「作業員の命を奪います」工事規制帯に突っ込む事故相次ぐ 原因はスマホ? 対策は
路上の守護神、助けて!
危険にさらされる路上作業員
「スマホ・わき見・居眠り 作業員の命を奪います」
このようなメッセージと、クルマに突っ込まれたであろう大破した作業車の写真を載せたポスターを、NEXCO東日本関東支社が2022年3月現在、公式Twitterにて発信しています。
NEXCO東日本の注意喚起ポスターより。実際に発生した工事規制区域内への衝突事故(画像:NEXCO東日本関東支社)。
「工事規制中事故 多発!」というタイトルで発信されたポスターの画像は、2020年7月に関越道で実際に起きた事故の写真だそうです。
このように、道路工事の車線規制区域にクルマが突っ込む事故が多発しており、関係者を悩ませています。高速道路であれば、100km/h前後のスピードで突っ込んでくることもあるでしょう。作業員の安全確保が急務になっています。
NEXCO東日本関東支社の管内だけでも、年間10〜20件ほど発生しているほか、NEXCO中日本の管内全体では、2016年度46件、2017年度103件、2018年度には149件と、年々増加していました。
一般道でも同様です。たとえば国道357号(東京湾岸道路)、千葉県市川市内の橋梁補修現場では2022年1月以降、片側3車線の真ん中を規制して昼間の作業を行っていたところ、通行車両の工事規制帯への衝突事故が複数件発生したといいます。このため、緊急的に一部時間帯は右側車線も規制し、左側1車線通行に変更。規制範囲を広げ、衝突事故を抑制する狙いです。
工事はわずかな箇所なのに、車線規制区間がやけに長い、というケースもありますが、NEXCO西日本九州支社によると、規制範囲は警察とも協議のうえ、安全を考慮して決めているといいます。
抜本的な対策は?
規制範囲を広げても、いざクルマが高速で突っ込んでくれば大惨事になりかねません。各社どのような対策をしているのでしょうか。
NEXCO東日本関東支社によると、高輝度反射材や光るバルーン、あるいはガードマンロボを使用するなどして、規制区域を目立たせる取り組みを行っているとのこと。作業員に危険を知らせるシステムや、規制区間の末端で、突っ込んできたクルマを「強制的に止める」機材も導入しているそうです。
抜本的な対策もあります。そのひとつが、「ロードジッパー」、日本語で「移動式防護柵」と呼ばれるものです。1個あたり680kgあるブロック状のコンクリート柵を並べ、それを「BTM(Barrier Transfer Machine)」と呼ばれる車両で反対側の車線に整然と移設させることで、車線の切替を容易にするものです。カラーコーンによる仕切りと比べて、作業員の安全性も大幅に向上します。
国道357号では2022年1月、真ん中の車線を規制した工事エリアへの衝突事故が相次いだ(画像:千葉国道事務所)。
もうひとつ、NEXCO中日本が運用しているのが、「ハイウェイ・トランスフォーマー」と呼ばれる特殊車両。これは車両そのものが防護柵になるというものです。トレーラー中央部の外壁にあたる保護ビームが伸び(最大車両長約23m)、作業員はその壁のなかで作業ができ、移動も容易です。
ただし、どちらの車両も数は限られているうえ、すべての工事に出動できるわけではありません。開通から年月を経た高速道路では、老朽化対策の必要性が日に日に高まっており、路上作業員の安全確保がますます重要になりそうです。