手って形があって周りが見えなくなっちゃって、シュートを打つのがバレバレの選手っているじゃないですか。杉山選手は周りも見えていて、うまく使えるんですよね。

太田修介(FC町田ゼルビア)

 今シーズン11得点。速いんですが、速いだけでなくチーム全体のスピード感を上げられる選手。以前もスポルティーバで話しましたが、速いのにチームのなかで浮かないんですよね。

 独りよがりじゃないスピード感。躍動感が本当にあって、軽いスピードじゃなくて、迫力があって重みのあるスピード感というか。

 野球のストレートにも軽い重いってありますが、スピードがあって軽い選手って当たられると飛ばされてしまうことがあるじゃないですか。でも、太田選手は当たられても飛ばされない。強さのある速さですよね。

<FW部門>

小川航基(横浜FC)

 今年は文句なしの活躍ですよね。26点も取ってダントツの得点王ですから。

 サッカーって、みんな「決定力不足だ」って簡単に言うんですけど、そもそも簡単に見えるシュートでもなかなか入らないんですよ。でも今年の小川選手は、いい形に入ったらしっかり決める。

 簡単に見えるシュートを外さないってすごいことですよ。ゴールだけじゃなくてヘディングもいいですし、足元も収まるし。裏に抜け出してもいいし、ポストプレーもいい。相手DFも今季の小川選手は止めようがなかったんじゃないでしょうか。

 本人に話を聞いたわけじゃないですが、東京五輪のメンバーに選ばれなかったのは影響しているのかもしれません。ワールドカップや五輪に選ばれなかった選手のなかから、ガーンって一気に伸びる選手っていますよね。僕は勝手に思ってるだけですが、小川選手の今年の活躍はそういったものも思わせてくれます。

 横浜FCには中村俊輔選手もいて、イサカ・ゼイン選手もいて、桐光学園の選手たちがニッパツで活躍するというのが、なんかいいなって思って見ていました。

長谷川竜也(横浜FC)

 川崎フロンターレからやってきて、違いを見せてくれた選手ですよね。長谷川選手から小川選手っていうホットラインが何度もありました。左サイドから右足で入れるクロスがほんとにすばらしい。ピンポイントでばっちり合う。

 シャドーやトップ下のようなポジションでしたが、下りていって起点を作ったり、自分でボールを運んだりと、仕事も多岐に渡っていました。

 少しお話する機会があったんですが、今シーズン終盤はキャプテンとして「プレッシャーを感じることもありました」って話してくれたんですよね。プレー面だけじゃない部分も大変だったんだろうと思います。でも、その大変さをピッチ上のプレーで返してくれるというか、それは本当にすばらしいなと思います。

 川崎でやっていた時はサイドからドリブルというイメージが強かったですが、横浜FCに来てからは改めていろんな仕事ができるところを見せてくれて、やっぱりすごいなと。

高木善朗(アルビレックス新潟)

 終盤大きなケガに遭ってしまいましたが、今シーズンも文句なしの大活躍でした。

「攻撃を引っ張ります!」というのを背中で見せてくれる選手ですよね。おそらく今シーズンも被ファールは一番多いんじゃないでしょうか。ボールを取られそうになっても体を張って止めたり、ファールを受けてもそこで起点になるならいいというぐらいの心意気を感じるんですよね。

 自分で打開してゴールを決めたり、ラストパスを出したりする仕事も多いですが、自分がサイドに開いてサイドの選手に中を使わせたりするスペースの作り方もうまい。これは高木選手ならではの個性ですし、トップ下のポジションだと今季一番いい選手だったと思います。

 高木選手の存在が、伊藤涼太郎選手に火をつけたのではないかと見ています。トップの選手、ワイドの選手、中盤と前線など、孤立しそうな部分を走り回って、間に入ってつなげてくれるような存在。高木選手の存在でチームがつながっていくような感じなんですよね。

ミッチェル・デューク(ファジアーノ岡山)

 とにかく岡山に合う選手。もう岡山生まれなんじゃないかと思ってしまうぐらい(笑)。

 献身的で体を張るし、守備もガンガンいくし、それでいて点もちゃんと取る。デューク選手の獲得は、岡山にとってもデューク選手にとっても幸せな移籍だったんじゃないかと思います。岡山に永久に住んでもらいたいぐらいですよね。

 岡山のサポーターって、頑張ったりハードワークしてくれる選手をすごく後押しして応援する感じがありますが、それを外国籍の選手がやってくれてるのは、岡山のサポーターもうれしいんじゃないでしょうか。

<若手部門>

小畑裕馬(GK/ベガルタ仙台)

 リーグ戦終盤で見せたビッグセーブの数々、すごかったですよね。チームもスタジアムも「わっ!!」て盛り上がるセーブを見せてくれました。

 プロって、いいポジショニングで簡単にキャッチしたりするのも大事だと思うんですが、スーパーセーブでチームを救うのもやっぱり大事で、それが多い選手ですよね。キーパーだけど、スタジアムを沸かすことができる。若い選手ながら、それをやってのけるというのもいいですよね。

 また、ユース育ちなのもいいですよね。まだまだユース育ちのキーパーって少ないので。ユースの選手たちって、サポーターが応援する理由もわかるじゃないですか。特にキーパーってポジションは、サポーターの近くで背中に声援を受けるので。サポーターの声援と小畑選手のプレーは、お互いに高めあってる感じがありますよね。

西久保駿介(DF/ジェフユナイテッド千葉)

 ポテンシャルがかなり高い。将来が楽しみです。

 まず身体能力が高い。スピードもあるし、ジャンプ力もあるので、ヘディングの打点が高い。身長はそこまであるわけじゃないですが、チームのなかでもターゲットにされるぐらいの高さがありますね。

 ロングスローも投げられます。おそらく体が柔らかいからだと思うのですが、右足でクロスを上げた時に右足が体に巻きつくぐらい行くんですよね。だから、クロスはスピードがあってよくコントロールされている。

 驚いたという意味では、今季一番の選手ですね。将来は相当なレベルにいくと予想しています。

弓場将輝(MF/大分トリニータ)

 ボール扱いの基本ができあがっていて、どんなボールを受けても味方にうまくつなげられる。後ろ向きでもビビらない。相手がプレッシャーに来てもビビらない。中盤の窮屈なところでも顔を出せるし、攻撃の時はしっかり上がって絡んでいける。

 大分のやり方はポジショニングも大事だと思うんですが、弓場選手はそれも本当にいいんですよね。大分は、右サイドは井上健太選手が独力で打開していきますが、左サイドはコンビネーションを使うことが多くて、そこに弓場選手はうまく絡んでいけてます。

 一番いいなと思ったのは、下半身ががっちりしているところ。まだ20歳ですが、華奢な感じがない。あの体があっての安定感なのかもと思って見ています。

佐野航大(MF/ファジアーノ岡山)

 左右両足、本当に均等に扱えます。苦しい状態でも、後ろにボールを下げて逃げるようなことがない。いわゆる標準的な左のワイドのプレーヤーというやり方ではなく、自分流のやり方を持っています。

 ポジショニングから独特な感じがありますね。中盤でプレーしていても、左に入っても自分の色を出せるのはすごいなと。技術だけじゃなく、賢さもあるからこそでしょうね。