※この記事は2020年07月28日にBLOGOSで公開されたものです

アハハハハ、相変わらずの世の中だな。ふさぎこんでもしょうがないからさ、とりあえずカラ笑いだよ。よし、今回は「いい話題」だけ集めてみるか。

総額100億円の東京ドーム改修工事 コロナ対策も

まずは東京ドーム。総額100億円かけて大改修するって発表したな。俺もジャイアンツファンだからこれは楽しみだね。段階的な工事で2023年に完成、3年後ってことだな。聞けばメジャーリーグでは屋根が開閉式のタイプが主流で、東京ドームみたいな密閉式のドームってあまり支持されてないらしいな。でもさ、東京ドームは今のままでいいよ。

だってこの時代、気候変動で豪雨だ長梅雨だ大型台風だって、予測つかない天気ばかりになってるだろ。開閉式の屋根って「ウィ―――――――――――――――ン」って開けたり閉じたりするのにけっこうな時間がかかるよ。その作業をしている間にドバーッとゲリラ豪雨が降って来たら防げないよ。あっという間にグラウンドが大水に浸っちゃうよ(苦笑)。それに開閉式にして屋根が開いている時にとびきりの場外ホームランでも出たら、おとなりの後楽園ゆうえんち(東京ドームシティアトラクションズ)が危ないもんな(苦笑)。

この改修工事に向けて、早速というか、新型コロナウイルス対策も始めるって発表してたな。なんか細かいあれこれがあったよな、編集部? 

大型送風機で換気強化 新たな“ホームラン風”の都市伝説

編集部)東京ドームですが、まず今シーズンからの対策として、換気量を従来の1.5倍にして1時間で3.7回空気を入れ替えられるようにするそうです。コンコースには大型送風機を30台設置して換気も強化するという話です。

ほほう、換気の強化だな。あと巨人の攻撃の時に打球が飛びやすいよう、ホームからスタンドに向けて風を強くするって話はないの? アハハハハハ、よくそういう噂あったよな。巨人はドームでボールが飛びやすいよう、こっそり気圧を操作してるって。まあ、そんな器用なことができたら毎年優勝してるよ(笑)。

編)それから3密を避けるため、女子トイレを1.6倍増の313室に増設。洗面台も75台から220台と大幅に増やします。毎試合終了後に客席、階段の手すり、トイレなど約60人のスタッフが長時間かけて消毒作業を行うそうです。

そうそう、ジャイアンツは女性ファンも多いし、女性は何かとトイレの行列を作りやすいんだよな。男性用トイレもさ、巨人が攻撃している時はみんな試合を見たいから混まないんだよ。巨人の守りになるとみんなトイレ行くから混むんだよな(笑)。

仕方ないけど空いてるうちにトイレ行っておこうって、巨人が攻撃してる時にトイレに行くとさ、誰かがホームラン打ったりして、「ウワーッ」って大歓声がトイレまで聴こえてきたりするんだ。「しまった、ホームラン見逃した!」ってよくあるよな(笑)。

編)チケットもスマホの画面を使った「スマホチケット」や、「ピッ!」ってデータを読み取るタイプにして、駅の自動改札みたいなゲートを導入し、係員がチケットをもぎる形が廃止されるようです。

そうか、安全対策で接触を少しでも無くそうってことか。それはいいことだな。年間シートだと定期券のカードになってさ、「いいだろう、これドームの定期券なんだよ~」って、ちょっと見せびらかしたくなるんじゃないの(笑)。

編)改修工事の一番の目玉はバックスクリーンのメインビジョンで、現在の3.6倍という超大型に変更するそうです。

ほう~、そりゃあ、どデカいスクリーンになるな。大丈夫か、センターバックスクリーンにホームラン打ち込んでビジョンが割れちゃったりしないか? 相手チームが壊した時は弁償してもらうか。そしたら相手打線も「弁償はまずい」ってんで腰が引けちゃって、思い切り打てなくなったりしてな。バックスクリーンのおかげで巨人が強くなっちゃう(笑)。まあ、新しく進化する東京ドーム、野球ファンには楽しみだ。いい話だ。

そうそう、東京ドームと言えばさ、あの施工はゼネコンの竹中工務店が担当したんだよな。竹中工務店ってのは創業の歴史を辿ると江戸時代の初期になる。その創業者が織田信長の家臣で、あの森蘭丸と並ぶ小姓だったって話があるよ。信長は尾張名古屋だろ。つまり家臣の竹中も名古屋。中日ドラゴンズのお膝元だ。だから中日が東京ドームで試合する時には、竹中の祖先が地元中日を贔屓する風をそーっとドームに吹かせている・・・って噂もあるけどね(笑)。

尾畠春夫さんが豪雨被災地のボランティアに

続いてのいい話は、スーパーボランティアの尾畠春夫さん。あの尾畠さん、豪雨で浸水被害が出た大分で、片付けの手伝いに現れたってね。豪雨被害は大変だけど、尾畠さんが現れると「ああ、来てくれたんだ」って、ひと筋の光明が射すよね。

尾畠さんは大分在住で、当人は被害の大きい熊本に行きたかったらしいけど、今はコロナでボランティアも他県への移動が制限されてて県をまたげないから、同じ大分県内のボランティアに向かったという話だ。

