質屋やメルカリなどのスマホアプリで出品される「新品未開封」の正体 大黒屋歌舞伎町店に直撃 - BLOGOS編集部
※この記事は2018年12月26日にBLOGOSで公開されたものです
「未使用品☆」「開封しておらず美品」メルカリなどのスマホアプリでは、よく目にする人も多いのではないでしょうか。化粧品や生活用品ならば、もらいものかな?と自然に感じることもありますが、高級ブランドのバッグなどになると、出品するまでの背景をつい考えてしまうものです。
質屋さんの店頭には、クリスマスやお正月などを過ぎると「新品で未開封です」とラッピングされたままのブランドバッグが持ち込まれる”悲劇”が起きているそうです。
実態を確かめるべく、そんなクリスマスプレゼントの二次流通の実情を中古品販売・買取大手「大黒屋」のブランド館 新宿歌舞伎町前店さんに聞きました。【石川奈津美、清水香鈴】
保証書の日付はクリスマスやイブが多い
――クリスマスの後、買取希望のお客さんは増えるのでしょうか?
12~1月は通常に比べ2割ほど取り扱い件数は増えますが、「年末に大そうじをしていたら昔もらったものが出てきた」という理由で来店される方が多く、「クリスマスプレゼントをもらってすぐに売りに来る」という方の数はそこまで多くはありません。
ただ、商品を店舗で陳列する際や、商品の買取で保証書に目を通す際、年間を通して日付が「12月24日」や「12月25日」となっているものをよく目にします。データを取っているわけではないので、割合が最も高いかどうかははっきりと言えませんが、一年を通した中ではかなり上位に来ると思います。
私たちは商品の出所を確認する必要があるため、買い取りの際にはお客様にどこで買ったのか、もらい物なのかなど軽くヒアリングさせていただいています。
持ち込まれた品物の日付がクリスマス付近だった場合は、「いらなくなったクリスマスプレゼント」という暗黙の了解がお客様との間に成立します。詳しくはお伺いせず、そっと保証書を閉じますね(笑)
フリマアプリの影響は限定的
――店舗型の質屋さんにメルカリなどフリマアプリの影響はあるのでしょうか?
全体としてみると、影響は限定的だと思います。
ルイ・ヴィトンなど、いわゆる高価格帯のハイブランドの品物は、中古でいくら安くても商品を実際手に取らずに購入するハードルは高いですし、また偽物が出回る可能性も高くなってくるかと思います。そのため、取り扱い量が減ったという印象はないですね。
一方で、フリマアプリで買うのをためらわない価格帯、例えば1万円程度の品物に関しては多少影響があったと思います。
価格帯が少し安めのジュエリーブランドの商品はデザインによっては貴金属とほぼ同じ値段での買い取りになるため、フリマアプリで売ったほうが高く取引ができる物もあるのが現実です。
お客様から「その値段なら、アプリで売ろうかな」と言われた場合は、「それ以上は出せないので、お客様がそちらに出すのであればそのほうが高く売れると思います」と正直にお伝えしています。
「何週間後かに品物を取りに来る」100万円のエルメスを質に
――歌舞伎町という場所柄、夜のお店で働く方からの持ち込みは多いですか?
そうですね、やはり「もらったものを売りにきた」というのは20~30代の接客業の方が多いです。
そういった方が売りにこられる品物で多いのは、まずお酒ですね。シャンパンはやはり多いです。あとは男性が、今話題のジャパニーズウイスキーの『山崎』や『響』を持ち込む時もありますね。中には希少なヴィンテージ物もあります。
あとは、ルイ・ヴィトンやシャネルなどの値崩れしない定番アイテムが多いです。というのも、われわれのような新品未使用品や中古品を扱うお店では、「みなさんがお持ちになっているようなもの」が良く売れる傾向があるため、定番の商品は買取価格が少し高くなります。
そのため慣れていらっしゃる方ですと、プレゼントとして相手の方に指定していらっしゃるのかは分かりませんが、「このブランドならこれが定番だよね」という、トートバッグや財布、キーケースなどを売りにくる方が多いです。
――特に印象に残っている方はいますか?
銀座店のことですが、3年ほど前の年末、20代の女性が「いらないので買い取ってください」とシャネルのロゴが入った紙袋を持って来店なさいました。
「新品で未開封です」とおっしゃっていたのですが、紙袋の中を見てみると、なんとリボンがかかったまま箱が一切開けられていない状態でした。中に何が入っているのかをわかっていらっしゃったので恐らく相手の方とご一緒に店舗で選ばれたんだろうなと。その時も、定番のバッグでした。
また、「プレゼントで頂いた品物で今はちょっと売れないけれど、一時的にお金が必要なんです」と当店の質預かりを利用される方もいました。その時は100万円以上するエルメスの品物でした。
その方は「何週間後かに品物を取りに来る」と話していらっしゃいました。あくまで想像ですが、プレゼントを頂いた方とその後も会う予定があり、売ることはできなかったのではないかなと。確かに、そんな高額品を頂いたのに売ったのがバレてしまったら…。深い話です。
正規品よりも安く買って、残りの予算でご飯を食べるカップル
――最近景気が良いという声も聞きますがプレゼントの単価は上がっていますか?
クリスマスに限りませんが、正直「プレゼントでもらった」と持ち込まれる方の商品の単価は年々、下がってきていると思います。バブル期は、20~30万円など価格の高いバッグも多かったのですが、最近はぐっと少なくなりました。
また数年前であれば12~13万円くらいの商品もそれなりに入ってきていたのですが、最近はそれも減ってきています。バッグからお財布や小物など、どんどんサイズも小さくなってきていますし、ジュエリーも定価の価格帯が全体的に下がってきているので、まだまだ昔のように景気が良いとは言えないです。
――クリスマスプレゼントは「欲しいものであれば中古でもOK」という人が7割以上に上っているという調査結果もあるようです。大黒屋さんの店頭でクリスマスプレゼントを買うお客さんは増えていますか?
使用感の少ないきれいな商品もたくさんあるので確実に増えているように感じます。
カップルで来店されて、正規品よりも安く買って、残りの予算でおいしいご飯を食べるといった人たちや、リングとネックレスを2個買っちゃうなんて強者も…笑。ジュエリーの多くは定価の約半額程度で販売しており、かなりお得なんです。
また、ひとりでプレゼント用に買いに来るのも目にするようになりました。その場合は「未使用品で紙袋や箱も付いてくるなら買いますが、ありますか?」とおっしゃる方が多いので、「中古ではなく正規店で買ったように見せたい」というご要望だと思います。
いずれにせよ昔と比べて、中古マンションや中古車、中古スマホなど実際の生活の中でも「中古」という言葉を耳にする機会も増えたのでプレゼントを中古で買うことに対して抵抗が少なくなっている人はじわじわと増えているのかもしれませんね。