辺野古移設問題に一石を投じたローラの呼びかけ - 渡邉裕二
※この記事は2018年12月27日にBLOGOSで公開されたものです
「We the people Okinawaで検索してみて。美しい沖縄の埋め立てをみんなの声が集まれば止めることができるかもしれないの。名前とアドレスを登録するだけでできちゃうから、ホワイトハウスにこの声を届けよう」。モデルでタレントのローラ(28)が自らのインスタグラム(12月18日)を通して呼びかけた沖縄・名護市の辺野古沿岸への米軍基地移設に対する「署名呼び掛け」に賛否両論だ。もっとも「批判」の声の方が大きいような感じもするのだが…。
先頃、放送された「サンデージャポン」(TBS系)でも取り上げられ、出演者の間で激論が繰り広げられたが、その中でデーブ・スペクターはローラの現在の立ち位置を「CMタレント」とした上で「リスクの高い発言をする必然性を感じない」と疑問を呈した。さらに西川史子も「沖縄の問題は環境問題だけではない」と真っ向から対立していた。
結局、批判の多くは「だったら普天間基地はどうする」「解決策を上げずに発言するな」「芸能人が発言すべきことではない」。で、その挙句が「不勉強過ぎる」…。早い話が「無責任な発言はするな!」ということである。
それにしても何で、ここまで叩かれるのか?その要因の一つは彼女のインスタグラムのフォロワー数にあるようだ。と言うのも、そのフォロワー数というのが521万もあって、日本国内では渡辺直美の846万に続いて第2位だということ。それだけに、多少なりとも嫉妬もあるのだろうか?「言った以上は責任を持ちましょうね」(堀江貴文)なんて言い方をされてしまったりする。一方には、安倍政権への批判ととらわれた部分もあるだろうけど…。ま、どっちにしても芸能界と言うのは、やはり出る釘は打たれるってことだろうか。
正直言って私はローラにはほとんど興味がなかったのだが、聞くところによると、これまでプラスチックのゴミ問題などにも積極的に取り組むなど、環境問題や社会貢献に熱心だったというから、今回の呼びかけも、おそらく彼女にとっては、ごく自然な行動だったのだろう。ただ、私個人としては、今回の発言に対しては「評価」している。
ローラは発言を続けるべき
ただ不思議でならないのは、その呼びかけに対して賛否が出てくるや急に沈黙してしまったことである。これはどういうことなのか?周りから「この問題への発言は控えておけ」とでも言われたのだろうか?しかし、ここで黙ってしまうから、「やっぱり思いつきだった」とか「無責任」だとかネガティブな方向へと話がいってしまう。せっかく呼びかけたんだから最後まで貫き通さないと!今回のローラの呼びかけを「政治的発言」なんて言うメディアもあったけど、それが政治的発言であろうと何だろうと、本来「政治」と「生活」は結びついているものである。そう言った意味では、誰もが自由に政治に参加し発言できる環境が必要だろう。発言したら「干される」なんて言われること自体がおかしい。
これからの世の中、もっと自らの考えを示すことは重要になってくると思うし、何よりも、芸能人はオピニオンリーダーである。だとしたら、必要に応じては問題を提起すべきだろうと思う。
話題になったのはローラの影響力があってこそ
ローラは単に「美しい沖縄の埋め立てをみんなの声が集まれば止めることができるかもしれない」「ホワイトハウスにこの声を届けよう」と呼びかけただけだが、しかし、その程度の呼びかけだけで、辺野古移設問題が…これほどまでにクローズアップさせた、広がりを見せたことだけは確かである。これは、やはり521万フォロワーを持つローラだからこそ成せたことだろう。おそらくデーブや西川がホリエモンが呟いたとしても、ここまで話題にならならない。ちなみに、歌手の松山千春は「辺野古移設は反対」とした上で、移設場所として宮古島にある下地島空港を挙げていた。この空港は日本航空と全日空がパイロット養成のための訓練飛行場として40年前の1979年に設けたものだ。しかし、現在は両者ともに訓練から撤退、ほとんど利用されていないという。「だったら、ここに移設することを考えてもいいのでは」と訴えていたが、沖縄本島に限らないのなら、これも一案である。ところが、どこも取り上げようとしない。そんなものである。やっぱりローラが言わなきゃダメなのか?
しかし、今回のローラの投稿で「We the people」などという請願サイトがあったことを初めて知った人だった多かったはずである。「検索してみて」の呼びかけに、きっとググった人はたくさんいたはずだ。それに、こういった署名の呼びかけは「正攻法」だし、批判されるものでもない。
このサイトは30日以内に10万人の著名が集まれば、米国政府として60日以内に対応を検討して回答すると言うもの。今回、ローラの呼びかけに僅か11日間で10万人を超える署名が集まったという。
アメリカを動かしたテイラー・スウィフトの政治的発言
先の米中間選挙ではアメリカン・アイドルのカリスマ、テイラー・スウィフトが民主党候補に投票することを宣言してトランプ政権を揺るがすほどの話題となった。彼女は「みんな、自分の州の候補者について学んで、自分の価値観と一番近いのは誰なのかに基づいて投票してください」と投票を呼びかけ、有権者として登録を呼びかけた。テイラーのインスタグラムのフォロワー数は1億1000万以上。この彼女の呼びかけに24時間で7万人が登録したと言う。ローラの呼びかけで動いただろう10万人とは大きな違いはあるが、十分に価値のある行動だったと言えるし、凄いことだと思う。しかも共に28歳での行動である。
もっとも、この「We the people」というサイト自体はオバマ前大統領時代に導入されたものだけに「オバマ嫌い」のトランプ大統領からしたら気に入らない。「無視」なんてことになるかもしれないのだが…。
それにしても、辺野古移設に「賛成」「反対」と言うだけで批判の対象になるのは、私には理解できない。だいたい「反対」と叫べば「反日」「左派」とレッテルを貼るのも如いかがなものか?考えは人それぞれだ。全ての人が自分の考えと同じでなければならないなんてあるはずがない。
来年2月には沖縄県民による初の県民投票が実施されるというが、今回の知事選を見る限りでは少なくとも「反対」の声が多かったわけで、ローラの呼びかけに反発しているのは、どちらかと言うと「内地(本土)の意見」ということになる。やはり温度差は大きい。
いずれにしても、今回はローラの発言が異常にクローズアップされたが、本来だったら、まず辺野古移設問題は沖縄出身で、かつてSPEEDのメンバーだった今井絵理子が、政治家(参議院議員)として発信すべき事案だったろう。
ところが、彼女からは何も発信がない。話題に上るのは元神戸市義の橋本健氏との浮いた話ばかり。そんな政治家が必要なのか?これこそ税金の無駄遣いと言うもの。ローラの呼びかけなんかより批判の対象になるべきだと思うのだが…。