※この記事は2007年12月18日にBLOGOSで公開されたものです

 鳩山邦夫法相の「友人の友人はアルカイダ」発言を福田康夫首相が擁護したことが問題になっている。

<福田首相は14日夜、TBSの報道番組の収録で、「友人の友人がアルカイダ」と発言した鳩山法相について、「面白い方ですよね。面白い方。発言の中身も面白い」と語った。鳩山氏の発言には、現職の法相が国際テロ組織とかかわりがあるかのような印象を与えたとして町村官房長官が口頭で注意したほか、野党が「軽率だ」などと批判している。首相が鳩山氏擁護ともとれる発言をしたことで、野党から国会審議で真意を追及される場面が出てきそうだ。(中略)
 収録で首相は「アルカイダ発言はいただけない」という司会者の問いに、「あの1回だけじゃ駄目ですね。連続して聞くと味がある」と感想を述べた。さらに鳩山氏が「(テロ組織)しょっちゅう日本に平気で入って来られるというのは安全上好ましくない」と発言したことを念頭に、「そういう人がいる可能性があるってことを正直に言っている。ほんとと言った」とも語った。>(12月15日朝日新聞朝刊)

 確かに「面白い」という表現は誤解を招きかねないので軽率と思う。しかし、福田首相の発言の揚げ足取りをするよりも、鳩山法相がもっている情報をテロとの戦いで有効に活用する方策を考えるべきだ。鳩山法相の一連の発言を整理すると、重要なのは以下の2点になる。

1.アルカイダと思われる人物が、複数回、入国しているという確実な筋からの情報を得ている。
2.1.の情報を法務省入国管理局、警察庁、防衛庁(当時)に伝えたが、特段の反応がなかった。

 まず、1について、アルカイダ幹部と確実に繋がるような情報は、実のところ、なかなか入手できない。鳩山氏の情報を追跡することには価値がある。恐らく、公安警察は、その作業を行っていると思うが、日本における国際テロリストの活動状況について、政府は国民に知らせる責任を負っている。

 2.は非常に深刻な問題だ。鳩山氏の情報を各官庁がどのように取り扱ったのかについては、国会が国政調査権を行使して、きちんと検証すべき性質の問題だ。検証をしないことには欠陥の是正はできない。

 2008年にはG8洞爺湖サミット(主要国首脳会議)を控えている。日本がテロリストの標的となる可能性は十分あるのだ。テロとの戦いについては、与野党ともに政争の枠組みを超えて、国家的、国民的見地から真剣に取り組んで欲しい。つまらない揚げ足取りなどしている余裕はないはずだ。(2007年12月18日脱稿

プロフィール:
佐藤優(さとう・まさる)…1960年、東京都生まれ。作家・起訴休職外務事務官。日本の政治・外交問題について、講演・著作活動を通じ、幅広く提言を行っている。
著書に「国家の罠」(新潮社)など。


眼光紙背[がんこうしはい]とは:
「眼光紙背に徹する」で、行間にひそむ深い意味までよく理解すること。
本コラムは、livedoor ニュースが選んだ気鋭の寄稿者が、ユーザが生活や仕事の中で直面する様々な課題に対し、「気付き」となるような情報を提供し、世の中に溢れるニュースの行間を読んで行くシリーズ。