個性豊かなレストランが点在する、東京の西エリア。

今回注目したのは、住民の感度が高い学芸大学、品格漂う経堂、“今”を感じる店が急増中の幡ヶ谷など。

これからの暑さを心地よく和らげてくれるような、夏の夜にふらりと寄りたい6軒をご紹介。



※コロナ禍の状況につき、来店の際には店舗へお問い合わせください。




▽INDEX

1.自然派ワインが人気!学芸大学のビストロ

2.学芸大学のネオ酒場といえばここ!

3.シンプルトマトパスタが絶品!西小山のトラットリア

4.経堂の住宅街へ進出した、お洒落角打ち

5.子供もOK!世界の美味を幡ヶ谷で味わえる人気店

6.夜パフェも人気!参宮橋のガストロノミー


1.自然派ワインが人気!学芸大学のビストロ
『ビストロ 11』


学芸大学駅から至近の路地裏で、小粋な佇まいを見せる『ビストロ 11』。

2020年のオープン以降、夫婦が切り盛りするカウンターは地元民の憩いの場に。

日本各地に根ざした食材を使い、優しいフレンチへと昇華させている。


パリの風情が漂う一軒家で、滋味深きフレンチに癒やされる

ガラス張りの扉と白壁が、シックな雰囲気を放つ。扉の上や看板にある「1」の長さが違うロゴは、「僕と長身の妻が並んで立った様子」というのも微笑ましい


長野の『オーベルジュ・エスポワール』で13年間修業を積み、都内のフレンチやビストロでもシェフを務めた松浦真吾さん。

『ビストロ 11』をオープンするにあたって目指したのは、全国のユニークな食材の特性を生かしたビストロ。

“地産地消”をモットーとする長野のオーベルジュで、自然を感じながら仕事をしてきただけにパンや調味料も手作り。

食材もサシの加減が程よい徳島の黒毛和牛や、長野をはじめ全国から無農薬野菜を取り寄せるなどできるだけナチュラルなものにこだわる。




旨みの強いランプを使用した「徳島県産牛のステーキ(ハーフ)」2,000円。

赤ワインソースと季節野菜を添えて。




「惣菜の盛り合わせ」1,450円。

おなじみのウフマヨやパテドカンパーニュなどが日替わりで5〜6種入る。



「甘エビとアボカド 八丈島レモンのカルパッチョ」1,450円。マリネした甘エビの甘みとアボカドのねっとり感がマッチ!


もちろん合わせるワインもすべて自然派だ。

また、ビストロの定番料理ウフマヨなら、イカの肝醤油を合わせてオリジナリティを発揮。

枠にとらわれない闊達な発想力も、地元の食通たちに愛される所以だろう。


〆の温麺にホッと和む!


「〆の白石温麺」1,100円。

油を使わず短い温麺は、宮城県の特産品。鶏だしに魚と貝の出汁を足したスープに、ハーブとねぎ油がアクセント。




オレンジ「レスカルポレット・ブラン」、白「ヴァゼン」、赤「バルブ・ルース2020」などの自然派ワインはグラスで楽しめる。770円〜。


夫婦の絆がにじむ「11」の先に帰りたくなるカウンターがある


小ぢんまりとしつつも、高い天井がリラックス感を与えるカウンター。

調理を松浦さん、サービスを奥さまの恵さんが担当する。21時以降はバー使いも歓迎。


ジャンルレスなアテと、可愛らしいフルーツサワーが話題!


2.学芸大学のネオ酒場といえばここ!
『酒場 浮雲』


ここ数年、イマドキな酒場が続々と誕生している学大エリアで、不動の人気を誇る『酒場 浮雲』。

圧巻のバラエティを誇るアテのクオリティと、センスがにじむ空間が、多くのリピーターを生んでいる。


ネオ酒場のジャンルレスな“アテ”が大人の胃袋をわしづかみに!

天井から吊るされたアンティークのペンダントライトや、ハイスツールチェアが今っぽい雰囲気を醸し出す。絶妙に懐かしいJ-POPのBGMも会話を盛り上げる


クリエイターやアパレル系など、感度の高い職種の大人が多く住む学芸大学。

住民らが「外せない一軒」と口をそろえるのが、オープン4年目を迎える『酒場 浮雲』だ。

カウンターの目の前にズラリと並んだ短冊メニューは、和食に中華、イタリアン、夏にはエスニックも肩を並べる自由闊達さ。


八寸のような前菜や贅沢なパスタに、つい目移りしてしまう!


