ある日突然、半同棲中の彼氏に「家から出ていってほしい」と告げられた女。その理由は…
男と女は全く別の生き物だ。それゆえに、スレ違いは生まれるもの。
出会い、デート、交際、そして夫婦に至るまで…この世に男と女がいる限り、スレ違いはいつだって起こりうるのだ。
-あの時、彼（彼女）は何を思っていたの…？
誰にも聞けなかった謎を、紐解いていこう。
さて、今週の質問【Q】は？
▶前回：交際前のデートで、女性を旅行に誘ったら「YES」！でも直前でドタキャンされた理由
「瑠璃子。もうやめてくれない？」
譲治の家で洗い物をしていると、彼が急に声を荒らげた。背後から伝わってきたその声にビックリして、私は洗いかけのお皿を落としそうになる。
「違うよ。…全部だよ」
いつも温厚な譲治。彼がこんな表情をしているところを初めて見た。
私はゴム手袋をはめたまま譲治に近づく。
「ごめん。何か気に障ったことしたなら謝る」
「そういうことじゃないんだよ。瑠璃子、とりあえずもう出て行って」
「え？なんで？」
譲治の家で半同棲のような生活が始まって約3ヶ月。私は急に、彼の家から追い出されてしまった。
Q1：男が女に対して抱いていた幻想は？
譲治と知り合ったのは、マッチングアプリだった。
34歳、独身経営者。プロフィールを見るともともと外資系コンサル会社におり、独立したと書いてある。
― この人、いいかも。
私から“いいね”を送ると、すぐに返ってきた。そこからやり取りが始まり、しばらくして実際に会うことになったのだ。
そして待ち合わせ場所のカフェに現れた譲治に、私はすっかり心を奪われてしまった。
「はじめまして。譲治です」
「はじめまして。瑠璃子です」
お互いコーヒーを片手に頭を下げ合う。プロフィールだけ見ているともっとオラついた感じでも良いはずなのに、譲治はとても優しくて、ソフトな雰囲気だった。
「瑠璃子さん、モテそうなのに。何でマッチングアプリを？」
「出会いはあるんですが、なかなか良い人に巡り会えなくて…。もしくは、出会っても続かないんです。尽くし過ぎちゃうんですよね」
「尽くす女性、ダメなんですか？いいじゃないですか」
「そう言ってもらえる人に出会えたら嬉しいのですが…。アプリは、友達に勧められて使い始めました」
「そうだったんですね。でも世間の男性は見る目がないですね」
譲治の何気ない一言に、嬉しくなる。正直、同世代の子たちが続々と結婚していき、焦る気持ちがあった。
だからアプリも駆使して出会いを探している。でも譲治に出会って、私は何か感じるものがあった。
「譲治さんは、なぜ？譲治さんもかなりモテそうですが…」
「僕ですか？全然ですよ。ただ出会いがあまりないので、アプリだと効率的かなと思って」
「それはわかります。趣味とかでもマッチしやすいですしね」
食事会は非効率だし、何より疲れる。アプリだとより多くの人を見れるし、自分のタイプのみ探せるので譲治の意見に深く頷いてしまった。
「効率って大事ですよね」
「瑠璃子さんもそう思いますか？僕も効率重視で。女性も、賢くて効率良い人が好きなんです」
「そうなんですね！」
この日は1時間くらいで解散したものの、その後も連絡が続き、遂に二人で食事へ行くことになる。初デートを、譲治は『すし 田いら』を予約してくれていた。
「瑠璃子ちゃん、ここに来たことあった？」
「初めて来た♡ずっと来てみたかったから、嬉しい！」
いつの間にかタメ語になっていた私たち。この距離感の詰め方が嬉しい。
「よく来るの？」
「うん。ただ予約がなかなか取れないから、毎回来たら必ず次回の予約を取って帰るんだ」
「そうなんだ。誰と来るの？」
