※この記事は2020年08月19日にBLOGOSで公開されたものです

2020年、新型コロナウィルス感染拡大によって、全国の学校で休校措置が取られた影響で、夏休みが短縮されている。夏休みなどの長期休暇後に子どもの自殺が増えると言われているが、今年は、例年とは違った傾向が見えるかもしれない。家庭や学校といった居場所を奪う要因は増えるのか。子ども達にサインとなる言動が現れた時に寄り添うことができるのか。たとえ、自殺に至ることがなくても、生きづらさは増すかもしれない。

小学校の時のいじめで「死にたい」

友美(仮名、20歳)は、小学4年生の頃から「死にたい」と思っていた。理由は学校に居場所がなかったからだ。

「この頃、学校でいじめられていたんです」

死にたいと思っていた友美は実行に移そうとした。学校の2階で「ここから飛び降りたら死ねるかな?」と考えた。この頃のいじめは、給食当番だった友美がついだ料理を受け取らなかったり、触れたものに触れなかったり。「菌いじめ」のようだが、特にあだ名はなかったという。

「担任に言っても、『そんなわけないじゃん』と言い、他の子達に注意してくれませんでした」

5年生になっても別の子がいじめをしてきた。クラスで物がなくなった時があった。ある日、女の子3人が家に遊びにやってきた。その時、友美に内緒で物を隠して行った。学校で騒動になったあと、友美が自宅で見つけ、「うちにありました」と担任に言うと、「警察の取り調べ」のようなことをされたという。この時、最終的には、リビングで担任と祖母が友美を追い詰めた。担任は30代の男性で、様子を知るいとこからは「ひどい先生」と聞いており、それが現実のものになった。

「担任が机を叩いて、『お前が盗ったんだろう!』と言いました。最終的に、『私が盗りました』と言わざるをえない雰囲気だったので、認めました。翌日、教室でみんなの前で謝ったのを覚えています。しかし、今でも悪いと思っていません。だって、盗っていませんから」

中学の担任からは理不尽な指導

友美はこれ以後、学校へ行かなくなった。中学校も最初は通学していたが、1年の夏休み後は行けなくなった。この時の原因は担任にあるようだ。担任は50代の女性、音楽の専任教諭のようだ。

「私の髪質は天然パーマですが、学校で指導され、ずっとストレートパーマで伸ばしていました。ただ、毎日シャワーをしますから、しばらくするとパーマも薄まり、もとの髪質に戻るんです。それを見て担任から、『この髪はなんだ?縮毛矯正してこい』と言われ、そうしたんです。すると、同じ担任に今度は、『なんで(縮毛矯正)してきたのか?』と言われました。理不尽で仕方がないです」

担任の理不尽な言動は、友美が学校に行く気を失わせた。不適切な指導によって不登校になったり、自殺に至るケースも筆者は取材する。中には、裁判に発展する場合もある。しかし、こうして保護者が学校との交渉もせず、表に上がらないことも多いのだろう。

厳しい祖母と母。安心できない家族

一方、家庭内に居場所があったわけではない。小学校の頃は、自宅と学校の往復だ。仮に学校でいじめられていたとしても、家族が居場所になることもあるが、友美にとって家族は安心できる場ではなかった。友美の家族は、母と祖母の3人。父親はいない。

「お父さんがいない理由は教えてくれないんです。だから知らないままでいいかな?周囲から『なんでお父さんがいないの?』と聞かれた時は、さすがに知りたいとは思ったことがありましたが…」

家族が安心できない場になった理由は祖母のようだ。

「特に祖母が厳しかったんです。私のやることなすこと、全て否定するんです。『私が言っていることが正しい』と価値観を押し付けました。テレビも祖母が独占していたので、リビングに集まるのは食事の時だけです。料理も祖母が作ります。母か私が作る場合は、祖母は食べません。『味付けが嫌い』と言うんです」

祖母は、自己中心的な傾向があり、それが家族内の人間関係に影響していたのかもしれない。友美は、祖母に育てられた母からも襖に閉じ込められたことがあった。

「襖に閉じ込められたのは、保育園の時。買って欲しいものがあって、駄々をこねていた時のことです。ふとんで包まれ、上に乗られたりもしました。今思ったら、虐待ですよね。しつけじゃなくて。なんで、この家に生まれてきたんだろうと後悔しました。生まれてくる家を間違えたと思いました」

