お笑いだけじゃない!放送作家界でも台頭する第7世代のココがすごい - 放送作家の徹夜は2日まで

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※この記事は2020年03月20日にBLOGOSで公開されたものです

ビジネスマンの悩みのタネの1つが20代の部下とのコミュニケーション。幼い頃からインターネット・SNSに触れて育った彼らの思考は、我々の予想の斜め上のところにあります。今回のコラムでは、放送作家の世界で台頭する20代=第7世代を通じて、現代の若者の思考を分析しています。

はじめまして、放送作家の深田憲作です。今回、初めてコラムを書かせていただきました。コラムを書くこと自体が初めてです。

放送作家である僕に求められているのは、放送作家から見たテレビ界の現状、放送作家から見た昨今のテレビ界の変化だと思うのですが、オファーをいただいて真っ先に思ったのは「何を書いていいやらサッパリ分かりませ~ん」(僕のイメージでは織田裕二の言い方)でした。

ただ、いい機会だとも思い、最近の僕がテレビや放送作家に対して感じたことを考えたところ、1つ浮かびました。それは…「20代の放送作家が面白い」ということ。

現在36歳の僕の立ち位置は中堅放送作家。自分ではまだ若手という意識が強いのですが、20代の放送作家と仕事をしているとジェネレーションギャップを感じるようになってきました。

「歴史は繰り返す」と言いますが、僕にも後輩が出来たら「最近の若い奴ときたら~」と言ってしまうベタな先輩になるかと思っていました。しかし実際は逆で、今の20代の放送作家に感心させられることが多々あるのです。今回はそんな20代の放送作家に対して感じたことを書いていきます。

伝説の番組『電波少年』の熱狂を生んだ20代の放送作家たち

具体的な話の前に、現在のテレビ界の放送作家の世代分けについて説明します。あくまでバラエティの放送作家に限った世代分けです。

最近よく「お笑い第7世代」という言葉が使われていますが、現在のテレビ界で活躍するバラエティを担当する放送作家は、20代中盤~50代後半の4つの世代・層に分かれていると僕は認識しています。

まず1番上の層(「第1層」と呼ぶことにします)に位置するのが現在50代の世代。一部の方の名前を挙げさせていただくと、石原健次さん、伊藤正宏さん、桜井慎一さん、そーたにさん、高須光聖さん、都築浩さん、中野俊成さん、樋口卓治さん(※50音順)といった面々。

この他にもまだたくさんいらっしゃいますが、今の地上波のバラエティ番組は、ほとんどといっていいほど、この世代の方がチーフ作家を務めています。番組のエンディングに流れるエンドロールを見ると、この中の誰かの名前を目にする機会が多いです。

この世代こそがテレビの歴史において最も多くの功績を残してきた「放送作家黄金世代」と言えるのではないでしょうか。この世代は20代後半~30代前半の頃から数々の番組でチーフ作家を務め、およそ30年にわたりテレビの最前線で活躍されています。

例えば、ウィキペディアで『電波少年』を担当していた放送作家の名前を確認すると、映画『おくりびと』の脚本やくまモンの生みの親として知られる小山薫堂さんがチーフ作家だったことが分かります。

『電波少年』が始まった1992年の時点で小山さんは28歳。この歳で番組のチーフ作家を務めるのは、現在の地上波テレビでは考えられないことです。

ちなみに、年齢でいうと鈴木おさむさんは現在47歳。放送作家としてのキャリアや格を考えると、僕の中では第1層の世代に属しているという認識です。

そして、その下に位置する第2層が現在40代の世代。一部名前を挙げさせていただくと、安部裕之さん、大井洋一さん、興津豪乃さん、オークラさん、北本かつらさん、酒井健作さん、竹村武司さん、なかじまはじめさん、桝本壮志さん、樅野太紀さん、矢野了平さん(※50音順)といった面々。

僕がお仕事させてもらっている人の名前を挙げましたが、この世代で活躍する放送作家は挙げればキリがないほど。まだまだたくさんいます。

そして、その下に位置する第3層が現在30代の世代。(ここからは個人名を挙げるのは省きます)

僕もこの世代の放送作家の1人ですが、感覚としてはまだ若手放送作家だと認識している世代です。冒頭にも書いたように、正確には中堅世代。しかし、どの番組でもエンドロールの名前の並び順では下から数えた方が早く、僕は下っ端という意識が強いです。

そして、その下に位置する第4層が現在20代の世代。今回、僕が書きたいと思ったのがこの世代の放送作家についてです。

最近、少しずつ20代の放送作家と知り合うことも増えて話をさせてもらう機会も多くなりました。感心したり、「面白いな」と思うことが多くあります。なぜなら放送作家としての生き方や感覚が30代以上の放送作家とは全然違うからです。

今から書くことはあくまで僕の個人的な感想ですが、僕が20代の放送作家に感じたことを3点挙げさせていただきます。

物事をナナメに捉えられることに怯えがない

メディアの多様化によって放送作家の仕事の幅も広がりました。YouTube 、AbemaTV、広告、企業のコンサルタント、ゲーム・グッズ開発などなど、テレビを主戦場にしながら、テレビ以外の仕事をしている放送作家は数多くいます。