少しだけ胸がザワつく。今日の席も、本当は誰か別の子と来る予定だったのだろうか。私以外に、誰とデートしているのだろう。
「友達が多いかなぁ」
「そっか。人気店の予約枠は争奪戦だもんね。一緒に来れる子が羨ましいな」
「そうかな」
この時は譲治にこのまま話を流されてしまったけれど、私は会うたびに譲治が好きになっていった。だから普段どんな生活をしているのか、そして誰と会っているのかも気になる。
好きならば当然のことだろう。
「譲治って、普段は何してるの？」
「仕事して、美味しいもの食べて…たまにジム行ったりゴルフへ行ったり？特筆すべきようなことは、なにも（笑）」
「でもそういう何気ない日常が一番幸せだよね」
そんな会話をしながら、私たちは美味しいお鮨を心ゆくまで楽しんだ。
そしてこのデート以降、気がつけば食事の後は譲治の家へ行く流れが定番コースになっていた。
Q2：半同棲までしていたのに、男が辟易していた女の言動は？
初めて彼の家に泊まることになった時。私はタクシーの中で真っ先にこう思った。
― お泊まりセット、コンビニで買わないと。
女性には、いろいろと準備というものがある。ただ家へ行って、それで終わりではない。メイク落としに化粧水、乳液にクリーム。たくさんのアイテムが必要だ。
それに本音を言うと、30歳過ぎたお肌にはいつも使っている基礎化粧品一式が欲しい。家に置いているメイク道具と持ち歩いているメイク道具は違うし、翌朝も心配になる。
二度目のデートの時はいろいろとお泊まりセットを持っていたけれど、大荷物になってしまい本当に億劫だった。
だから三度目のデートの時は、譲治の家に置いておく用のアイテム一式を持っていった。
「ねぇ譲治。これ毎回持ってくるのが面倒だから、ここに置いていてもいい？」
「何を？」
「メイク落としとか」
「あーいいよ。適当に置いておいて」
― 私のメイク落としを置いてもOKということは、他に家へ上がらせる女子はいない、ということだよね？
他に女性がいたら、女物のコスメは置けないはず。私は譲治の反応を見て嬉しくなった。
そして泊まりの頻度が高くなっていくにつれて、私は段々と譲治の家に長くいるようになった。
「瑠璃子、今日は家に帰らなくていいの？」
「うん。今日は譲治といる日だから」
「でも僕、今夜出かけないといけないんだけど…」
「そうなの？じゃあ待ってる」
「いや、待ってなくていいよ。荷物もあるだろうし、本当に帰らなくていいの？」
「そうだねー…。じゃあ譲治が出かけている間に荷物だけ取ってこうようかな」
さらに仲が深まると、譲治がいない時でも彼の家にいるようになった。一応自分の家は残していたけれど、事実上半同棲しているような形だ。
ただそんな半同棲の生活を始めてから1ヶ月もすると、急に譲治の仕事が忙しくなった。帰宅時間も遅くなっていく。
「今日も帰り遅いの？誰と飲んでいるの？」
「仕事関係の人だよ」
「女性じゃない？私のこと忘れてないよね？」
「家にいるんだから、忘れないでしょ（笑）」
彼が忙しい時こそ、一緒に住むべきだと思う。一日の終わりには必ず会えるから。
「そっか、そうだよね。待ってるね」
「行ってきます」
まるで新婚生活のような甘い日々。彼を待つ間、家事をしたりしている時間も私には楽しかった。
けれども突然、彼から「出て行ってほしい」と言われてしまった。
果たして、私の何が間違っていたのだろうか…？
▶前回：交際前のデートで、女性を旅行に誘ったら「YES」！でも直前でドタキャンされた理由
▶1話目はこちら：「あなたとだったらいいよ♡」と言っていたのに。彼女が男を拒んだ理由
▶NEXT：11月6日 日曜更新予定
男が急に声を荒らげた理由は？
