川崎の臨海部で巨大な斜張橋の建設が進んでいます。主塔と主塔のあいだの長さは日本3番目の規模になる予定。埋立地の一般立ち入りが一部制限されていたエリアも変わる見込みです。

「東扇島」への新たな橋を建設中

 2022年3月12日、神奈川県川崎市の臨海部と東京都の羽田空港エリアを隔てる多摩川に、「多摩川スカイブリッジ」が新規開通しました。多摩川最下流に架かる大きな橋として話題を呼ぶとともに、川崎の臨海部のアクセス性向上にも寄与することが期待されています。
 
 実は川崎の臨海部では、もうひとつ、巨大な架橋計画が進んでいます。


東扇島から水江町とを結ぶ橋の建設現場を望む(乗りものニュース編集部撮影)。

 それは、JFEスチールの工場やエネルギープラントなどがある埋立地の「水江町」と、そのさらに沖合、首都高湾岸線が通る埋立地の「東扇島」をつなぐ臨港道路の建設計画です。この道路には、高く伸びる2本の主塔から斜めに張ったケーブルで橋桁を支える「斜張橋」が架けられます。

 幅400mある京浜運河をまたぐため、中央径間(主塔と主塔のあいだの長さ)は525mが確保されます。径間長で見ると、首都高湾岸線 横浜ベイブリッジの460m、同 鶴見つばさ橋の510mを超え、斜張橋としては日本3番目の長さになります。

 ただ、羽田空港に近いため高さ制限が適用されることから、主塔の高さは98.5mに抑えられます。この高さは鶴見つばさ橋の半分ほど。そのため「(規模のわりには)やや特殊な橋」になると、事業主体の国土交通省 京浜港湾事務所は話します。

 さらに、橋から続く東扇島側のアプローチ道路は2手に分かれ、1本は首都高湾岸線に並行する国道357号の東行きに、もう1本は首都高をまたぎ、南側の物流倉庫エリアにそれぞれ取りつきます。現在、首都高を走行していると、左右にその橋脚だけが見えます。

 ただ、この首都高をまたいだ先のエリアは現状、物流関係者や港湾関係者のみで一般車の立ち入りが禁止されています。また、首都高は東京・横浜方面とつながっているものの、並行する国道357号は東扇島の両端が未開通です。

 東扇島は現状、上陸方法自体が非常に限られており、そのなかを走るクルマの多くは物流車です。しかし、この地への新たな架橋計画の背景には、一般人にも大いに関係するプロジェクトがありました。

災害時の超重要拠点になる東扇島

 現状、一般車が東扇島へ上陸する方法は、首都高湾岸線(東扇島出入口)と、川崎駅側の千鳥町地区とを結ぶ「川崎港海底トンネル」に限られます。しかし、トンネルは渋滞が起きているうえ、「地震に弱い」(京浜港湾事務所)ため、川崎駅側とを結ぶもう1本のルートが橋で整備されることになったといいます。

 また、東扇島には「首都圏臨海防災センター」なる岸壁を備えた公園が整備されています。京浜港湾事務所によると、「災害時の救援支援物資は、いったんここへ船で運び込まれ、首都圏各所へ配送されます」とのこと。この機能強化のためにも、川崎駅側とのアクセスを二重化するというわけです。

 なお、橋のアプローチ道路が通じる東扇島南西の物流倉庫エリアは、橋の開通とともに一般開放される予定だそうです。

 また現状、湾岸線より内陸側を並行して走る首都高K1横羽線は、多摩川南岸の大師出入口から、横浜方面の浜川崎出入口までが離れているうえ、浜川崎の出入口にも制限があるため、ルートによっては川崎市街地から海底トンネルを通って東扇島に上陸し、湾岸線を利用するケースもあります。新しい橋は、川崎市街地と首都高のアクセス改善にもつながるでしょう。


川崎港の物流倉庫エリアに立つ橋脚(乗りものニュース編集部撮影)。

 新しい橋を含む臨港道路は、2024年3月の開通が予定されています。いまはまだ橋脚しかできていませんが、あと2年で、橋桁などの上部工を仕上げるといいます。

 ちなみに、実は東扇島と水江町のあいだにはもう1本、海底トンネルが通っていますが、これはJFEスチールの専用道路、つまり「私道」です。一般車は利用できません。