時間便益は約5.5兆円/年とも 流れを読む「AI信号機」で渋滞解消目指す
静岡市内12か所の交差点で実証実験。
同時に維持管理コスト低減も
国立研究開発法人「新エネルギー・産業技術総合開発機構」(NEDO)と一般社団法人「UTMS協会」が2022年3月から、警察庁と静岡県警の協力のもと、信号機にAI(人工知能)を搭載する「軽やかな交通管制システム」の実証実験を開始しました。これはかんたんにいうと、交差点の至近に設置したレーダーやセンサーを用いて歩行者やクルマを検知し、円滑な交通に寄与する信号制御(色の表示)を行うものです。
交通信号機のイメージ(2015年5月、大藤碩哉撮影)。
NEDOやUTMS協会はこれを「自律・分散型AI信号制御」と呼んでおり、取得した歩行者やクルマの位置をもとに“全体の流れ”としての交通情報を生成。この情報を、AIにより最適な制御を行う信号制御機に入力します。さらに、ほかの交差点の信号機とも制御情報を交換でき、一定区間の道路単位で信号機の表示時間を変えられる、適応型の交通管制方式です。
従来の信号機は、警察本部などにある交通管制センターと各信号機が通信回線で接続された、集中制御方式が主流です。ただし、車両感知器や有線の通信回線、大規模な中央制御装置など、維持管理コストの増大が課題となっています。
実験では、その時々の交通量に応じて柔軟に信号制御が行われるか、現行と比較して渋滞を軽減できるか、一定区間におけるクルマの平均旅行時間を短縮できるかが検証されます。
14日(月)、静岡市内の12か所の交差点に、AIユニットを搭載した交通信号制御機が設置されました。低コストでの高度な交通信号技術の確立、維持管理コスト低減、安全・安心な道路交通社会の実現を目指すとしています。
なおシミュレーションでは、現行の信号機と比較して15〜20%程度、平均旅行時間の短縮が期待されるそう。仮に、全国約20万か所の交差点について20%の時間を短縮できた場合、時間便益は年間で約5兆5200億円とのことです。