J2ウォッチャー平畠啓史さんが紹介する2022シーズンの優秀選手たち。「全試合フル出場」「チームを仕切っている」「ザ・フットボーラー」
平畠啓史の勝手にJ2アワード優秀選手 前編
例年より過密日程、かつ例年どおり42試合を戦うハードなJ2が終了。今季もしっかりとリーグを見守ってきたJ2ウォッチャー平畠啓史さんに、GK、DF、MFなど、各部門での優秀選手を紹介してもらう形で総括してもらう。
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アルビレックス新潟の優勝に貢献した小島亨介(左)と藤原奏哉(右)
小島亨介(アルビレックス新潟)
全試合フルタイム出場。42試合で35失点というのはすばらしい数字ですよね。若い時から期待されていた選手ですが、ケガなどもあってなかなか出場が難しかったなか、ようやく能力が実証されたというか。ここにきてレギュラーで安定したパフォーマンスを見せてくれました。
キーパーとしてすべての能力が高いんですよね。新潟はつなぐチームなので、足元も高い能力が求められます。精神的に落ち着いていて、バタバタしないのが魅力です。
新潟は、ベンチでも盛り上げてくれる阿部航斗選手にも触れておきたい。新潟のGK陣として、注目していました。
後藤雅明(モンテディオ山形)
順位って得失点差の順番に近くなることが多いと思うんですが、山形の得失点差は22で新潟の次にいいんですよね。山形と言うと攻撃的なサッカーに注目が集まりますが、失点が40と少ない。実は守備がしっかりしていて戦えるチームなんですよね。イケイケドンドンという印象のほうが強いと思うんですが、ギャップがあって面白い。
後藤選手は、191cmあるので、ハイボールの安定感はJ2ナンバーワンじゃないかと。体が大きくてももっさりしているところはなくて、しっかり動ける。海外のGKのような雰囲気がありますよね。ツェーゲン金沢時代からいいキーパーでしたが、山形でもそれを証明しています。山形ももちろん足元のスキルがキーパーにも必要で、それが備わっていますよね。
<DF部門>藤原奏哉(アルビレックス新潟)
今季の彼は、どう考えても外せないですね。鉄板すぎる。
守備力、球際の強さ、ボランチもやっていたからボールさばきもうまい。攻撃参加のタイミングもいい。攻撃の時のポジショニングも中だったり外だったり。今季は3試合連続ゴールもあって、攻撃力もあります。シンプルに今シーズンのナンバーワン右サイドバックと言っていいんじゃないでしょうか。
最終節のコメントも泣かせてくれましたよね。「シャーレ触ってません。シャーレ触るのはJ1で」というようなことを言っていて本当にかっこいいなと。自分が対戦相手だったら、藤原選手のいるサイドから攻めるのはやめておこうと思う。
相手からは、警戒ポイントとしてずっとマークされていたんじゃないでしょうか。新潟のようにつなぐチームはパスの逃げ場が大事になってきますが、そういう役割もできるので本当にいいですよね。J1でのプレーも楽しみです。
菅田真啓(ロアッソ熊本)
菅田選手、黒木晃平選手、イヨハ理ヘンリー選手で組む熊本の3バックはすばらしいので、代表して菅田選手をあげさせていただきました。
対人プレーの強さやヘディングの強さが光ります。大木武監督のサッカーにおいて3バックの真ん中は人への強さが必要で責任感が求められますが、中央でどっしり構えてくれている安定感がある。守備のバランスが崩れている時でも菅田選手なら跳ね返してくれます。
3バックの選手たちの動きが本当に独特。黒木選手は相手のセンターバック(CB)にプレスをかけに行くシーンもあります。そうなると真ん中の選手は頼れる選手じゃないと難しいと思うんですよ。3バックの中での信頼関係も熟成されている感じがします。
ンドカ・ボニフェイス(東京ヴェルディ)
今のサッカーは守備の選手も(体型が)シュッとした選手が増えてきて、それでかつ足元がうまいみたいな。そんななか、肉体の強さを感じさせてくれるのがンドカ選手。体だけじゃなく心身ともに感じさせてくれる。体の中から「俺が絶対全部潰してやる!」ぐらいの気迫がありますよね。最近そういうCBが少ないと思っていたのでうれしいです。
