ラブホテルが1年で最も儲かるのはクリスマスではなく「仕事納め」の日 ー ラブホの上野さん - BLOGOS編集部
※この記事は2018年12月21日にBLOGOSで公開されたものです
初めまして、私は都内のラブホテルで働く上野と申します。
さて早速では御座いますが、皆様はラブホテルのピークは「クリスマスである」とお考えではないでしょうか?
確かにクリスマスのラブホテルには多くのお客様がいらっしゃいます。
特に新宿や渋谷のような繁華街ではラブホテルの外に列が出来ることも珍しいことではないでしょう。
しかしそれはラブホテル業界の一側面に過ぎません。
ラブホテルが真に儲かるのはクリスマスのような派手なイベントがある日ではなく、もっとずっと地味な日なので御座います。
クリスマスはそこまで儲からない
「クリスマスのラブホテルって儲かるんでしょう?」ラブホスタッフとして働いて6年になりますが、これまでに何度もこのご質問を頂きました。
もちろん、普段と比較をすれば売上は増えますが、売上が2倍にも3倍にもなるということは全くありません。
クリスマスと週末が被る年でもせいぜい20%増し程度。
クリスマスが平日になってしまうと、普段の土曜日と売り上げはほとんど変わらないのです。
しかもクリスマスはイベントなどの経費もかかるため、利益で見れば普段の土曜日とそこまで変わりません。
「いやいや、クリスマスのラブホは長蛇の列じゃないか!」というご意見もあることでしょう。
皆様もネットニュースなどで「ラブホの前の行列」をご覧になったことがあるかも知れません。
確かに渋谷や新宿などのエリアではあのような行列ができるのですが、残念ながらあの行列に並ぶカップルのほとんどは入店することなくお帰り頂くことになります。
平均的なラブホテルの客室数は20室程度。つまりあの行列の前から21番目以降のお客様はラブホテルに入ることが出来ません。
つまりクリスマスに増えるのは「ラブホのお客様」ではなく「ラブホを求めてさまようカップル」の数なのです。
部屋数が変わらない以上、どれほどお客様が増えたところでラブホテルの売上はほとんど変わりません。
クリスマスに男性1人で宿泊するお客様
カップルのお客様がお部屋を奪い合うクリスマス。そんな中、毎年1人か2人くらいクリスマスのラブホテルに男性1人でお越しになるお客様がいらっしゃいます。
クリスマスにデリヘルを呼ぶお客様で御座います。
恋人のいない男性のクリスマスは暇なのでしょう。
普段一緒に過ごしている友人が恋人と過ごすため、暇と寂しさを持て余した男性がデリヘルを呼ぶためにラブホテルに来店されるのです。
我々としてはカップルのお客様でもデリヘルのお客様でもご料金は一切変わりませんので、デリヘルのお客様でも大歓迎で御座いますが、全く複雑な気持ちがないという訳では御座いません。
ちなみに私のホテルにはここ5年ほど毎年クリスマスに1人で来店されるお客様がいらっしゃいます。
そのお客様はデリヘルを呼ぶこともなく、1人で来店されそのまま1人でお帰りになります。
たまたまお話をさせて頂く機会があったのですが、そのお客様が仰るには「自分が宿泊したせいで、1組のカップルがラブホを使えなくなったというカタルシスが堪らない」とのことでした。
彼が宿泊したことで、ラブホテルに泊まることが出来なかったお客様には大変申し訳ありませんが、そこまで突き抜けた思想をお持ちのお客様のことが、私は非常に好きで御座います。
満室と完全満室の違い
クリスマス。
都内のラブホテルの場合だいたい22時頃から宿泊が開始になります。
多くのホテルでは22時30分くらいには満室になってしまいますので、クリスマスラブホをご予定の方はくれぐれもご注意くださいませ。
さて、お部屋が満室になってしまうと清掃スタッフは仕事がなくなり暇になってしまうのですが、電話番をしているフロントスタッフはここから眠れぬ夜を過ごすことになります。
一晩中鳴り止まぬ電話。
お電話の内容は1つだけ。
「まだお部屋に空きはありますか?」
で御座います。
さて、ここでラブホテルにおける「満室」と「完全満室」の違いをご説明させて頂きましょう。
お客様から「部屋に空きがあるか?」というお問い合わせがあった場合、我々は「満室です」とお答え致しますが、実は「満室」には「満室」と「完全満室」という2つの意味があるのです。
まずは「完全満室」で御座いますが、これは皆様の想像される満室と同じでしょう。
全てのお部屋に宿泊のお客様が在室中で翌朝まで部屋が空く見込みが全くない状況のことで御座います。
この場合、誠に申し訳ございませんが我々ラブホテルスタッフは何もすることが出来ません。
しかし「満室」は違います。
ラブホ業界における満室とは「今の時点で空室なし」という意味。
つまり「今の時点では満室ですが、間も無くお部屋が空く可能性がある」という状況ということで御座います。
例えば30分後に退室する予定のお客様がいらっしゃるというような状況が分かりやすいでしょう。
こちらの場合、タイミング次第では御座いますが、満室でもお部屋をご用意できる場合が御座います。
とは言えお帰りになる予定のお客様がお帰りにならないこともザラに御座いますし、運次第なところが非常に大きいのであくまでも参考程度にお考え頂ければ幸いです。
クリスマスは2回ある
今年のクリスマスは22日23日24日が3連休で御座います。25日は平日ですので24日の宿泊はそこまで混み合わないことでしょう。もちろんまず間違いなく満室にはなることでしょうが、それでも例年の24日と比較すればそこまで混み合わないと予想されます。
おそらくピークは22日の宿泊。3連休で1泊2日のデートをする場合「2日目→3日目」よりも「初日→2日目」でデートをする方の方が多いので22日がピークであると予想をしております。
ところで12月15日。クリスマスの1週間前の土日もラブホテルは非常に混み合いますが、一体なぜかお分かり頂けますでしょうか?