「おまかせ前菜盛り合わせ」1,600円(注文は人数分から)。

この日は、日向夏の白和え、名物の〆サバサンドなど6種。



牛スジのフォン・ド・ボーで仕立てた「有田牛すじ肉の麻婆豆腐」1,100円。牛だしの甘みと辛みや痺れが後を引く


例えば、一番人気の前菜盛り合わせは、アスパラガスのポタージュにいくらを添えたカッペリーニや、合鴨のロース煮、ひと手間加えたお造りなど、専門店顔負けの逸品尽くし。

“何でもアリ”の居酒屋だが、食材の出汁にこだわり、旨みを引き出す有川 毅さんの料理はどれも、食べ慣れた大人を満たしてくれる。

ハーフポーションでも注文できる柔軟さで、シーンを問わず訪れたくなる魅力であふれている。




「塩水うにのスパゲッティ」(2,750円)は、金目鯛とのどぐろの頭でとった魚介だしを効かせたペスカトーレに、うにをたっぷりトッピング。




銘柄牛をじっくり焼いた「有田牛クリミ炭火焼き」(2,500円)は、赤身なのに柔らかで、噛み締めるほどに肉汁が爆発!


フルーツサワーがSNSで話題!


季節でフレーバーが変わるフルーツサワーがSNSで話題。

写真の「いちごサワー」(990円)は、いちご果肉100%のフローズンをオン!




店主の有川さんは、スイスの和食店を皮切りに、都内のイタリアンやもつ鍋店など、多ジャンルで活躍。

休日の趣味は食べ歩きで、その時ハマっている料理がメニューに反映されることも多いとか。

「女性客が多いですが、最近は男性のひとり客も増えています」


自家製パンは必食!素材の旨みが堪能できる、ナチュラルイタリアン


3.シンプルトマトパスタが絶品!西小山のトラットリア
『Cizia』


西小山にある昔ながらの商店街に溶け込む『Cizia』。

店先にはパン工房も併設され、一見するとお洒落なベーカリーのようだが、そこでは素材を生かしたイタリアンと自然派ワインが楽しめる。


西小山の“ベーカリー”に上質なイタリアンとワインを求めて

夜の帳が下りたアーケードのど真ん中で、常連をもてなす4席のみのカウンター。店内はナチュラルな色調で統一され、夜でもさわやかな活気にあふれる


「うちは0歳から大丈夫。時間制限もありません」そう笑顔で語る、ばばかつえシェフ。

彼女の人柄に惹かれて通う常連も多い『Cizia』だが、人気の理由はそれだけではない。

例えば、柔らかさに目を見張る鴨のローストや、飽きがこないトマトソースのパスタなど、素材の旨みをストレートに感じる料理がそろうのだ。




「シンプルトマトソース」(1,400円)は、ひと皿90gとボリュームも満点。

甘酸のバランスが絶妙な自家製トマトソースが、もっちりしたパスタによく絡む。



「鴨のロースト」2,900円。鴨のしっとりとした肉質に、パッションフルーツと洋梨のソースが優しく寄り添う


また、ばばさんはイタリアンを目指す一方、自分の店では自家製パンを出したいと、“パン飲み”を世に広めた『パーラー江古田』で修業。

天然酵母の風味が豊かなパンは、買って帰りたいとねだる客も多い名物だ。


名店仕込みの自家製パンは必食!


重量で価格が決まる「パンたち」。

写真は、フォカッチャや、ブルーベリーとクランベリーのパンで100g 350円。イートインのみ。


並んだ客同士がまるで昔からの友達のような雰囲気を醸し出す

ワインはすべて自然派。写真は宮城の新生ワイナリー『KIYOwines』の微発泡「GYM2020」グラス950円


前菜からメインまでがっつり味わうカップルもいれば、遅めの時間には、パンをつまみにワインを傾けるひとり客を見かけることも。

多様なシーンに寄り添う、懐の深さが心地いい。




都内のイタリアンや、ワイン通をも惹きつける『パーラー江古田』で腕を磨いたばばさんは、自然派志向。

趣味は畑仕事で、最近はワイン作りにもハマっているんだとか。

「地元の常連さんと、遠方からの方とで半々ぐらいです。女性のひとり客も多くいらっしゃいますよ」


自然派ワインとアジア料理が織りなす、新しきマリアージュ!