このようにメディアが多様化した時代にテレビ業界へ足を踏み入れた20代の放送作家には、テレビ以外の仕事に対するフットワークの軽さというか、異なるジャンルの仕事にも果敢に切り込んでいく強さを感じます。いや、ひょっとしたらテレビ以外の仕事を異なるジャンルだと思っていないのかもしれません。

20代にして雑誌でコラムを連載、YouTube・ラジオへの出演、起業などなど。

並べてみると「え? 昔から放送作家って色んなことやっているじゃん」と思う方もいるかと思いますが、10年ほど前だとテレビ以外の仕事に手を出せるのは、ある程度実績を残した放送作家だけだった気がします。少なくとも僕はそういう認識でした。

まだそれほど実績を積んでいないうちに放送作家がテレビ以外の仕事をやるのは、他の放送作家やディレクターの目が気になって出来ない。これが今の30代以上の放送作家が持つ感覚だと思います。「お前ごときが何コラム書いてんだよ」「どこ目指してんの?」「まずはテレビの仕事を頑張ってやれよ」

このような他者の心の声に怯えていた気がします。放送作家という人種は物事をナナメに見る人たち。そのため他人の行動もナナメに見がち(な気がします)。だからこそ、放送作家は常に他者からのナナメ目線に怯えて生きているような気がするのです。

だから、30代後半に差しかかった今でも僕はテレビ以外のお仕事のオファーが来ると一瞬躊躇します。このコラムもかなり躊躇しました(笑)「調子に乗っていると思われないかな?」「影で嫌なこと言われないかな?」と。

しかし、20代の放送作家にはこうした感覚がないような気がします。少なくとも僕には、彼らがナナメ目線に怯えているようには見えません。すごく自由に仕事を選択しているように見えます。(20代の放送作家の方、「そんなことない!」って思っていたらすみません)

セルフブランディングが上手

今の20代は学生時代からスマホやSNSと接してきていることが、仕事に大きな影響を及ぼしていると思います。SNSが台頭し始めた頃、多くの放送作家は苦手意識を持っていたはずです。

先ほどのナナメ目線に怯えていることにも関係していますが、放送作家は自分をアピールすることが苦手な人が多く、SNSに馴染むのに時間がかかった人が多いのではないでしょうか。

その点、学生時代からSNSを使いこなしてきた20代は、自らの考えを発信することに僕らのような照れがないのだと思います。自分がどんなキャラクターで、どんな仕事をして、何を考えているのかを上手に発信している印象があります。

僕が知っているだけでも、Twitterのフォロワーが何千人という20代の放送作家は何人もいます。一方、20代の放送作家よりもたくさんテレビ番組を担当している30代以上の放送作家で、フォロワー数が200~300人という人も珍しくありません。

もちろん、放送作家はフォロワー数にこだわってTwitterをしているわけではありませんが、20代の放送作家には発信する力・セルフブランディングの上手さがあることは確かだと思います。

また発信とは少し違いますが、僕が驚いたことの1つが今の20代の放送作家は、会ったことがない人にもTwitterでDMを送れること。僕も面識のない20代の放送作家から何度かDMを貰ったことがあります。

自分に置き換えた時、僕が40代の面識がない先輩にDMを送れるかというと、怖くてなかなか送れません。僕の知っている20代の放送作家は、TwitterのDMでアポを取ってバンバン仕事に繋げています。素直にすごいなと思うと同時に、見習うべき姿勢だなと思いました。

デジタル機器を使いこなしまくり

仕事のスキルでは、企画書の上手さにも感心させられます。放送作家はパソコンのワードさえ使えれば、仕事で困ることはほとんどありません。そのためパワーポイントを使えないアナログ人間は多いです。しかし、20代の放送作家はパワーポイントが使えるのは当たり前。

イラストレーターというソフトを使って、いい感じのイラストを作成し、華やかな企画書を完成させます。文書だけではなく、動画編集が出来る人も多いです。芸能人のYouTubeチャンネルで、若手放送作家が編集していることもあると聞きます。

これまでテレビの世界では、放送作家が編集にアイデアを出すことがあっても、編集作業をすることはありませんでした。放送作家の仕事の領域も変わって、5年後には編集をするのが当たり前になる可能性も大いにあると思います。

なぜ20代の放送作家を褒めるのか自分でもよく分かりませんが、素直に思っていることを書いてみました。上から目線なわけではありませんが、彼らの存在が今後のテレビ界をどう変えていくのか楽しみです。同時に、置いていかれないようにしなければいけないという危機感もあります。

深田憲作
放送作家/『日本放送作家名鑑』管理人
担当番組/シルシルミシル/めちゃイケ/ガキの使い笑ってはいけないシリーズ/青春高校3年C組/GET SPORTS/得する人損する人/激レアさんを連れてきた/新しい波24/くりぃむナントカ/カリギュラ
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・日本放送作家名鑑