JR西が開発する″列車以外の輸送手段″の実力は? 離れていても「3両編成」隊列走行BRTに乗る
JR西日本とソフトバンクが共同で実証実験を行っている自動運転・隊列走行BRTが公開されました。バスで“列車に近い”輸送手段を提供するというもの、実際に走る様子を見て、試乗してきました。
3台のバスが連携して、自動で隊列を組んで走行する
JR西日本が車両基地内に建設した「バスのテストコース」が、2022年10月17日に報道陣へ公開されました。列車に代わる輸送手段の選択肢となりうる「自動運転・隊列走行BRT」実験の場です。
隊列走行を行う3台のバス。操縦は先頭車によるもの(鶴原早恵子撮影)。
このテストコースはJR琵琶湖線の野洲駅(滋賀県野洲市)北側にある、車両基地の敷地内に設けられたもの。上下本線に挟まれた位置にあり、両側を琵琶湖線の電車が走り抜けていきます。テストコースの規模は総面積は約2万2800平方メートル、総延長約1.1km、直線最長約600mで、コース内にはコントロールセンター、駅・停留所、駐車場、交互通行ポイントなどが設けられています。
2021年10月以来、ここではソフトバンクとともにバスの自動運転や隊列走行の技術試験が行われてきました。今回は、車体が2台つながった連接バス、大型バス、小型バスの3台が自動運転で隊列走行のデモンストレーションを行いました。
自動運転・隊列走行においては、後続車は先頭車とアクセルやブレーキ、ハンドル操作の情報を遠隔で共有し自動で運行。さらに扉の開閉や車内アナウンス、空調などの操作も先頭車と連携して行います。
バス前面にはさまざまなセンサやカメラが設置されていて、車間距離や障害物を感知し、10〜20mの車間距離を保ちます。
これにより、先頭車に運転手が乗務していれば、後続車は無人でも隊列走行が可能。つまり、電車で言うところの「3両編成」のような格好です。隊列を長くすればするほど、運転手ひとりで大容量の「列車」を運転することが可能になるのです。BRTの持つ「大容量輸送」をさらに強化する技術と言えるでしょう。
「バスに付いていくバス」その乗車感覚は
自動運転により運転手の”手放し”で出発したバス。直線部分では30km/hほどのスピードが出ていましたが、安心して乗っていることができます。カーブ走行もなめらかで、違和感はありません。自動で運転していると言われなければ気づかないレベルです。
ただし、全体的に加速や減速にはぎこちなさを感じました。どちらもやや急で、がたんがたんと車内が揺れます。ここは今の自動運転技術の限界で、近いうちに克服されていくのだと思います。
自動運転で走行する先頭車(鶴原早恵子撮影)。
今回の目玉となった隊列走行ですが、無人のはずの後続車に乗っていても、普段バスに乗っている感覚とほとんど変わりません。前車や後車との距離も広すぎず近すぎずといったところでした。今回は安全上の理由から後続車の運転席に乗務員が着席していましたが、特に緊急操作も行われずに無事終了しました。
車内アナウンスやドアの開閉は先頭車がすべて操作しているのですが、後続車と非常にスムーズに連携されていて、ドアの動きも全車ほぼ同時。まさに、バスでありながら鉄道列車のような体験でした。しかもこれらの車両は列車と違い、個々に連結されていないのです。実用化が非常に楽しみになりました。
JR西日本とソフトバンクは今後、テストコースでさらに運用検討や総合試験などを行います。そして2023年度中にはコース内での走行技術を確立し、2020年代半ばには自動運転・隊列走行の社会実装を目指すとしています。
「さまざまな大きさのバスを組み合わせることで輸送力は変わる。地域によって異なる輸送ニーズに対応する選択肢のひとつにすることで、よりよい交通網を築き上げていきたい」とJR西日本 鉄道本部副本部長 鉄道本部イノベーション本部長の久保田修司さんは今後についての抱負を語りました。