京都の老舗喫茶店「前田珈琲」に現代アートを 地元民やアーティスト集う新たな形を模索する美術家・金氏徹平さんの挑戦 - BLOGOS編集部
※この記事は2020年02月26日にBLOGOSで公開されたものです
現代美術作品シリーズ「tower」などで、国際的に活躍する美術・彫刻家の金氏徹平さんが京都の老舗喫茶店「前田珈琲」の店内に巨大な現代アートを制作する。
金氏さんは前田珈琲・代表取締役の前田剛さんや建築家の家成俊勝さんらとともに現在、クラウドファンディングで資金を募っている。20日、東京都千代田区のイベントスペースで開かれたトークセッションでは、「なぜ、喫茶店のなかに現代アートを制作しようと思ったのか?」などをテーマに語り合った。
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現代アートを京都の有形文化財の中に制作
金氏さんの代表作であるtowerシリーズは穴から煙や液体などさまざまなものが溢れ出す箱状の建造物を表現したものだ。
2001年に金氏さんがイギリス留学中に部屋に引きこもって作成したのが、“第一形態”であるドローイング作品。テレビで流れる米同時多発テロの影響などを受けたという。のちに、芥川賞を受賞した村田沙耶香の小説『コンビニ人間』の表紙にも採用された。
その後、金氏さんはコラージュ作品やアニメーションなどさまざまな形でtowerを表現し、日本のみならず世界で披露。17年には家成さんと協働で、演劇の舞台上でtowerの実物化を行なった。
そのtowerシリーズ新作を設置するのが京都市中京区室町にある京都芸術センター1階の前田珈琲・明倫店だ。同センターは廃校になった小学校の校舎を改修し、京都市や芸術家らが連携し、芸術振興を目指して00年4月に開設された。センターの南館は有形文化財として登録されている。
前田さんは今回、店内に作品を制作しようと考えたきっかけを「明倫店20周年を機になにかできないかと考えた」と話す。
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「歴史のプレッシャーを感じていた」
トークセッションで家成さんは「20年、地元の人や芸術家たちに愛されてきたこの店を、『自由に変えていいよ』と言われた時、歴史のプレッシャーを感じていた」と明かした。
打ち合わせの段階では前田さんが「『前田珈琲』という名前すら変えてもいい」と発言したこともあったという。家成さんは「新旧の芸術的文化が混ざり合う空間を生んでいけたら」と意気込んだ。
金氏さんは、現在、アイディアを出し合いながら制作を進めていると話し、喫茶店のキッチン部分に横倒しのtowerが設置されるイメージで制作しているという。穴の部分からはエスプレッソマシーンの煙や珈琲が出るなどさまざまな案が出されている。
金氏さんは「照明や音楽も大事。同じ空間でさまざまな人や要素が集まる場所にしたいというのが大きいイメージです。いかに喫茶店の機能とは別の機能を、自然にいれ込めるか」と語った。また、金氏さんらは「京都にある8つの美術系大学の学生が交流できる場所がいま、ほとんどない。日常的に交流できて刺激を受けられる店にしたい」と力を込めた。
クラウドファンディングは4月24日まで。