泥かきしたり、ゴミ拾いしたりする尾畠さんという存在が、落ち込んでる人々を励まして、あきらめずに元の町に戻していこうっていう力をくれるんだと思う。尾畠さん自身も、「自分が手伝わせてもらうことで、少しでも被災地の人に前向きな気持ちを持ってもらえたら」って話してる。「ひとかき泥を運び出せば、ひとかき分だけ家の中がきれいになる」ってね。地道なことに意味があるという大事なことを、尾畠さんは発信してくれるよね。見事な80歳だよ。

世間を見渡すと、うんざりしたくなるような「金」の話が多いからさ。尾畠さんみたいに「金」のためでなく、無償でもって、心意気でもって、世のため人のために動く人がいるってことがうれしいよ。

まあでも、あんまり騒ぎ立てず、追いかけ回さず、尾畠さんって野生のアライグマみたいなもんだからさ、そっと自由にしておくのが一番だろうね。

藤井棋聖の活躍に救われている日本

そして、これぞいい話題と言えば将棋の藤井聡太くんだな。将棋界史上最年少17歳11か月で初のタイトルを獲得、藤井聡太棋聖となったよ。日本は今、藤井くんの活躍に救われてるところあるよな。

顔立ちもほんわかとしてて余計なことは言わない。むしろ無口。あの奥ゆかしい雰囲気がいいね。どうぞ私の将棋の腕だけを見てくださいってね。

棋聖戦では初めて着物姿を見せて男っぷりをあげてたよ。なにしろ初々しかったな。落語で言うと「お稲荷さんのお札配りみたい」っていうね。ほら、普段着物を着つけない若い子が急ごしらえの和装で、かき入れ時の神社でお守り売ったりとかのお手伝いしてるだろ。あんな感じ。

だけど藤井くんの場合は中身が本物だからね。着物のほうが藤井くんに「よくぞ着てくださいました、どうも有難うございますご主人様」ってんで、かしづいているようにも見えたよ。

藤井くんが着た羽織や袴は師匠である杉本八段が贈ったんだよね。そういう師弟の物語も含めて、日本じゅうの注目を集める若者が着物姿で大きなニュースを振りまいたわけだから、和服業者は大喜びだったんじゃないの? 藤井くんのように着物を着てみたいって思った若者もいたろうし、うちの子にああいう着物を着せたいって思った親もいるだろうよ。

将棋指す手をつくづく見たら やっぱり恋路も同じこと

それにしても、世間が見る将棋のイメージって随分とクリーンになったんじゃないかな。昭和の時代は将棋指しって「破天荒」とか「勝負師」っていうイメージ強かったよな。それに今よりも庶民に浸透していて、街角の風景に将棋があったよ。

よく見かけたのが詰将棋。縁日の路上とか、錦糸町の駅前なんかでよく見たよ。改札出て往来の道端に将棋盤が置いてあってさ、ちょっと覗くと駒も少なくて簡単に詰みそうな詰将棋の問題が置いてあるわけ。挑戦して詰むと賞品をくれるとかって話で「一手50円」とか書いてあってね。周りで見ている野次馬もいて、よし、ひとついいとこ見せてやろうって、通りかかった将棋好きがつい手を出しちゃうんだ。

で、いざやってみて五手で詰んだとするだろ。自分は五手打ったから「一手50円」で料金は250円だと思いきや、相手していた将棋屋が「あんたが一手、私が一手、お互い合わせて十手だから500円だよ」なんて余計にお金取られたりね。

あと、相手が一枚も二枚も上手だと、のらりくらりとかわして詰ませない。あと一手、あと一手と熱くなっちゃうと指し数が増えて大金を取られちゃうとか、よく出来てんだ。

昭和の時代によく見かけた路上の商いは、おおかたテキ屋か香具師(やし)の稼ぎだよ。あと路上でやってる小さな賭博は「伝助賭博」と言って、タバコの箱を3つ使って印のついたものがどれか当てさせたりとか、一見簡単そうに見えて実はカラクリがあって当たらない。一種の手品なの。俺のアニキがよく「引っかかった」って話してたっけ。当たるのは仕込みのサクラだけだって。

その中でも大道の詰将棋って、裏でプロが問題を作ってたりとか、よく出来てたんだ。将棋ってさ、「ああすれば勝てたかも・・・」っていう未練が尾を引くから、負けをあきらめきれず、ハマると熱くなるんだよな。

俺が若い頃よくおじゃました寄席の楽屋でもさ、師匠方がしょっちゅう賭け将棋をしてたよ。あの古今亭志ん生さんなんか大の将棋好きで強かったから、「待った倶楽部」なんて同好会を作って芸人同士で指してたよ。当時、講釈師ですごく将棋の強い人がいて、志ん生さんをやっつけて、帰りに志ん生さんがもらう寄席のワリ(出演料)をそのまま持ってっちゃったとかね(笑)。

そうそう、寄席でこんな文句を覚えたっけ。ええとね、

将棋指す手をつくづく見たら やっぱり恋路も同じこと 
この手で利くのか利かぬのか 
飛車(使者)を使って呼びィ出し 角(かく)の次第と駒々(こまごま)と 
語れど相手は歩(腑)に落ちず とんだ桂馬に跳ねられて 
無駄に使った金銀は 詰(つ)まらないではないかいな

将棋と恋路を引っ掛けた七五調の言葉あそびだ。これをぜひ、これから恋もするであろう藤井聡太くんに教えてあげたいね(笑)。

(取材構成:松田健次)