櫻井よしこ氏「韓国がなくなるということを前提に外交を」 - BLOGOS編集部

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※この記事は2019年02月02日にBLOGOSで公開されたものです

ニュースキャスターで政治ジャーナリストの櫻井よしこ氏が1月16日、都内で行われた内外ニュース主催の講演会で、朝鮮半島やアメリカ、中国、ロシアをめぐる外交や防衛態勢について解説した。南北の融和ムードが続く朝鮮半島情勢については「韓国がなくなることを前提に外交を考えるべき」としたうえで、「朝鮮半島が全部北朝鮮の勢力に席巻されるかもしれず、その後ろに中国がつくかもしれない」と持論を展開した。

さらに、「一党独裁体制、ファシストの国に直面しなければならないことを認識すれば、もう少し準備を整えようという気になるのではないか」と日本の防衛態勢を確立する重要性を指摘し、「朝鮮半島の有事に備えるためにも、1日でも早く憲法改正しなければならない」と改憲を改めて訴えた。

朝鮮半島情勢に言及した櫻井氏は、北朝鮮との融和政策を進める韓国の文在寅大統領の思想は北朝鮮の影響を受けていると指摘。韓国大法院(最高裁)が新日鉄住金に対し、日本での労働を強制されたと主張した韓国人男性への損害賠償を命じた、いわゆる「徴用工問題」を引き合いに出し、韓国の司法へ親北朝鮮勢力が浸透しているとした。

徴用工判決は親北判事増えた韓国の司法事情が影響

櫻井:韓国で現在起きている事は尋常ではないことで、韓国がなくなるということを前提に外交をしなければならない。文大統領は弁護士出身で、北朝鮮・金日成の左の思想を信じていると言われています。

選挙の公約は「積弊の除去」。「積む」に「弊害」で積弊。それを無くしていくというのが公約でした。この弊害というのは、日本と関係する全てのことだとされており、「北朝鮮との間に連邦政府を」とも語っています。

前大統領の朴槿恵氏は32年間の刑が確定し獄中にいます。彼女がどのように弾劾され、裁判にかけられたか。彼女は今66歳で、32年間だと98歳まで獄中にあるという大変過酷な刑を科せられました。銀行口座など様々なことを調べると、朴さんが、1円足りとも不正なお金を受け取っていないことがわかっているんですが、200億ウォンの罰金を科せられました。約20億円です。

こうした無謀な裁判が行われているのはなぜか。文さん、さらに前の廬武鉉氏など左派の大統領が作った司法制度が問題なのです。文さんは裁判官に親北朝鮮、反日、反韓国の人など、全て左の方々を起用しました。もちろん、積弊の除去が公約ですから、日本の影響を受けた人、日本的なもの、日本の影響を受けた韓国の主流派の韓国人もダメということです。第二次世界大戦以降の日本から解放された韓国の歴史そのものを否定するわけです。

今の韓国の最高裁は、左翼判事が多数を占めています。この体制が整ってから、朴さんの裁判が急激にスピードアップし、有罪となったわけです。

徴用工問題でもとんでもない判決を下しました。一番の問題点は「日本の朝鮮統治そのものが違法だった」としている点です。統治は、朝鮮の素晴らしい社会、倫理といったものを全て踏みにじるもので、合法と認めることはできないというのです。

日韓請求権協定で徴用した人々や募集に応じた労働者への賠償を終えているのですが、「日本人が行ったことは、朝鮮半島の公序良俗を侵し、極めて非人道的で国際法に違反していたため、慰謝料を請求している」という論理です。もしこの論理が使えるとすれば、なんでも慰謝料の対象になります。「日本の名を名乗るように言われ、私は傷ついた」や、「やりたくもない仕事をやらされて傷ついた」など、ありとあらゆることで慰謝料の請求ができるようになってしまいます。

軍事でも北の影 日米韓の枠組みにほころびも

櫻井氏は、国連による北朝鮮への経済制裁が続く中、文大統領が金剛山開発や経済特区構想などの経済支援を進めていることに言及し、「国際的な制裁に違反して、韓国は北朝鮮を助けたいという意思表示だろう」と指摘。日本との間のレーダー照射問題については、韓国は軍事・防衛面でも北朝鮮の影響を受けつつあるとの見解を示した。

櫻井:推測を交えて、レーダー照射問題について話します。日本の排他的経済水域(EEZ)の中に韓国の駆逐艦と海上警察船がいて、その間には、本当に漁船なのかも分かりませんが、小さな漁船がいました。それと、ゴムボート。我が国の海でこのような船がいたら、哨戒活動をするのは当たり前です。レーダーを当てたかどうかという問題は、明らかに自衛隊の飛行機に近づいてほしくなかったと考えられます。

