※この記事は2020年03月27日にBLOGOSで公開されたものです

新型コロナウイルスの影響でテレワークを導入する企業が増加。コワーキングスペースやカフェなどで仕事をしなければいけないビジネスマンにとって、死活問題となるのがパソコンの電源確保とWi-Fiです。このコラムでは、常日頃からテレワークで仕事をしている現役放送作家が実際に利用している街のコンセントスポットをご紹介しています。

はじめまして! 放送作家の松本建一です! バラエティ番組やスポーツ番組を中心に活動しています。近頃はハートウォーミングなドキュメンタリーに傾倒していて、頑張るお父さん系に弱い30歳です。

この仕事をしていると「何をやっている人なの?」「ディレクターとは何が違うの?」と、よく聞かれます。僕は10年ほど放送作家をしていますが、この業界以外で放送作家の仕事を正確に把握している人に一度も出会ったことがありません。

僕も放送作家になる前は、この仕事のことをふんわりとしか知りませんでした。おそらく実家の両親も、息子が何でお金を稼いでいるのか、ピンと来ていないと思います。

一説によると、現役の放送作家として現場に出ている人数は、数百人くらいしかいないそうです。多分誰も数えていないですし、今後誰かが数えることもないと思いますが、ザックリ言うとそれくらい。ちなみにプロ野球選手が約900人、落語家が約800人と聞いたことがあるので、放送作家はかなりマニアックな職業だと言えます。

そんな謎めいた職業ですが、長い間放送作家として働くと、なぜか詳しくなるものがあります。それは、コンセントの位置。唐突に出てきたコンセントという言葉ですが、もちろん電力を得るためのコンセントです。

東京で活動している僕だと、テレビ局、ラジオ局、制作会社周辺のコンセント事情は常にチェックしています。どの場所の、どの席にどれくらいコンセントがあるのか、ほぼ把握しています。これは僕だけではありません。放送作家同士が喫茶店で打ち合わせをする時は「◯◯って店はコンセントが3席しかないもんね」「◯◯ならこの時間、コンセント席は結構空いてる」などの会話が当たり前に行われます。

では、なぜそんなにコンセントに詳しいのか? 理由をご説明します。

放送作家がコンセントに詳しくなるワケ

放送作家はテレビ局、ラジオ局、制作会社に所属して会社員として勤務することはほとんどありません。そのため番組に関わっていても、使えるデスクが用意されている状況はほとんどないのです。その結果、会議の時間に合わせて、指定された会議室に行き、終わったら出ていくということを1日に何度も繰り返します。多い日は朝から晩まで10件近い会議に出席することも珍しくありません。会議の数だけ、会議室を移動していくことになります。

たとえば、僕のある日のスケジュールを見てみると…
10時~11時:赤坂のテレビ局で打ち合わせ
13時~15時:新橋の制作会社①で打ち合わせ
16時~18時:新橋の制作会社②で打ち合わせ
20時~22時:六本木の制作会社で打ち合わせ
23時    :帰宅

この日は4つの打ち合わせ。会議と会議の場所が近いこともありますが、基本的には移動を繰り返します。余談ですが交通費がかさみます。会議が延びてタクシーを利用するとなおさらです。都市伝説的に語られている話ですが、ある人気放送作家は1年間に2000回以上タクシーを利用していたといいます。かなりのレアケースですが、それほど放送作家は移動を繰り返しています。

会議に参加してばかりという印象を受けますが、放送作家は会議以外にも仕事があります。企画書を書いたり、台本を作ったり、資料を作ったりと、仕事は多岐にわたります。そうした仕事を行うのはすべてパソコン。では、その仕事をいつ行うのかというと、会議と会議の合間になります。

先ほどのスケジュールで考えると…
10時~11時:赤坂のテレビ局で打ち合わせ (空き時間にパソコン作業)
13時~15時:新橋の制作会社①で打ち合わせ(空き時間にパソコン作業)
16時~18時:新橋の制作会社②で打ち合わせ(空き時間にパソコン作業)
20時~22時:六本木の制作会社で打ち合わせ
23時    :帰宅
ということになります。

会議の合間に仕事を進めないと、すべてのパソコン作業を帰宅後に自宅で行うハメになります。仕事を自宅に持ち帰ると睡眠時間が減り、翌日も眠い目をこすって仕事をすることに。その結果、また夜中にパソコン作業の悪循環。繰り返すうちに心身ともにボロボロになるため大変辛いのです。

このような生活を続ける放送作家にとって、絶対に避けたいのがパソコンのバッテリーが切れること。電気が無くなると作業はストップ。空き時間に何もできなくなります。不運にも原稿や資料を提出する締め切りが迫る状況では致命的なことになりかねません。