4.経堂の住宅街へ進出した、お洒落角打ち
『no.506』


酒店の一角で買ったお酒を嗜む。角打ちは、なんといっても日々通える気軽さが魅力だが、そのワインバージョンが経堂に昨年誕生した『no.506』だ。

自然派ワインとアジア料理が織りなす、新しきマリアージュを堪能したい。


ワインショップに潜む“角打ち”には、感度高き世田谷住人が夜な夜な集う

ポップな外観に惹かれて中に入れば、そこは天井までつながるひんやりとしたウォークインセラー。奥には、ワインラバーたちの「秘密基地」が広がる!


『no.506』は、ワイン専門のお洒落角打ちとして注目を浴びた外苑前『no.501』の姉妹店。

本店に負けじと、ワインは自然派のみで約600種を常備する。

試飲代わりに1杯引っ掛け買って帰るもよし、料理に合わせてグラスで頼むのもよし、という使い勝手の良さがウリだ。


住宅街で怪しく輝くネオンに、大人は吸い寄せられる


ビストロ料理が評判の本店とは打って変わり、こちらはアジアンテイストの料理を提供。

スペシャリテは、アフタヌーンティーのような盛りつけに意表をつかれる、ひと口サイズの前菜盛り合わせだ。

調味料や薬味もすべて自家製、と料理もワイン同様ナチュラル志向である。

料理との相性がピカイチなオレンジワイン片手に、流木のオブジェが鎮座するカウンターで憩いのひとときを。




「“シャングリラ”〜ひと口サイズの前菜盛り合わせ〜」2,500円(2人前)。

レバームースからキムチまで、スパイスの効いた自家製の前菜が約10種並ぶ。




広島県産の“玄米麺”で作った「フォー(玄米)」900円。

喉越しがいい麺と、鶏ガラスープの優しい味わいが特徴だ。


オレンジワインに一家言あり!


オレンジワインにこだわり、岡山『ドメーヌテッタ』に委託した自社ブランドの「みどりちゃん」3,850円(右)や、アルザスの「ドメーヌ・ギュップ」5,690円(左)などレアな銘柄も多数。グラス880円〜。




地元・神戸のビストロで修業を積んだ西村裕太シェフ。趣味は古着の収集だとか。

「場所柄、近所の方が多いですが皆さんのワインへの造詣の深さに驚かされます。食事される方が中心ですが、仕事帰りにワイン1杯だけで立ち寄る男性客もいらっしゃいます」


シェフが世界で培った感性を生かした、ユニークなビストロ料理が絶品!


5.子供もOK!世界の美味を幡ヶ谷で味わえる人気店
『ウィル オ ウィスプ』


庶民的な街並みに忽然と現れる、天井を高くとった洒脱なオープンキッチン。

フランスやNYなど世界の人気店で修業を積んだ店主が、カテゴリーにとらわれない料理で、幡ヶ谷に新たなカルチャーをもたらしている。


開放感にあふれるビストロの自由闊達なセンスに身を委ねる

チェーン店がひしめく駅前の商店街で、シースルーの佇まいが異彩を放つ。店名の“ウィル オ ウィスプ”とは、“未来をともす松明”という意味


幡ヶ谷駅を降りてすぐの立地に、『ウィル オ ウィスプ』がオープンして早2年。

カウンターを中心にテーブル席や立ち飲みスペースも用意される店内は、幅広い客層で連日賑わう。


ガラス窓から覗く店内はブルックリンのダイナーさながら


店に置いているワインのほとんどが自然派ワイン。

グラスワイン(1,200円〜)は赤、白、オレンジ、ロゼ、スパークリングと常時9種を用意する。



「レンズ豆とホタテのタルタル」(1,400円)は、ホタテに軽く火を入れているのもポイント


シェフの光安北斗さんは、パリの二ツ星『パッサージュ 53』やブルックリンの『バッターズビー』で研鑽を積んだキャリアの持ち主。

ビストロで定番のレンズ豆のサラダにホタテのタルタルを合わせたり、〆に鶏だしのフォーガーを出したりと、世界で培った感性を生かした料理が持ち味だ。

軽やかなアレンジを効かせつつも、「まずは素材ありき」と牛肉は佐賀の「白石牛」にこだわるなど、食材は徹底的に吟味。

斬新なビストロ料理を、豊富にそろう自然派ワインと楽しみたい。


フライドポテトが隠れた名物!