この船には乗組員が4人乗っていて、1人死亡したと言われています。3人が無事に、彼らの言葉を使えば「救助」されたわけです。衰弱していたとの報道もありました。韓国の駆逐艦にはきちんと、医療用設備、スペースも手段もある。この3人は身柄を確保されてから、2日目に北朝鮮に返されている。なぜそんな早く帰したのか、そこで手当をしなかったのか、尋問をしなかったのか。何もかも異常なんです。一体彼らは誰だったのか。そうした事をとにかく見られたくないために、レーダーを照射したのではないかと思います。

推測の域を出ない話ですが、もしそういうことがあったとします。韓国は、政治はかなり左翼に乗っ取られた。教育はとっくの昔に乗っ取られており、韓国は存在する意義のない国で、朝鮮民族の正当な国家は北朝鮮だという教育がずっと行われてきた。そして、司法も乗っ取られている。最後に残った砦は軍部だったわけです。日本の自衛隊とも非常に良い関係にあり、アメリカとの関係もいいと言われていましたが、軍の中にも北朝鮮の影響が非常に強く働く状況になったのではないか、と推測しております。

もしそうであれば、日韓関係を根本から見直さなければいけない状況でしょう。日韓は軍事情報を共有する「ジーソミア(GSOMIA)」という協定を結んでいます。それによって、日米韓で基本的な軍事情報を共有できていますが、継続の有無も考え直さなければならない局面にきているのではないでしょうか。今まで中国、北朝鮮に対して、日米韓で一緒にやっていこうという戦略があったが、今具体的にほころび始めています。韓国の現政権は、むしろ北朝鮮、その後ろの方にある中国に寄りかかっているんだということを頭に入れておくべきです。

中国は結局、米国を超えられない

櫻井氏は、これまでの「対テロ」に代わって、トランプ大統領は脅威の対象を「対国家」と定め、特に中国の存在を深刻にとらえていると説明した。中東での影響力が低下していることなど米国の世界的地位の変化を示す一方、世界最大規模の経済大国を目指す中国では識字能力が不十分な人が多いことなどを指摘し、両国間で繰り広げられるパワーゲームの行方を論じた。

櫻井:ブッシュ氏やオバマ氏のときは「9.11」もあり、アメリカの本当の脅威は、テロと位置付けられていました。ところが、トランプ氏は安全保障戦略の中で、一番の脅威は国家であり、それは中国やロシアだと言っています。180度の転換と考えても良いと思います。そして、アメリカは中国こそが一番の脅威だとして、貿易戦争に入りました。

中国が目指しているのは世界一の強国で、アメリカを退けて自分たちが世界のスーパーパワーになることだと思います。2017年10月の第19回中国共産党大会の時の習近平氏の演説の内容を私たちは忘れないようにすべきだと思います。簡単に言えば、2035年までには、中国はアメリカを追い越し世界最大規模の経済大国になる。その経済の力を活用して軍事大国にもなると。建国100年の2049年までにそれを成し遂げ、その時に中国は世界の諸民族の上にそびえ立つというわけです。

しかし、中国は日本と同様に非常に深刻な人口問題を抱えています。現在の人口は13億8000万人と言われていますが、これが14億人になったあたりで頭打ちするはずで、急速にどんどん減るというのです。今世紀の終わりころには、半分以下の6億人まで減ると言われています。対して、アメリカは現在3億2千万人で、今世紀の終わりには4億8千万人になると言われています。中国は2035年までにどこまでアメリカ経済を追い上げることができるのでしょうか。

櫻井:アメリカの3億2千万人と中国の14億人と競争すると、人数が多いがゆえに国内総生産(GDP)では、一旦中国が勝つ可能性もあります。しかし、今世紀の終わりまでに中国で6億人に減ると言われている民衆は、どういう人々であるでしょうか。中国でまともな教育を受けている若者は全体の2割だと言われています。後の8割は本当に学校にも行っていない人たちが多い。このような人が大多数です。

アメリカの4.8億人と、申し上げた状況の中で生まれ育つ中国の6億人。この両者が競い合ってどちらがより良い成績を残すか。これはアメリカだろうと思います。アメリカがそのような道を歩んでる時、または、中国がそのような道を歩んでいる時に、私たちの国はどのようにして行くべきかを考えるべきです。

