修了生の約6割が収入増!シングルマザーのビジネススキルと自信を育むキャリア支援プログラム - 紫原 明子
※この記事は2018年11月14日にBLOGOSで公開されたものです
私自身が離婚経験者となって以来、周囲の友人たちから、離婚に関する相談をしばしば受けるようになりました。細かな状況はケースバイケースであるものの、離婚のタイミングや離婚までのプロセスなど、多くの人の悩みや不安はだいたい共通しています。
特に、妻の側から受ける相談の中で必ず聞かれるものといえば、やはり離婚後の生活、経済面についてです。
決して少なくない女性が、出産を機に仕事を辞めて専業主婦になったり、稼ぎ手のメインは夫に譲り、自身はパートや契約社員になったりします。けれども、いざ離婚、となった場合に親権を取り子どもを育てていくことになるのも、多くの場合、母親です。
一度仕事をやめてしまった女性、あるいは非正規雇用となった女性が再び就業し、自分と子供とが安心して生活できる収入を稼ぐのはとても難しいことです。平成28年度全国ひとり親世帯等調査では、シングルマザーの平均年収は200万円といわれ、現在、日本における母子家庭の過半数が貧困状態にあります。
そんな、子どもの貧困という重大な社会課題を解決するため、シングルマザーのキャリアアップ支援に取り組んでいる企業があります。化粧品の輸入、製造、販売などを行う、日本ロレアル株式会社です。日本ロレアルは2016年より、NPO法人しんぐるまざあず・ふぉーらむと連携し、シングルマザーキャリア支援プログラム「未来への扉」を運営してきました。
去る10月28日、新宿の日本ロレアル本社にてこの第四期課程の修了式が行われました。今回、ご縁あって取材の機会をいただきましたので、その模様をお伝えします。
シングルマザーのキャリアアップを目指して
シングルマザーキャリア支援プログラム「未来への扉」は現在、パートやアルバイトをいくつもかけもちして働くなど、厳しい状況におかれているシングルマザーたちが、より安定した仕事に就くためのキャリアアップを目的とした就労プログラムです。受講料は無料(※最初に教材費として5000円がかかるそうです)で、実施期間は約5ヶ月。隔週日曜日の開催ですが、託児付きなので、子どもの預け先がない人も安心して受講することができます。
プログラム前半の共通講座では、ビジネスマナーやパソコンの使い方が学べるビジネススキル講座、ロレアル社員によるスキンケア・メイクアップ講座のほか、ライフプラン講座などが実施され、講座の合間に個別のキャリアカウンセリングなどが行われます。共通講座を経て、美容部員養成講座か、オフィスワーク養成講座のどちらかに進みます。
全講座終了後には、日本ロレアルの美容部員や、プログラム協力企業であるアデコ株式会社の取引先企業のオフィスワーク職の面接を受けることができます。第一期から第三期修了生の平均 58 %が収入増などの経済的安定と、大手企業でのプロジェクトリーダー職や、ランコム、シュウ ウエムラなど日本ロレアルの有する高級ブランドの美容部員としてキャリアアップを実現しているそうです。
もう一つの目的は"仲間づくり"
第四期修了式に集まった受講生は、一人ひとり名前を呼ばれ、日本ロレアル副社長の井村牧さんから修了証書を受け取りました。その際、皆さんが一様に、本当に嬉しそうな、満面の笑みを浮かべるのです。大人がこれほど屈託なく喜びを表現する場面はそうそうあるものではなく、とても印象的でした。
「最初の面接の際には、厳しい経済状況や家庭環境をお聞きし、大丈夫かな、と心配になるほど自信がなさそうにされている方も少なくありません。ですがプログラムが終了する頃には、多くの方が別人のように、自信に満ちた表情を見せてくださるようになるんです」
そう語るのは日本ロレアル、コーポレート・コミュニケーション本部シニア・マネージャーの船津利佐さん。また第四期生代表として挨拶された守尾千恵子さんは、「セミナーの中で教わった“問題解決のためには、行動すること、やりきること。解決しなければ意味がない”という言葉が胸に残りました。ここで出会った仲間たちのおかげで、年齢や境遇を言い訳にせず、やってみようという気持ちを持てました」とお話されました。
5ヶ月間、普段の仕事や子育てと平行して講座を受け続けるというのは、決して簡単なことではないでしょう。ましてや今期のプログラムの受講生は下が19歳から上は50歳まで、幅広い年齢の18名。全員が楽しく学びを継続できるように、運営者の皆さんは講座内容だけでなく、コミュニケーションが生まれやすい環境作りにも力を入れてきたそうです。実際、受講生の皆さん同士のとても仲の良さそうな雰囲気はひしひしと伝わり、同じシングルマザーとしては少々うらやましさを感じるほど。また、託児で毎回顔を合わせる子どもたちにも、母親たちと同様に、たくさんの友達ができるそうです。
スキルと自信を育てるプログラム
今回、本プログラムを受講されたシングルマザーの方数名にお話を伺いましたが、どの方も一様に子どもの父親から養育費が支払われておらず、また自身は非正規雇用。現在、決して楽ではない生活を余儀なくされていると打ち明けてくださいました。
私は常々、離婚は不幸の終わりであるし、そうあるべきだと思っています。
結婚生活の中では色々なことがあり、頑張ったものの、幸せな生活を送れなくなることもあります。でも、子どものために、あるいは自分のために、もう少し頑張ろう、もう少し耐えようと思っている間に、どんどん幸せとは言えない状態に陥っていく。そんな状態から脱するために、せっかく勇気を出して離婚を選択したのだから、なんとか不幸の終わり、幸せのスタートにしなくてはなりません。
しかし、そうはいっても離婚は、家族構成や生活を大きく変えるばかりでなく、それまで妻や母として頑張ってきた自分の自尊心に、大なり小なり、何かしらの傷跡を残します。守るべき存在を抱えて、これからどうやって生きていこう。私が病気になったら、私が倒れたら…日々、大きな不安と隣り合わせです。そんな中で、悩みや苦しみを分かち合える仲間とともに身につける、新しい知識や新しい技術は、新しい暮らしへの希望といえるかもしれません。また何より、自分が5ヶ月間のプログラムを完遂したという事実そのものが、離婚によって一度、大きく失った自信を、再び取り戻すための糧となってくれるかもしれません。
この「未来の扉」プログラム、来期は来年4月よりスタートするそうです。興味のある方はぜひ下記サイトから問い合わせてみてください。
http://www.single-mama.com/miraihenotobira/
またこういった、孤立しがちなひとり親家庭をサポートする官民の取り組みは、今後も継続して取材していきたいと思っています。何か情報があればぜひ、私のツイッターアカウント(@akitect)などにご連絡ください。