思いどおりに身体が動かなくなりはじめる50代。今までは便利だと思っていた収納が、家事の負担になったり、思わぬケガにつながったりすることも。「50代のうちにラクで安全な収納にシフトしておくと、年齢を重ねても快適に暮らせます」と話すのは、整理収納アドバイザーでインテリアコーディネーターの木村充子さん。50代を迎え自身も見直すことで、ラクになったという収納について語ります。

50代は収納を見直す適齢期

50代に入ると、だんだんと無理が利かなくなってきます。筆者も無理な体勢を取って筋を傷めたり、思いがけずバランスを崩したりするなど、今までどおりに身体が動かない、と感じることが増えました。

じつは、そんな50代こそ収納を見直す適齢期。なぜなら身体面以外にも、子どもの手が離れるなど、生活も変化のときを迎え、必要なものが変わる時期だからです。

そして、50代の身体と生活に合った収納に見直しておくことが、10年、20年後のラクで安全な暮らしにつながります。

では、どんな点を見直せばよいのか。さっそく筆者も実践してよかったと思う4つの見直しポイントを紹介します。

 

1.見せる収納を見直す

まずは「見せる収納」を見直しましょう。

たとえば、キッチンのコンロ脇のスパイスラック。筆者も40代まではこの場所にさまざまなスパイスを並べていました。

お気に入りを見せながら収納するのは楽しかったのですが、油でギトギトになったスパイスのビンの油汚れを掃除するのが面倒に。50代の今は引き出しの中に収納しています。

 

見せる収納をやめて、引き出しや扉の中に隠して収納するほうが、掃除は断然ラク。

同じことは収納全体に言えます。50代からの収納は、「見せる収納」から掃除がラクな「隠す収納」にして、掃除がつらくならない程度に、お気に入りを飾ることをおすすめします。

 

2.高いところの収納を見直す

次に、高いところの収納を見直しましょう。

たとえば、キッチンのつり戸棚。食器などの割れものや重いものが、不安定に置いてありませんか? 普段使わないものだからといって、高いところにこうしたものを押し込むのは、筋力や握力の落ちてくる50代にはとても危険です。

 

筆者の家のキッチンには、つり戸棚があります。もともとここには、取っ手つきの収納ケースを使って、出し入れしやすい工夫をすることに。

さらに、50代になってからは中に入れるものを見直して、プラスチックの保存容器やお弁当箱などの軽いもの、割れないものだけしか入れないようにしました。

このように、50代以降も収納スペースの都合で、高いところにものを置かざるを得ない場合は、出し入れしやすく、万が一落下しても大丈夫なものだけに限定して収納すると安全です。

 

3.つっぱる収納を見直す

以前、実家に帰省したときのこと。夜中に大きな物音がしたので飛び起きてみると…。パントリーに使っていたつっぱり棒が、落下していました。高齢の両親がふたりで暮らす家で、また落下するのは危険。ということで撤去することに。

収納で手軽に使える、つっぱり棒やつっぱり棚は便利です。しかし、しっかり取りつけたつもりでも、50代の握力ではつけ方が甘くなることも。また、取りつけてから年数がたち、知らず知らずのうちにずれやゆがみが生じていることもあります。この機会に見直しをおすすめします。

 

筆者も50代になり、つっぱり棒やつっぱり棚を使うのをやめました。ビスを打てる状況なら、つっぱらせるよりもしっかり固定できて安心です。

4.ロフト、床下、階段下収納を見直す

筆者の家には洗面所に床下収納がありますが、こちらも見直しました。

50代には重い扉をあけてものを出し入れするのは大変。何年も扉をあけていませんでした。当然、中のものは必要がないものでした。

 

また、筆者の家にはありませんが、ロフトがあるお宅もぜひ見直しを。

これまで筆者が整理収納アドバイスの仕事で伺った、50代以降のお客様のお宅のほとんどで、ロフトは物置と化していました。なぜなら、はしごを上り下りして、ものを出し入れするのが大変だからです。

床下収納やロフトのようにものを出し入れするのが大変なスペースは、年齢を重ねるほどに使いこなすのが難しくなってきます。また、雑多なものをむやみに入れがちなため、整理してみるとほとんどがいらないものだった、ということも。

これらのスペースは、使わずにすむのがいちばんです。しかし、やむを得ず使う場合は、中に入っているものを把握し、しまいっぱなしのまま忘れてしまうことのないようにしましょう。

危険は身近なところにあります。元気な50代のうちに収納を見直して、現在と将来の「ラクで安全」な暮らしを手に入れてください。