外交の弱さは軍事力の無さが原因 今こそ改憲を

櫻井氏は、日ロ間の平和条約締結に向けた河野太郎外相とラブロフ外相の会談に進展がみられないことに触れ、軍事力がないことが日本の外交力の弱さに影響していると説明。また、韓国の国防予算は日本(約5兆2千億円)を下回っているが、予算の増加率は日本を上回っていると分析し、朝鮮半島の今後の動向や、米中ロの動きの動きを例に挙げながら、持論の憲法改正が必要とする論拠を示した。

櫻井:ラブロフ外相は、日ソ・日露間の歴史や、言葉の解釈の問題などをあらゆる方面から攻めてきたそうです。「北方領土」という言葉自体が気にくわないとも言ってきたそうです。気の短い人であれば席を立って帰ってきてしまうと思いますが、我が国はそのようなことを言われてしまう。かつ、席を立つこともできない立場です。

こうした日ロ関係を見ると、なぜこういう風に扱わなければならないのかと思います。北朝鮮の拉致問題に韓国との竹島問題、徴用工問題、中国の尖閣諸島問題も同じです。

かつての日ソのことで例をとれば、日本はどうしてもソ連に譲らざるを得なかった。なぜならば日本はものすごく弱い国だった。シベリア抑留されていた幾万の日本軍の兵士をとにかく帰国させなければならず、その時に屈してしまいました。今でもロシア側に外交上はやられそうになっています。これは一にも二にも軍事力がないということがものすごく大きな要素になっているだろうと思います。軍事を使うこともできない、軍事力を認めない国が、どうやって諸外国とまともな交渉をすることが出来るのでしょうか。

日本がアメリカとも、中国とも異なる民主主義の良識ある自由の国として、できれば世界でその地位を固めていくための経済力はあるが、軍事力がない。そのような状況から抜け出すために、世界は厳しく、足元の朝鮮半島が全部北朝鮮の勢力に席巻されるかもしれず、その後ろに中国がつくかもしれない。大韓民国がなくなって、もろに社会主義、一党独裁体制の国に直面しなければならないということを認識すれば、もう少し準備を整えようという気になるのではないでしょうか。

韓国の国防費の方が日本をより大きくなる日は近いのです。韓国は憲法9条がありません。専守防衛もなく、まともな国として軍事力を行使できるのです。以上のことを考えると、朝鮮半島の有事に備える意味でも、アメリカ・中国の動向をみるとなおさらしっかりとした形で憲法改正をやって、日本自身の力を強めていくしかないです。

綺麗ごとばかりで終わる人生はない

櫻井:日本を取り巻く外交の課題と展望が扱われた講演の最後には、質疑応答が行われた。政治的・社会的に偏見や差別がなく、中立的な表現や用語を用いるポリティカルコレクトネス(政治的妥当性)が、日本社会が停滞する要因だとする参加者の質問に対し、櫻井氏は「新潮45事件」や働き方改革など社会の動きを交えて回答した。

「新潮45事件」をご存知かと思います。衆議院議員の杉田水脈氏がLGBTの人たちについて、「子どもを産まないから生産性がない」と記して、「生産性が低い」という言葉で大変な目に遭いました。これをきっかけに新潮45そのものが休刊、事実上の廃刊となりました。

たまたま、その時に新潮社のノンフィクションショー・ドキュメントショーの選考委員をしておりました。選考受賞のパーティーでおめでたい席だけども、新潮社へ何か申し上げたいと思い、杉田水脈さんの書いた言葉が適切か不適切かは置いておいて、この内容がバッシングを受けて彼女は表にも出られず、新潮45そのものが廃刊になったことは、日本の考える能力の土台が劣化している、なぜ廃刊にしたのかと、問題定義いたしました。

議論というものは、戦わせて初めて意味があるもので、異論を受け入れることが知的に成長するために必要なプロセスなのですが、それを全て否定してしまう。働き方改革にしても何しても、こういう形でなければならないという明らかな公式みたいなものをバーンと描いて、みんなが従わなければならないとなったら、世の中本当におかしくなると思います。

ポリティカルコレクトネスも行きすぎてしまうと、そこから考える能力や工夫する能力、臨機応変に対応する能力がどんどん落ちてしまう。臨機応変というのがどういったことか分かっている人が、そのルールが目の前にあるからこれを守ろうというのであればいいです。しかし、ルールしか知らない世代が生まれてしまうと、これはもう臨機応変に対応できなくなってしまう。無理も効かなくなってしまう。これは本当に怖いことです。

日本自身がもっと現実を見て、例えば働くということはどういうことなのか、国を守るということはどういうことなのか、人生を生きるということはどういうことなのか、ポリティカルコレクトのいうような綺麗事ばっかりで終わる人生なんてありえないということを認識しなければならないだろうと思っています。