首位・川崎フロンターレと最下位・ヴィッセル神戸。Jリーグ序盤戦、福田正博が「明暗の理由」を分析
■J1は序盤戦が終了しようとしている。現在4チームがACL(AFCチャンピオンズリーグ)を戦っているが、そのなかでここまで対照的な流れとなったのが、J1で 首位に立っている川崎フロンターレと最下位に低迷しているヴィッセル神戸だ。福田正博氏に、両チームの序盤の戦いぶりを振り返ってもらった。
勝負強さを発揮して首位に立っている川崎フロンターレ
J1リーグは早くも全体の3分の1近くを終えたが、3連覇を狙う川崎フロンターレが首位に立ち、10戦未勝利のヴィッセル神戸が最下位に沈んでいる。
両チームとも、4月15日から5月1日まで集中開催されているACLグループステージに臨んでいる。つまりどちらも昨季上位で今年は優勝を狙ってスタートしたはずだが、J1序盤戦の出来は、明暗が分かれてしまった。
川崎は10試合を終えた時点での勝敗は6勝2分2敗で、得点15、失点12。昨季までリーグで屈指の最少失点だったチームが、すでに 2桁失点を許している。
シーズン開幕直前に行なわれた、昨季J1王者と天皇杯優勝チームによるFUJI FILMスーパーカップで、川崎は浦和レッズに0−2で敗れた。3連覇に向かってスタートしていくなかで、シーズン最初の試合に敗れて気を引き締め直した部分があっただろう。J1開幕カードのFC東京戦は勝負強さを発揮し、レアンドロ・ダミアンの一発で1−0と勝利した。
だが、続く昨季リーグ2位の横浜F・マリノス戦は2−4で敗戦。その後も勝ち星は積み重ねていくものの、内容で言えば昨季までのような圧倒的な強さはあまり見られなかった。3月6日のガンバ大阪戦は先制され、同点に追いつき、ふたたび勝ち越し弾を決められ、徳俵いっぱいのところ、レアンドロ・ダミアンのゴールで辛うじて引き分けに持ち込んでいる。
川崎は対戦のタイミングもよかったもちろん、苦しい展開になっても粘り強く戦い、勝負強さを発揮して勝ち点を積み重ねるのが2022シーズン版の川崎だという見方はできる。ただ、そうだとしても守備のところでの不安定さがあるがゆえに、4月2日のセレッソ大阪戦で1−4の大敗を喫したような敗戦は、今後もあるのではないかと見ている。
それでも首位を走っているのは、対戦のタイミングに恵まれたところもあったと感じる。スーパーカップでの敗戦で、J1 開幕前に修正点が見つかった。開幕のFC東京戦は負けていても不思議ではなかった内容だったが、仮にスーパーカップで浦和に勝っていたら、FC東京、横浜FM、鹿島アントラーズ、浦和と続いていった強豪とのシーズン序盤の連戦でもっと負けていたのかもしれない。
今シーズンの川崎が苦戦している理由は、センターバックにジェジエウを欠いているのが大きい。今季は山村和也が起用されているが、ジェジエウほどのスピードがないため、チームは高いDFラインを敷くと生まれる背後のスペースを警戒し、ジェジエウの時と同じような高い位置にポジショニングを取れていないように映る。
わずか一歩、距離にしたら1メートルもない程度の違いだ。だが、それによって中盤でのプレスのかかりが遅れたり、相手に使われるスペースを与えたりして、失点が増えているのではないだろうか。
この課題に対して鬼木達監督は、中盤を構成する選手を入れ替えたり、立ち位置を変えたりして対応してきたが、2週間で6試合を行なうACLでの戦いを通じながら、ACL後のJ1リーグへの対策も講じるのではないかと思う。
神戸はロティーナ新監督で復調するか対戦のタイミングを感じさせたのは、ヴィッセル神戸も同じだ。
神戸は、オフシーズンに扇原貴宏や槙野智章などを獲得するなどしてACLに備えてきたが、肝心のJリーグで出遅れてしまった。開幕戦で名古屋グランパスに敗れると、3月19日の清水エスパルス戦までの7試合で4分3敗と波に乗れず、3月20日には三浦淳寛監督が解任となった。
三浦前監督の下でのサッカーは、歯車さえ噛み合えば勝ち星を積み重ねていける内容だっただけに、序盤戦で1勝でもしていたら監督交代にはならなかったのではと思う。ただ、内容ではなく、結果が求められるのが宿命でもある。個人的にはもう少し三浦前監督に時間を与えてもよかったのではと思うが、それも仕方のないことではある。
シーズン序盤のタイミングで監督交代という劇薬を使った神戸だったが、その後は新監督のミゲル・アンヘル・ロティーナ体制1試合目となった 4月10日のC大阪戦を含めて3連敗。チームとしては苦しい状況下でACLグループステージを迎えることになった。
ただ、このタイミングでACLを迎えられたのは、神戸にとっては追い風になるかもしれない。
異国の限定された空間で、短期集中的に試合に臨む。試合を通じて見つかった課題をすぐに次の試合で修正していくことができるため、新監督の志向するサッカーをチームに浸透させやすく、再浮上のきっかけをつかみやすいはずだ。アンドレス・イニエスタはACL欠場となったが、彼の不在もポジティブに変換できるのではないかと思う。
神戸がイニエスタ中心のサッカーをやることに変わりはないが、そこ以外の部分でのメンバー構成も含めて、ロティーナ監督がどういうチームを短期間で作って くるのかは大変興味深い。
いずれにしろ、メンバー的にはいつまでも降格圏にいるようなチームではないだろう。ACLが終わって5月8日にJ1に復帰してから、神戸がどんなV字回復を見せてくれるのか。そうなることを楽しみにしている。