一説によると世界約100か国の空を飛んでいるんだとか。

初飛行から60年以上、いまでも最新型が生産中

 1956(昭和31)年10月20日、アメリカのベル・エアクラフト社(現ベル・テキストロン)が開発した汎用ヘリコプターHU-1(現UH-1)が初飛行しました。

 HU-1は、シリーズ合計で1万6000機以上が生産された傑作ヘリコプターで、2022年10月現在も最新型のUH-2、民間モデル名「SUBARU ベル412EPX」が日本のSUBARUで開発・生産されているほどのベストセラー機です。


陸上自衛隊のUH-1Jヘリコプター(画像:陸上自衛隊)。

 なお、世界でも最も多く生産されたヘリコプターは旧ソ連製のミルMi-8(Mi-17)シリーズで約1万7000機以上。HU-1シリーズはそれに次ぐ世界第2位のヘリコプターになります。

 誕生のきっかけは、アメリカ陸軍が立てた新たな汎用ヘリコプターの導入計画によります。これは朝鮮戦争でヘリコプターが負傷者の後送や物資輸送などで重宝したことから、開発されました。

 こうして生まれた「モデル204(ベルの社内名称)」に、アメリカ陸軍は仮の名称として「XH-40」を付与。そして初飛行に成功すると、小改良が加えられたうえでHU-1として採用されたのです。

 1962(昭和47)年9月にはアメリカ軍内の型式番号の付与基準が改められたことにより、名称を「UH-1」に変更。こうして現在に至ります。ただ、HU-1時代にその字面から「ヒューイ(Huey)」と呼ばれたことにより、それが現在に至るまで愛称のひとつとして用いられています。なお、ほかにもネイティブアメリカン(インディアン)の部族名から「イロコイ」という愛称も付与されています。

中古機の放出やライセンス生産などで世界中に普及

 HU-1(UH-1)ヘリコプターが一躍、その名を知られるようになったのはベトナム戦争での多用によるでしょう。

 1960年代から1970年代前半にかけて起きたこの戦争に、本機は7000機あまりが投入され、物資輸送や人員輸送、捜索救難、さらには機関銃やロケット弾ポッドなどを搭載して対地攻撃などにも用いられました。

 また、このとき生産された機体は、戦争が終結すると民間や諸外国に中古機として放出されたため、民間でも消防や人道支援活動、研究活動、各種救助任務など幅広く使用されるようになります。


UH-1(モデル204)シリーズの最新型「SUBARU ベル412EPX」。写真は警察庁向けの機体で、その後岩手県警に貸与されている(画像:SUBARU)。

 加えて日本を始めとして各国で生産されるようになったことで、世界中で使用される傑作ヘリコプターへと昇華したといえるでしょう。

 機体構造もキャビン容積の拡大や新型エンジンへの換装だけでなく、エンジンの双発化やメインローターの枚数増加、電子機器の更新、さらにはレーダーの増設など随時アップデートが行われています。

 日本でも陸上自衛隊がHU-1BからHU-1H(1992年にUH-1Hへと改称)、UH-1Jと3代にわたって調達・運用しているほか、冒頭に述べたように最新のUH-2も導入を進めています。

 ほかにもモデル212や412といった民間仕様が警察、消防・防災、海上保安庁などの官公庁で運用されているほか、民間会社でも導入し使用しています。

 また本機の派生型として開発されたモデルも多く、前出のモデル212や412以外にも、能力向上型のベル214や同214ST、攻撃ヘリコプターのAH-1「コブラ」シリーズも含まれます。

 アメリカ製中型ヘリコプターの代名詞的存在といえるHU-1シリーズ、まだまだ世界中で飛び続けそうです。