政治的駆け引きやらでアメリカ機買えない国に最適。

F-16に引けを取らない新型機として誕生

 1978(昭和53)年の3月10日。フランスのダッソーが開発した戦闘機「ミラージュ2000」が初飛行しました。


フランス空軍のミラージュ2000(画像:アメリカ空軍)。

 1970年代前半、オランダ、ベルギー、デンマーク、ノルウェーの4か国はNATO(北大西洋条約機構)としての共通戦闘機を導入しようと計画していました。それにダッソーも応じますが、既存の「ミラージュF1」の改良型でしかない「ミラージュF1/M53」を提案したため、アメリカ製の最新戦闘機(当時)F-16「ファイティングファルコン」にあえなく敗北してしまいます。

 このことは、NATO以外の世界的な戦闘機市場を捉えても、ミラージュF1が旧式化しており、他国の商戦においてもF-16に負けることは必須ということを示すものでした。

 一方、1970年代後半に入るとフランス空軍も新型の戦闘機を導入しようと動き出します。そこでダッソーは1から設計し直した新型機を開発することを決め、最新技術を多数採り入れた戦闘機を生み出します。こうして誕生したのが「ミラージュ2000」でした。

 フランス空軍が1982(昭和57)年の実用化を求めたため、設計開始から初飛行までわずか27か月(2年3か月)という驚くべき短期間で開発され、フランス空軍の要求通り、1983(昭和58)年には量産型の納入にこぎ着けています。

南米や極東にも 意外と多い導入国

 当初、「ミラージュ2000」は要撃戦闘機として開発されたものの、その後、核ミサイルの運用能力が付与された戦略爆撃機タイプなどが造られたことで戦闘爆撃機型も生まれ、のちには対地・対艦攻撃も可能なマルチロール型(汎用型)へと発展しています。


フランス空軍のミラージュ2000C(画像:アメリカ空軍)。

 生産数ではアメリカ製のF-16やF/A-18に大きく水をあけられたものの、エジプト、ペルー、インド、ギリシャ、UAE(アラブ首長国連邦)、台湾、カタールが購入を決めたほか、フランス空軍の中古機をブラジルが調達しており、母国フランスを加えると9つの国と地域に販売することに成功、生産数は600機余りを記録しています。

 製造は2007(平成19)年で終了したものの、ブラジル以外の8つの国と地域でいまでも運用されており、エジプトやインド、ギリシャのように、新型の「ラファール」戦闘機を輸出する礎となったケースもあるなど、“次”に繋げる橋渡し役としても存在感を放っています。

 その点では、アメリカ製戦闘機のライバルとして十分な働きを示したヨーロッパ製戦闘機といえるのかもしれません。