入れ墨で温泉お断り?暴力団排除条例と外国人観光客増加の間でゆれる福岡・公衆入浴施設の対応 - BLOGOS編集部
※この記事は2018年10月31日にBLOGOSで公開されたものです
国の指定暴力団24団体のうち、全国最多の5団体が拠点を置く福岡県。2009年10月、福岡県は全国で初めて暴力団排除のための総合的な条例を公布。2011年10月には全国で暴力団排除条例が施行された。
以降、暴力団関係者を想起させる入れ墨客の入浴を多くの公衆入浴施設が断ってきたが、いま対応が分かれているのが入れ墨を入れた外国人観光客の入浴だ。
温泉観光地の大分県では入れ墨OKの施設も多い
(福岡県:BLOGOS福岡編集部作成、別府市:B-biz LINK提供データより作成)
2017年に大分県別府市と一般社団法人B-biz LINKが共同で実施した調査によると、市内の入浴施設90ヶ所のうち6割超の58施設が入れ墨客の入浴を容認していた。市はインバウンド向けのウェブサイト上で「入れ墨OK」な入浴施設を落とし込んだマップを提供するなど、外国人の集客に力を入れているという。
※別府市インバウンド版公式ウェブサイト ENJOY ONSEN
では、多くの指定暴力団が拠点を置く福岡県ではどうだろうか?
今回、BLOGOS福岡編集部では福岡県の入れ墨客の入浴可否に関する調査を独自に実施。県内の入浴施設144ヶ所に問い合わせた結果、7割以上の施設で入れ墨客の入浴を禁止していた。
入れ墨OKだとヤクザが来る?現場の声は
調査の結果、入れ墨禁止の理由として1番多く聞かれたのは「他のお客様への配慮」、次に多かったのが「警察からの指導」だった。入れ墨客の入浴を容認すると、実際に暴力団関係者の入店はあるのだろうか?また、更なる増加が見込まれる入れ墨がある外国人観光客への対応は変化するのだろうか?
入れ墨禁止派の「博多 由布院・武雄温泉 万葉の湯」、入れ墨容認派の「鶴亀湯」に話を聞いた。
BLOGOS編集部
<万葉の湯>
まだまだ入れ墨を入れたお客様のご入浴を気にされる方が多いため、当施設ではお断りさせていただいております。
<鶴亀湯>
創業以来、公衆のための銭湯ですので当店では容認しております。
--禁止・容認していることでお客様の対応に困ったことはありますか?
<万葉の湯>
特にありません。
<鶴亀湯>
特にありません。反対に、入れ墨がある方は入れる施設が限られているためかマナーが良く、マナーが悪い他のお客様を注意してくださることも多いです。
--暴力団と外国人観光客の入れ墨について、お店の考えを教えてください。
<万葉の湯>
基本的に同一のものとして考えております。
<鶴亀湯>
どちらに関しても、これまで通りウェルカムな姿勢を続けます。
--今後、入れ墨についての入浴ルール変更は検討されていますか?
<万葉の湯>
変更の予定はありません。
<鶴亀湯>
変更の予定はありません。
BLOGOS編集部
暴力団関係者の入店については、直接「ヤクザですか?」と尋ねることはないものの、背中に鮮やかな昇り龍や鯉の彫り物が入っている人の来店は少なくないそうだ。
Getty Images
観光庁は対応改善を促すも、現状は複雑
観光庁では外国人観光客の急増を受け、入れ墨がある外国人の入浴に関する留意点や対応事例をまとめ、施設に対応改善を促している。※ 「入れ墨(タトゥー)がある外国人旅行者の入浴に際し留意すべきポイントと対応事例」 (観光庁)
しかし、営利目的の施設である以上、他の入浴客への配慮が重要視されるのは致し方ないところ。
外国人観光客に日本の温泉・銭湯文化を楽しんでもらいたい反面、ファミリー客が多く訪れる入浴施設にとって入れ墨客の入浴は暴力団のそれと線引きが難しく、簡単に入浴ルールを変更出来ないのが現状のようだ。
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【BLOGOS福岡編集部】