“ピーター・ルーガー”のポテトから着想を得たという「牛脂で揚げたフライドポテト」800円。

牛の旨みと香りが染み込んだポテトはやみつきになる美味しさ。




「白石牛のロースト ジュ=ド=ヴィアンド 苺ハラペーニョ」3,200円。

脂身が少なく、ジューシーな味わいが特徴の「白石牛」をローストした後、炭火で炙り香ばしさをプラス。




サッカーの指導者を目指して資格を取得後、語学留学で赴いたニュージーランドで料理に目覚め、渡仏したシェフの光安さん。

「うちは子供もOKなので、早い時間帯は家族連れも多いです。30〜40代がメインですが、70歳ぐらいの常連さんもいらっしゃいます」


夜パフェも人気!正統派フレンチが気軽に愉しめる、参宮橋の一軒


6.夜パフェも人気!参宮橋のガストロノミー
『roku』


どこかゆったりとした空気が流れる参宮橋にオープンして2年。

ジビエの名店出身のシェフと、パティシエの奥さまが営む店と聞けば、期待は高まるだろう。

そこでは、自由度の高い本格フレンチが楽しめる。


出自の確かな正統派フレンチを気さくなカウンターで堪能!

フランス料理店ながら、オープンキッチンの店内は、木の温もりが伝わり寛げる設えに。カトラリーには箸も添えられ、リラックスして味わえる


参宮橋駅の改札を出てすぐ右手、グレーの壁に木枠の扉が印象的なのが、ここ『roku』。広尾『レストラン マノワ』でシェフを務めた、笹川慎平さんによるカウンターフレンチである。

扉を開けてまず目に入るのは、奥さまの智香さんが手掛ける、旬の果実に彩られたケーキが並ぶショーケース。

そして、カウンター6席のみのレストランでいただくのは、アラカルトでも楽しめるフランス料理の数々。


アットホームな空間でいただく絶品ジビエに笑顔がこぼれる

「猪のロースト」2,800円。まずフライパンで周りを焼いた後、オーブンでじっくりと火を入れていく。猪のジュのソースを添えて


猪のローストなど真骨頂といえるクラシックなジビエ料理はもとより、そば粉のクレープといった笹川さんの地元・木曽の食材を用いた皿もチェックしたい。

遅い時間なら、ひとり飲みはもちろん、話題の“夜パフェ”も大歓迎。

自由に楽しんでほしいというシェフの心意気がうれしい一軒だ。


20時以降なら“夜パフェ”も!


山形『平農園』のさくらんぼをふんだんに使用した「季節のフルーツパフェ(S)」1,100円。

ハーブのゼリーや、シャンパンのエスプーマをあしらった大人の味わいだ。




智香さんが焼いたシュー生地に、フォアグラをたっぷりと詰めた「フォワグラのシュークリーム」880円。

仕上げにフォアグラを削るプレゼンも華やか。




「木曽のそば粉のクレープ」1,200円。

中には、糠に漬けたイワナとイワナのムースを忍ばせる。もっちりしたクレープ生地も美味。




シンプルながらスタイリッシュな外観は、夜になると一層際立つ。




長野県木祖村で育った笹川さんだけに、きのこ狩りや山菜摘みなど、自然との触れ合いが楽しみとか。最近始めた蕎麦打ちも趣味のひとつ。

「客層は30歳以上がメイン。中には週2回、顔を見せる常連さんも。“ミシュラン”に掲載後は、遠方からのカップルも増えました」とのこと。



暑くなってくると、夕方からさくっと近場で一杯飲めるのが最高の幸せ。

洒脱な雰囲気の中、バラエティに富んだ逸品たちと多彩なワインで乾杯したい。

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