もちろんクリスマスに仕事が入ってしまったため、1週間前にクリスマスをお祝いしているカップルのお客様もいらっしゃることでしょう。
ですが混雑の最大の原因は違います。
クリスマスが「カップルの日」であるとするなら、1週間前の土日は「不倫・浮気の日」。
「クリスマスは彼女さんの日だから、私は1週間前の土日でクリスマスのお祝いをするの……」というなんとも切ない声が聞こえてきそうな日。それがクリスマスの1週間前の土日なので御座います。
ラブホテルが1年で1番忙しい日
ラブホテルが1年で1番忙しいのはクリスマスでは御座いません。それでは1年で1番忙しいのはいつかと言えば、それはクリスマスの数日後「仕事納めの日」で御座います。
今年であれば12月28日でしょう。この日がラブホテルにとって1年で1番忙しい日で御座います。
というのも仕事納めの日は、不倫のお客様の来店がピークになるのです。
これからお正月になり不倫が出来なくなるので、今年最後の逢瀬を仕事納めの日に楽しむのでしょう。
まず仕事納めの日は、午前中で仕事が終わる会社も多いので、お昼過ぎから不倫のお客様が大量にいらっしゃいます。その後、忘年会が終わった後、二次会と称して来店される不倫のお客様がいらっしゃるので、1日中ひっきりなしにお客様がいらっしゃるのです。
仕事納めの日は「仕事納めで朝まで忘年会なんだよ」という言い訳もしやすいので不倫のお客様が非常に増えるのでしょう。
不倫のお客様は滞在時間も短いのでラブホテルは回転数が大幅に上がります。通常の日では2回転しかしないようなラブホテルでも、仕事納めの日は3回転4回転とすることもあるのです。
ラブホテルが1番暇な日
ラブホテルが1年で1番忙しいのは仕事納めの日で御座いますが、それでは逆に1年で1番暇な日は一体いつでしょうか?それはズバリ元旦。
元旦に不倫をされる方は皆無ですので、不倫のお客様がほぼ0。
一般的なカップルも元旦は家でゆっくり過ごす方が多いので、元旦のラブホテルは壊滅的に暇なのです。
丸1日営業して、お客様が5組以下ということも珍しくはありません。
しかしお客様が少ないからと言って、お正月のラブホテルが暇かと言えば話は別。
というのも、ラブホテルではお客様が少ないお正月に電気や水道と言ったインフラ系の設備の点検を一斉に行います。
24時間365日営業をしているラブホテルでは大規模な点検が元旦にしか出来ません。
そのためお正月に点検を行うのですが、点検中のラブホテルは騒音が酷いので、ご利用をされない方が良いかと思います。
ちなみにお正月にどん底まで落ち込んだラブホテルの売上は三ヶ日も低迷し、しばらく低空飛行を続けることになります。
売上復活は成人の日を待たなくてはなりません。この頃から「新年初不倫」のお客様や「成人式で再会してそのまま付き合ってしまったカップル」のお客様などが現れて、売上が急増します。
大晦日のラブホテル
大晦日のラブホテルを一言で言うと、休憩のお客様は壊滅的に少ないものの、宿泊で一気に盛り返す
と言うもので御座います。
年越しをカップルで過ごしたいお客様は非常に多く、特にお互いが実家暮らしのカップルなどはラブホテルを利用されるのでしょう。
また大晦日に宿泊されるお客様は午前4時ごろにチェックアウトされることが多いのも特徴です。
私服で来店されたお客様がチェックアウトされるときには振袖になっているということも珍しくなく、そう言った姿を見て「今年も終わったんだなぁ」と感じるのがラブホテルスタッフの1年で御座います。
ちなみに一昔前は着付けが出来ずにヨレヨレの振袖でチェックアウトされるお客様や、お部屋から「着付けが出来る人いませんか?」というお問い合わせがあることもあったそうですが、最近は振袖の着付けが簡単になったこともあり、ほとんどお見かけしなくなりました。
とは言え少数とは言え未だにそう言ったお客様はいらっしゃいますので、私のホテルでは毎年1人は着付けができる女性スタッフをシフトに組み込ませて頂いております。
著者プロフィール
都内某所のラブホテルスタッフ。ラブホテルを舞台にした漫画「ラブホの上野さん」の原作、「ラブホの上野さんの恋愛相談」など。・ラブホの上野さんの相談室
・Twitter:上野_ラブホスタッフ