トイレットペーパーは省スペース化を目指せ - 赤木智弘

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※この記事は2020年03月23日にBLOGOSで公開されたものです

みなさんの家には、トイレットペーパーは残っているだろうか?

新型コロナウイルスの騒ぎで品薄になって久しいこの商品。

僕は幸いにも、新型コロナ騒ぎが始まりかけたころ、数日前に買っておいたのを忘れて、トイレットペーパーも間違って買い足してしまい、その在庫がまだ残っている。1人暮らしなので、消費もさほど早くはない。

とはいえ、トイレットペーパーも12ロールを割っている。普段であれば、そろそろ新しく買い足したいところだが、ちゃんと朝からドラッグストアの前に並ばないと、買いづらい状況が続いている。

改めて確認するが、決して日本の製紙産業の能力不足により、このような状況が起きているわけではない。

日本家庭紙工業会は「トイレットペーパー、ティシューペーパーの供給⼒、在庫は⼗分にあります」という声明を出し、買い占めなどをしないように求めている。

実際、少し前に郊外のイオンが、フロアに大量のトイレットペーパーを並べて販売しているという話題があった。

しかし、都心ではなかなか手に入らないのはなぜだろうか?

それは「商品としてトイレットペーパーが大きすぎるから」ではないかと、僕は考えている。

トイレットペーパーが大きすぎるから、こうした状況においては十分な数を店舗に陳列できないのではないのだろうか。

都心のドラッグストアやスーパーは店舗が狭い店が多く、他の商品の陳列との兼ね合いから、トイレットペーパーなどが売れているとしても、一度にたくさん陳列することができない。

当然、街中の店舗には深夜から明け方にかけてトラックで配送されているのだが、1台のトラックに積み込むことのできるトイレットペーパーの数には限りがあるし、トイレットペーパーだけを運ぶわけにも行かない。

仮にトイレットペーパーばかりを運んだところで、都心の店舗には倉庫を持たない店も多く、店舗に陳列できる量しか在庫を持つことができない。

普段であれば、1つの店舗の在庫は少なくても、街中にたくさんドラッグストアやスーパーなどがあることで、街全体として品不足を感じることはない。

しかし、朝から多くの人が買い求めると、在庫の少ない都心の店では途端に売り切れてしまい、ますます品薄感が強くなってしまう。

その結果、最初は静観していた人たちも、トイレットペーパーの確保に並ばざるを得なくなってしまうのである。

「買い占めをするな」とか「転売をするな」ということはもちろんなのだが、それよりはトイレットペーパーの省スペース化を推し進める方が重要ではないかと、僕は考えている。

実は現在でも「省スペース化したトイレットペーパー」という製品は販売されている。それは「コアレス」と呼ばれる、トイレットペーパーを最後まで使ったときに残る「芯」が存在しないトイレットペーパーである。

芯の部分までをトイレットペーパーにしたり、強く巻くことで、普通のトイレットペーパーと同じようなサイズで、2倍や3倍といった紙の量を実現している。

個人としては、既存のトイレットペーパーと同じスペースで、2倍3倍のトイレットペーパーを保管できるし、流通にとっても今までと同じようなスペースで2倍3倍の商品を輸送、陳列できるのだから、便利な製品である。

ただし、デメリットも存在している。

強く巻いているために紙質が若干硬めなものが多いこと。そして、芯の部分までトイレットペーパーになっているものは、ロールの中央近くの紙が芯と同じように固められているため、最後まで使い切るのが難しいという部分だ。

実は、僕も数年前までコアレスのトイレットペーパーを愛用していた。柔らかいトイレットペーパーじゃなければ嫌というわけではなかったし、特にエコロジーを意識していたわけではないので、最後の方の硬い部分は軽くほぐしてトイレに流していた。

だが、僕が使わなくなった最大の理由は「地元に取扱店がほとんどない」という理由である。

近くの雑貨屋には置いてあったが、それ以外のスーパーやドラッグストアには普通の芯ありのものしか置いていない。

理由は憶測でしかないが、紙量が多い分だけ、値段が高いのは当然である。しかし、普通のトイレットペーパーと並べたときに、どうしても割高感が出てしまうことから、お店では売りにくいのではないかと考えられる。

限られた店でしか販売されてないために、選択肢がなかったり、買い物のついで買いができないことから、僕はいつの間にか普通のトイレットペーパーを買う生活に戻ってしまっていた。

しかし、今回のように買い占めの問題が発生し、トイレットペーパーのサイズの問題が浮かんでくると、やはりコアレスの省スペース性はとても重要であると気づかされた。

同じスペースで2倍3倍の在庫を置けることは、都心の倉庫を持たない小さな店舗にとってこそ、極めて大きなメリットなのである。

多くの人が忘れていると思うが、かつて「洗剤」は、とても大きな箱に入って販売されていた。

1回に使う洗剤の量は、今のスプーン一杯ではなく、紙コップで計って2杯、3杯という量であった。

しかし、オイルショックなどにより、省資源、省エネルギー社会への転換や、無リン化などの環境問題への対応が進んだ結果、洗剤は小型化し、今のサイズにまで小さくなったのである。

今回の新型コロナの一件は、トイレットペーパーの小型化の必要性を痛感させられる一件であったと、僕は考えている。

大手の製紙メーカーが本格的にコアレスなり、もしくは他の方法でトイレットペーパーの高品質化と省スペース化を推し進めれば、今のような1パック12ロールではなく、6ロールや4ロールが当たり前の標準となることも不可能ではないと考えている。

新型コロナ騒ぎで失ったものは決して少なくないが、それが少しでも今後の社会を良くすることにつながればいいと考えている。

*1:日本家庭紙工業会からのお知らせ(第2報)「トイレットペーパー、ティシューペーパーの供給力、在庫は十分にあります」(日本家庭紙工業会)https://www.jpa.gr.jp/file/release/20200302014901-1.pdf