日本初の劇場クラスター「企画プロデュース」のタレント・有村昆が責任逃れ - 渡邉裕二
※この記事は2020年07月28日にBLOGOSで公開されたものです
お笑いタレントのはなわ(44)が新型コロナウイルスに感染したと思ったら、人気俳優の横浜流星(23)、さらに俳優の山崎裕太(39)までもが感染していたことが明らかになった。重症ではなかったことが不幸中の幸いだったが、はなわの場合は担当マネジャーが感染していたことから、濃厚接触者として検査を受けたところ感染が確認された。一方、横浜と山崎は、倦怠(けんたい)感を覚え、発熱を訴えたことから抗原検査を受けたことがキッカケとなった。
新型コロナ感染者は日を追うごとに増加しているが、その流れは明らかに芸能界にも及んできている。
「さすがに芸能界も夜の会食は自粛していると思いますが、撮影や稽古の現場は出演者に加え、関係者やスタッフの出入りが激しいですからね。正直、いくら自己対策をしたとしても感染の確率は高まります。少しでも体調が優れなかったら、現状は大事をとって出演を控える勇気も必要だと思います。しかし、現実では言いづらい。
しかも、出演者より関係者やスタッフの方が無理をしてしまう傾向があります。中止や延期のリスクを考えるとどうしても無理をしてしまうことは否めません。ただ、自分のところだけは大丈夫だと言った考えや油断が取り返しのつかない結果を招くことも心得ておかなければなりません」(プロダクション関係者)
新宿の小劇場で発生したクラスター
その「取り返しのつかない」ことになった最たるものが東京・新宿シアターモリエールでの〝舞台クラスター〟だった。6月30日から7月5日まで行われた舞台「THE★JINRO―イケメン人狼アイドルは誰だ!!ー」でのクラスターは演劇界を問わず、エンターテインメント業界全体に影を落とす結果となった。
「主催したライズコミュニケーションは、韓流俳優やアーティストのイベントを中心に手掛けるイベント会社です。今回の舞台公演は、日本人俳優の山本裕典(32)やお笑いコンビ〝はんにゃ〟の金田哲(34)、吉本坂46の榊原徹士(30)らに、韓流ダンスパフォーマンス集団のH5のHONEY(36)などイケメンの韓流俳優を加え、女性をターゲットにした〝ホスト舞台〟を繰り広げました」(舞台関係者)
当初は収容キャパが130人程度の東京・恵比寿のエコー劇場で開催を予定していたが、開催を目前に劇場側が提示したソーシャルディスタンスを「受け入れられない」とし、同会場をキャンセル。その後、186人が収容出来るシアターモリエールでの開催に移行した。
「劇場を移行した理由は、すでに販売していたチケットを払い戻ししたくなかったからでしょう。開催の1ヶ月前にモリエールに移行したようですからバタバタだったと思います。その結果、クラスター発生という最悪の事態を引き起こしてしまったのです」(前出の舞台関係者)
東京都内の小劇場で組織する「小劇場協議会」は、上演した劇場(シアターモリエール)が、協議会の定めた感染予防のガイドラインを守っていなかったと公式サイトで発表したが、劇場側は主催者に対して十分な感染予防対策をするように要請していたと主張している。
「主催者側が劇場の要請を無視したとまでは言わずとも、甘く見ていたことは明白です。そもそも主催者は出演者の体調には注意していたと言いますが、実際には体調の悪い出演者がいたにもかからず、舞台に出続けていたようですからね」(演劇記者)
シアターモリエールは小規模の劇場なので楽屋も少ない。その楽屋も8畳程度のもので、廊下や幕の裏に簡易的な控室を作ったとしても密は避けられない。いくら出演者がダブル(2つに分かれている)だったとしても20人以上の出演者、そこにスタッフや関係者が入り混じっていたら、何も起こらないと思うことの方がおかしいだろう。
しかも、開演中のおよそ2時間は、音が外部に漏れるとの理由から会場内を完全に締め切り「換気は実施しなかった」(関係者)と言うから、もはやコロナウイルスの温床になっていたことは明らかだ。
それだけではない。
「終演後は、劇場側からの指示を無視してグッズの販売をしたり、出待ちのファンに対して握手やハグをしていたとも言われています。一部のファンとは〝指チュー〟までしていたようですから、感染拡大は、ある意味で必然なことだったのです」(週刊誌の記者)
ちなみに〝指チュー〟というのは、人差し指越しにファンとキスをするサービスのこと。地下で活動するホスト・アイドルにとっては究極のファン・サービスだそうで「実際に〝指チュー〟の現場を見るとあまりの距離の近さに驚く人も多い」(前出の週刊誌記者)とか。