危機的状況を避けるためにも、どこにコンセントがあるのかを絶対に把握しておかなければならないのです。こうして放送作家はコンセントにとても詳しくなるというわけです。

一方、テレビディレクターの主な仕事は撮影と編集ですが、撮影中にパソコンを使う作業はありません。映像の編集には膨大な時間がかかるため、身体を数日空けて行うことが多いのです。会議と会議の間にしっかり作業を行うのは、放送作家ならではかもしれませんね。

テレワークで大活躍! オススメのコンセントスポットベスト3

ここまで放送作家の仕事を中心に書きましたが、コンセントの情報で助かるのは世のビジネスマンも同じ。そこで、ここからは僕が活用しているオススメのコンセントスポットを紹介します。新型コロナウイルスの影響でテレワークを推進する企業も増えていると聞きます。ぜひ参考にしてください。

オススメ① すかいらーくグループのファミレス

すかいらーくといえば、様々な外食チェーンを全国に展開している大企業。グループの中にはジョナサン、ガストという有名ファミレスが含まれていますが、この2店はコンセントがとても充実しています。初めて行く土地でも高い確率でコンセントの席を確保することができるでしょう。快適な無料Wi-Fiも備わっているため、動画も見放題、ダウンロードもし放題。本当にありがたいです。

中でも、ジョナサン麻布十番店はすごいです。なんとこの店は、全席でコンセントが使えます。閉店しているのは朝5時から6時の1時間だけ。ほぼ24時間営業のため、店が大混雑していない限り、絶対にコンセント席に座ることができる最強スペック店舗。実際この店では放送作家によく会います。

ジョナサンとガストの魅力はそれだけではありません。店舗は限られますが、イチオシなのが1人用ボックス席。1人掛けの座席の左右にパーテーションが取り付けられていて、半個室状態なのです。ここなら周りの様子が気にならず集中して作業をすることができます。店によっては、荷物を置くための台やフックも設置されているため、テーブルが狭くなることもありません。心配りが行き届いています。

調べてみると、すかいらーくグループは「1人席の拡大」「Wi-Fi整備・コンセント設置」をマーケティング上の重要な施策として打ち出していました。これによりビジネスマンの利用が増加。ガスト新橋店では1人用ボックス席を設置したところ、ティータイムの売り上げが2割伸びたといいます。

店舗により客層が違うため、すべての店舗に1人用ボックス席を設置するのは難しいですが、職場近くのお店をチェックしてみては!

オススメ② じっくり作業に最適! ルノアール

東京・神奈川を中心に展開する喫茶室ルノアール。このお店もコンセントが充実していて、困った時はルノアールに行けば充電は何とかなるケースが多いです。

料金は少し高めに設定されていますが、それを補って余りあるほどのメリットが充実。ルノアールには快適な空間を確保するために1坪あたり1.5席という基本ルールがあります(※都心部の狭小店舗は除く)。広いだけでも嬉しいのにも関わらず、イス自体もフカフカでありながら適度な硬さもあるという絶妙な座り心地です。

余談ですが、このルールができた経緯が秀逸なのです。昔、ある新店舗をオープンすることになったのですが、内装にお金をかけ過ぎて椅子やテーブルを予定通り買い揃えられなくなってしまったのだとか。仕方がないので少ない椅子とテーブルでゆったりとした配置にしたところ評判になり、気がつけばルールとして定着したといいます。

他にも、ホスピタリティ溢れる特徴があります。それは仮眠をしても起こされないこと。他の喫茶店では疲れて寝ていると起こされてしまうパターンもありますが、起こされないというのはありがたいですよね。

また、注文したドリンクを飲み終わった後に、温かいお茶や冷たいお水の無料提供もあります。その時必ずといっていいほど「ごゆっくりお過ごし下さい」と言われます。コーヒー1杯しか頼んでないのに…。とはいえ長居しているうちに、また何か注文しちゃうのはよくある話なのですが。

このような特徴のおかげで、長時間の作業をする時にはピッタリ。お客さんの年齢層も比較的高めなので、隣でワーワーと騒ぐ人に出会うこともほとんどありません。

オススメ③ 晩酌しながら仕事! 鳥貴族

大阪・東京・名古屋を中心に展開している焼鳥チェーン鳥貴族。知らない方もいらっしゃると思いますが、鳥貴族にはコンセントが設置されている席がたくさんあります。会議の合間には難しいかもしれませんが、美味しい焼鳥とお酒を楽しみながらパソコンで仕事ができるとあって、鳥貴族での仕事をルーティンにしている放送作家も増えています。

店舗は大変限られていますが、鳥貴族にも1人用ボックス席があります。焼鳥は糖質も少なくて太りにくいため、なおさら夜に仕事をするにはピッタリではないでしょうか。

以上、テレワークにも役立つ放送作家のコンセント事情をご紹介しました。日々情報を収集し、充電切れとは無縁の日々を過ごしたいものですね。

松本建一
放送作家/ネットテレビ局『プラステレビ』運営
担当番組/「それって!?実際どうなの課」「ポケモンの家、あつまる?」「全国高校サッカー選手権」など。