守備の選手には‟岩っぽさ"や‟壁っぽさ"みたいなものが重要だと思っていて、ドーンと跳ね返してほしい。ンドカ選手にはそれがありますよね。久々にそういうタイプの選手が出てきたなと。
実はフィードも、ボール運びもうまいんですが、それを覆い隠してしまうぐらいの‟跳ね返す感"が半端ないんですよね。CKからも点を取っていて、攻撃のセットプレーの時は常に「俺が取ってやるぞ」という雰囲気を出していたのも好きですね。
三竿雄斗(大分トリニータ)
本当にうまいですよね。技術の確かさから出てくる賢さがあります。3バック左から攻撃に出ていくタイミングやポイントがすごい。守備も当然いいんですが、そこに加えて攻撃力もあるんですよね。
大分のあのサッカーを可能にしているのは、三竿選手の存在が大きいと思います。左のワイドでも、ボランチでもできる選手ですが、3バックの左が最適なポジションじゃないかと見ていて思います。
<MF部門>河原創(ロアッソ熊本)
今シーズン、本当に目立った選手です。自分でボールを集めて、散らして、守備ではボールを刈り取って、危ないスペースを埋めてと。
それだけじゃなく、クロスもスルーパスもすばらしい。精神的にも戦える最高の選手。今年のJ2の、中盤の中央の選手としては、鉄板ですよね。チームを仕切っているし、ゲームも仕切っている。凄まじい存在感。大木監督のサッカーの肝中の肝です。
足の速さが目立つとか、体の強さが目立つとか、そういう目立ち方じゃなくて、試合を支配する目立ち方なんです。味方へのパスも本当に気が使えているし、守備もちょっとしたところをサッと埋めたり、気が使えているんですよね。
高宇洋(アルビレックス新潟)
高選手も、仕切っている感じが半端ないですね。
男臭いのもいいですよ。チームメイトに「やって来いや!」「勝負して来いや!」的な感じのパスを出すんです。味方が上がったスペースを使われても、「俺が守ったるわ!」みたいな感じが出ていてかっこいんですよ。ああいうふうに仕切れる人がいると、サッカーに限らず会がまとまりますよね。
チームが苦しい時に顔を出してくれる。いい時しか顔出さない選手っているじゃないですか(笑)。高選手は苦しい時に顔を出して、コンパクトなスペースでも打開していくようなパスを出せるんですよね。
和田拓也(横浜FC)
本当効いてますよね。ここに居てほしいというところに必ずいる。苦しいところに出てきてくれるんです。
和田選手はパスやボールコントロールの技術もあるんですが、相手に寄せたり、奪ったりの技術もものすごく高いんですよね。彼がボランチの一角に入るとチームが安定します。
後ろで構えて守っているだけじゃなく、前に行ってバーンってボールを奪いに行く力強さは、やっぱりJ1でやってきた選手だなと思わせます。今シーズンはシーズンを追うごとに存在感が増していって、欠かせない選手になりました。
森田晃樹(東京ヴェルディ)
ボール扱いがうまい「ザ・フットボーラー」という選手ですよね。体は小さいですが、ボランチに入るようになってさらによさが出てきました。
ボランチになってから、自分の形じゃない状況でボールを受けても、そこから自分の形に持っていけるシーンが増えたように思います。とにかくボールを運ぶのがうまくて、ドリブルでボールが体から離れない。いい場所で受けて、スピードをそこまであげるわけでないのに、うまく前進できてしまう。どこで受けてどう運んだらチームが前進できるかを、わかってやっていますよね。
また、肉体的威圧感はないんですが、ものすごく体を張って相手を止めるんですよ。その姿は、女性だったら‟キュン"としちゃうと思います。リーグ戦終盤の馬場晴也選手とのコンビがよかったですね。馬場選手にはガン! と行く強さがあって、森田選手はドリブルでスーっとボールを運んでくれる。
ドリブルと言えばフェイントで相手を交わすイメージがあるかもしれませんが、そうじゃなくてボールを丁寧に運んでいける選手。全然肩に力が入ってなくて、姿勢がいいから周りがよく見えているんででしょう。そうなると相手選手も寄せづらいですよね。
後編「サイド部門・FW部門・若手部門」>>