いずれにしても感染拡大が深刻化する中で、このような行為を黙認していた主催者の責任は重く、言い逃れ出来るものではない。
主演の山本以下、出演者、スタッフ、観客など少なくとも75人の感染者が出たが、その他の出演者やスタッフ、観客についても「濃厚接触者」に指定された。最終的にその人数は850人以上にも及ぶ最悪の結果となった。
この事態に歌舞伎俳優の尾上松緑(45)は自身のブログに、
「こんな奴等は劇場サイド、主催者、出演者、スタッフに至るまで、どいつもこいつも素人の集まりだ」「ふざけやがって。考え無しに目先の金に釣られて尻尾振りやがった罪は深い」
と怒りを書き込んでいた。
企画プロデュースの有村昆が責任逃れ
まさに、日本初のクラスターを巻き起こした舞台になったが、その責任から逃れようと必死になっている人物が、映画コメンテーターとして知られる〝アリコン〟こと有村昆(44)だ。実は、有村は、この舞台「THE★JINRO―イケメン人狼アイドルは誰だ!!ー」では「企画プロデュース」として名を連ねていた。つまり制作の実質的な「総責任者」とも言うべき立場だったのだ。
ところが、有村自らも感染していたことが発覚、さらに妻でフリーアナウンサーの丸岡いずみ(48)までも感染が確認され都内病院に入院することになると、いきなり「企画プロデュース」という肩書を「原案」に変えてしまった。
有村は初日と千秋楽の各夜の公演を観劇(チェック)、その際に楽屋で出演者にも会って激励したと言う。立場としては当然のことだったであろうが、当然、その時に出演者の体調についても見たり聞いたりして気づいていたはずである。
「有村は大手プロダクションのホリプロに所属しているのですが、どうやら事務所には内緒だったようで、クラスター発生後になってから慌てて報告したと言います。当初の『企画プロデュース』を『原案』に変えたのも、少しでも責任から逃れるための苦肉の策だったはずです。
しかし、メディアに登場している者として許されることではありません。そもそも主演に山本を起用したのも、会場の変更で動いたのも有村だと言われていますから、真っ先に謝罪や反省文なりを公表すべきでした。少なくとも公の場に出てきて説明すべきです。極端な言い方をしたら、もはやエンタメ業界にはいられないほどの責任があることを自覚してほしいですね。
それにしてもメディアもだらしない。大手プロに忖度しているのかもしれませんが、何も追及しないのも大きな問題です。いずれにしても今回のクラスターは明らかに有村の怠慢。メディア以上に世間の目は厳しいですよ」(芸能関係者)
一方で「原案」と肩書を変えたことにも批判の声が上がっている。
「そもそも、『人狼』と言うのは何十年も前からある人気ゲームです。そのゲームをモチーフに舞台化したので『企画プロデュース』だったのかもしれませんが、実際には人気ゲームをパクったイベントに過ぎないでしょ。それを『原案』としてしまったら、この『人狼』というゲーム自体が有村氏のものだと言っているようなものです。いくら責任逃れだとしても『原案』と言う表現を通してしまったら、今度は(ゲームの)パクリを容認したことになってしまう。それはそれで新たな大問題になると思いますけどね」(舞台の制作関係者)
25日には、東京・日比谷シアタークリエで上演中だった「SHOW-ISMS」で、出演者の1人が体調不良を訴えたことから、昼の公演が急きょ中止となった。同舞台には井上芳雄、新妻聖子、知念里奈、美弥るりかが出演していたが、これもシアターモールでのクラスターが大きな教訓になっていることは確かだ。
それにしても、舞台「THE★JINRO―イケメン人狼アイドルは誰だ!!ー」でのクラスターは明らかに〝人災〟だ。ホリプロも多くの舞台が中止、延期に追い込まれている。それだけに今回の有村の軽率な行動は事務所にとっても人騒がせなことに違いない。
しかし、所属タレントの起こした不祥事であることは疑いもない事実。当然、事務所としても対応をすべきだろう。それが社会を騒がした責任でもある。
今回の劇場クラスターを解明するためには、まず、そこからスタートしなくては議論にも何にもならない。それは誰もが分かっているはずなのだ。
ところで有村は、感染が発覚した直後の14日、火曜日のパーソナリティーを務めるbay fm「The BAY☆LINE」を休んだ。その際、同番組で月曜日のパーソナリティーを担当しているきゃんひとみ(60)が心配してLINEを送ったところ「しんどいですけど頑張ります」と返事が来たと言う。どうやら加害者でありながら実際には被害者意識の方が強いのかもしれない。反省以前の問題のようだ。