謝罪しないフリースクールの指導員

中学時代は不登校になったため、フリースクールに通うことになる。小中学生の十数人が通っていた。この頃、自暴自棄になっていた。Twitterも始めていた。そこでも、40代の女性指導員の言い方に傷ついた。

「指導員が私のTwitterを見て、夜中に外出していると勝手に思い、ありもしないことを言ってくるんです。そのため私が『外出してないです。母に聞いてください』と言ったんです。母親も指導員に『娘は寝ていましたから』と言ってくれました。その後、私が間違っていないことがわかったんですが、謝罪もありませんでした。『この人、死ねばいいのに』と思ったほどです」

友美はネガティブな感情や不安、不満をつぶやくために、Twitterで「病み垢」を作っている。

「助けを求めたんです。学校や家族がきちんと相手にしてくれないから。本当に、ギリギリの心情でした」

「死にたい」とつぶやいても反応なし

Twitterで、〈死にたい〉〈消えたい〉とつぶやいたことがある。

「Twitterでつぶやくのは慢性的に死にたいからですが、承認欲求もあります。反応がなかったんですが、『そんなものか』とも思いました。同時に、死にたいとも思いました。でも、つぶやくのはストレス発散の面もあります。そのため、少しは楽になります。自分だけが楽になればいいという気持ちもあります。あまりにも辛い時には、趣味垢(趣味用のアカウント)でつぶやいたりもします。やっぱり、反応はないです。趣味垢でつながっている人は見ているとは思いますが、(タイムラインで)ただ、流れてしまっているのでしょうね」

高校生になると、「生活が変わるよ?」と言われていたが、友美にとっては、そんな期待とは裏腹の高校生活だった。

「授業中はうるさいし、タバコを吸っている生徒もいました。臭いで具合が悪くなるほどです。先生も注意はしますが、生徒はタバコをやめません。そのため、毎回、生徒集会で説教の時間がありました。何度も言うので飽きました。集会ではなく、法律を守らない人だけに言って欲しいですね。このために、帰宅時間が遅れるんです。学校生活がいいと思ったことはありませんね」

そんな生活の中で、過量服薬(オーバードース、OD)をする。睡眠薬などを2シート飲んだ。ODではあるが、眠り続けるほどでもなかった。

「自傷行為としては幼い頃から、爪をはいだりしていました。いまだに直りません。小学校の頃は、壁を殴ったり、壁に額をぶつけていました。血が出たりすることはなかったので、母親や祖母にはバレませんでした」

求めた先にあったのは「パパ活」

高校卒業後も、SNSは手放せない。出会い系のアプリを使って、「パパ活」をしているという。パパ活といえば、性交渉なしで、食事の時間を提供する代わりに、お小遣いをもらったり、タクシー代をもらう行為をイメージする。19年の年末頃から「思いつき」で始めた。友美の場合、お金をもらわないことも多い。

「私の場合、性交渉をすることもあります。初体験もパパ活でした。交通費を出してもらい、3泊4日で行くこともあります。そんな時は『時間、作っておくね』と言ったりします。お小遣いをもらえないと損ですが、ご飯代、宿泊費は出してもらっていますから、希望を言ったことはないですね」

見ず知らずの人との出会いはそれほど警戒しない。それだけ、居場所は家族の中ではなく、パパ活の中にあるのだろう。しかし、Twitterでの出会いは求めてないようだ。

「Twitterではあまりいい人に会えないという噂もあるんで…」

Twitterを経由した事件も報道されているが、警察庁によると、SNSを起因とした事件で、最も多い手段はTwitterだ。座間事件や、行方不明だった大阪府の小学生が栃木県小山市で保護された誘拐事件は大きく報道された。

「TwitterでSOSを発するのは、学校や児童相談所が相手にしてくれないからじゃないですか。もし、私の学生時代に、家出をしたら、疑いはするけれど、誘ってきた相手のことを〝いい物件だな〟とは思います。それで吉と出るか凶と出るかは、出会う相手の選び方ですね。本当にギリギリなんですよ」

そう言いながら、取材が終わると、パパ活の相手に会うために、夜の街に消えた。