2022年1月、Microsoftは大手ゲームメーカーのActivision Blizzardを買収すると発表しました。この買収により、Microsoftが1990年代にリリースされた古いFPSなどを無料でリリースするようになったとArs Technicaが報じています。

As Microsoft-Activision merger nears, a classic FPS license reappears-for free | Ars Technica

https://arstechnica.com/gaming/2022/07/as-microsoft-activision-merger-nears-a-classic-fps-license-reappears-for-free/

現地時間の2022年7月14日、MicrosoftがWindows PC向けに「Heretic:Shadow of the Serpent Riders」「HeXen:Beyond Heretic」「HeXen:Deathkings of the Dark Citadel」「The Elder Scrolls:Arena」「Quake Champions」という5つのタイトルを、Xbox Insider Program向けに無料で提供すると発表しました。提供方法は通常とは異なりXbox Insider Program経由となっていますが、Windows 10およびWindows 11を搭載しているPCからなら、Xbox Insider Hubにアクセスすることで誰でも無料で上記5タイトルをプレイできるようになります。なお、今回リリースされた5つのタイトルはどれもMicrosoftが買収することとなったベセスダ・ソフトワークスのタイトルです。

Join 5 Various Xbox Insider Previews of Classic Games! - Xbox Wire

https://news.xbox.com/en-us/2022/07/14/join-5-various-xbox-insider-previews-of-classic-games/



Microsoftが無料でリリースした5つのタイトルは、すべてDOSBoxというエミュレーターを介して動作しており、「テキストのみのコマンドプロンプトでお気に入りの古いゲームを起動するような、昔ながらの感覚を再現した不格好なシステム」とArs Technicaに指摘されています。それでも、Ars Technicaは「Windows Storeから『普通にゲームを起動する』ことを期待しているようなユーザーにとっては、プレイヤーがビジュアルオプションを調整したり、コントロールを再マップしたりすることができず、不便な印象を覚えるかもしれません。しかし、きちんと動作するので無料でプレイできるゲームとしてはかなり優秀です」と記しています。

一方で、Microsoftが突如無料でリリースした「Heretic:Shadow of the Serpent Riders」「HeXen:Beyond Heretic」「HeXen:Deathkings of the Dark Citadel」「The Elder Scrolls:Arena」「Quake Champions」という5つのタイトルの一部は、SteamやGOGといったオンラインゲームストア上で有料で販売されています。

Steamの場合、「Heretic:Shadow of the Serpent Riders」は498円

Steam:Heretic: Shadow of the Serpent Riders

https://store.steampowered.com/app/2390/Heretic_Shadow_of_the_Serpent_Riders/



「HeXen:Beyond Heretic」は498円

Steam:HeXen: Beyond Heretic

https://store.steampowered.com/app/2360/HeXen_Beyond_Heretic/



「HeXen:Deathkings of the Dark Citadel」は498円

Steam:HeXen: Deathkings of the Dark Citadel

https://store.steampowered.com/app/2370/HeXen_Deathkings_of_the_Dark_Citadel/



「The Elder Scrolls:Arena」は無料で配信中

Steam:The Elder Scrolls: Arena

https://store.steampowered.com/app/1812290/The_Elder_Scrolls_Arena/



「Quake Champions」も無料で配信中

Steam:Quake Champions

https://store.steampowered.com/app/611500/Quake_Champions/



SteamやGOGでは有料で販売されているHeXenとHereticについて、Ars Technicaは「HeXenとHereticは何年もパブリッシング関連で宙ぶらりん状態でした。Microsoftは2020年後半にベセスダ・ソフトワークスおよびその子会社のパブリッシャーや開発者を買収したため、その結果としてXbox Game Passにベセスダ関連のタイトルが追加されることとなり、買収により入手することとなったゲームのライセンスが効力を発揮したかのように見えました。しかし、これは完全ではなかったようです。Xbox Game Passは家庭用ゲーム機にフォーカスしているため、古いPC専用ゲームは単に見過ごされているだけかと思ったのですが、その後の数カ月間にわたり、PCからXbox Game Passを利用しているユーザー向けに特定のゲームがリリースされることはありませんでした」と指摘。

さらに、HereticおよびHexenはSteam上ではパブリッシャーが「id Software」と表記されているという疑問もあります。id Softwareは2009年にベセスダ・ソフトワークスの親会社であるゼニマックス・メディアに買収されているため、ベセスダを買収してからは、「id Software」のライセンスもすべてMicrosoftが保有することになると思われます。

しかし、実際にはActivisionが1997年にHereticおよびHexenの開発元であるRaven Softwareを買収した際に、HereticとHexenの両シリーズのライセンスはすべてActivisionに引き継がれることとなりました。

つまり、今回のMicrosoftによるActivision Blizzardの買収により、HereticおよびHexenに関するすべてのライセンスがMicrosoftの元に集約されることとなり、これらのタイトルをすべて無料でリリースできるようになった可能性があるわけです。Ars Technicaは「旧作のHereticやHexenのパブリッシャーとして、Steam上には『id Software』の名前が記載されていますが、これは明らかに間違ったものです」と記しています。

MicrosoftによるActivision Blizzardおよびベセスダ・ソフトワークスの買収が完了する前に、ライセンス関連の問題を解消するべく話し合いの場が設けられたか否かは不明であり、Ars Technicaは各社の広報担当者に問い合わせしたとしていますが、記事作成時点では返答はない模様。

なお、MicrosoftのActivision Blizzard買収によりライセンス問題が解消されたのは、今回リリースされた5タイトルだけではありません。Microsoftは2022年6月下旬に今回同様Xbox Insider Hub経由でQuake 4を無料でリリースしています。