阪急宝塚線に接続する私鉄「能勢電鉄」が、阪急線と同時に大幅なダイヤ改正を実施します。「当社始まって以来の大きな変更」との規模。阪急、能勢電とも、“祖業の路線”の存在感が薄れていきます。

箕面線の梅田直通打ち切り…どころの話じゃなかった「能勢電」ダイヤ改正

 阪急電鉄が2022年12月にダイヤ改正を実施し、宝塚線系統では、箕面線(石橋阪大前〜箕面)から大阪梅田へ直通する列車が廃止されます。箕面線は、阪急のルーツである箕面有馬電気軌道が最初に開業した、いわば“祖業の路線”。ここから梅田への直通列車がなくなることは、SNSなどでも話題になりました。
 
 とはいえ、箕面線・宝塚線の直通列車は2018年に大幅削減され、もはや平日朝に箕面発が2本残るのみとなっていました。それに対して今回、“祖業の路線”の大幅な改正を行うのが、同じく宝塚線に接続している能勢電鉄、通称「能勢電」です。


山岳区間をゆく能勢電の列車(画像:能勢電鉄)。

 能勢電は宝塚線の川西能勢口駅から北の山間部へ分け入り、妙見口駅(大阪府豊能町)に至る妙見線と、途中の山下駅から分岐して日生中央駅(兵庫県猪名川町)へ至る日生線を営業しています。

 阪急とは別の私鉄ですが、日生中央〜大阪梅田間を直通する特急「日生エクスプレス」を運行するなど、密接な関係にあります。本線にあたる妙見線は、妙見山への参詣輸送を目的として1913(大正2)年に開業、日生線は阪急日生ニュータウンのアクセス路線として1978(昭和53)年に開業しました。

 今回の改正はいわば、支線にあたる日生線の本格的な“本線化”といえます。直通列車は基本的に川西能勢口〜日生中央間の運転とし、妙見線の山下〜妙見口間は折り返し運行をメインにするというもの。川西能勢口〜妙見口間の直通列車は5時台と23時台に車両運用の都合で残るのみになるといいます。

 現在の能勢電は日中、妙見口の直通列車と日生中央の直通列車を10分おきに運転し、山下駅でそれぞれの駅発着の折り返し列車を接続させることにより、全線で10分間隔の運行を実現しています。これをほとんど、日生中央の直通列車に振り向けるという今回の改正について、能勢電鉄は「当社始まって以来の大きな変更」といいます。

日生中央シフトの裏に合理化

 大幅な変更の背景には、妙見線の利用者が少ないことがあります。

 妙見線の山下駅から北には笹部、光風台、ときわ台、妙見口の4駅があり、沿線にはニュータウンも広がっているものの、その利用者数は「4駅合わせても、日生中央1駅分の6割」(能勢電鉄)なのだそうです。

 また、現在のダイヤでは1時間あたり6編成の列車が必要なところ、直通列車の運行を日生中央に振り向けることで、5編成に削減しつつ10分間隔の運行を維持できるとのこと。ただし山下〜妙見口間については減便になるといいます。


妙見口駅。ここからケーブルカーとリフトを乗り継ぎ妙見山へ行ける(画像:能勢電鉄)。

 新型コロナの影響で能勢電鉄も大きな打撃を受けているといいます。今回は、平日朝ラッシュ時および21時以降の本数削減、土曜ダイヤの廃止なども行われます。川西能勢口発の終電車に関しては、日生中央行きは3分繰り上げの24時10分発と、ほぼ変わらないものの、妙見口行きは23分繰り上げの23時50分発となります。