女子SP27位に終わり、フリー出場を逃した中国のジュ・イー【写真:AP】

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団体戦から8日で転倒なしの熱演、中国メディアは「朱易は泣かなかった」と称賛

 北京五輪は15日、フィギュアスケートの女子ショートプログラム(SP)が行われ、米国生まれの中国代表ジュ・イー(朱易)は53.44点の27位。25人が進めるフリー出場は逃したが、団体戦で中国国内で中傷の的にされていた19歳は転倒なく滑り、今大会初めて笑顔を見せた。中国世論、メディアは一転して奮闘を称える声を上げている。

 涙に暮れた団体戦から8日。母国のリンクに笑顔を咲かせた。ジュ・イーは冒頭のコンビネーションが3回転フリップのみになったが、負けなかった。後半に3回転ループ―3回転トウループをつけ、リカバリーに成功。3本のジャンプで転倒なく滑り、最後は笑みを見せた。

 ジュ・イーは6日の団体戦女子SP、7日の女子フリーで転倒が続き、ともに出場選手中最下位。フリーの演技後には涙も見せた。米国生まれで18年に中国籍を取得。中国語が堪能ではないこともあり、中国では心ない声がやまず、多くのSNSアカウントに停止措置が取られるほどの騒動になったが、大会期間中に立て直した。

 中国紙「北京日報」は「今度は転ばなかった、泣かなかった! フリーには進めなかったけれど、朱易はにこやかだった」と題した記事を掲載。「団体戦女子SPで、演技を終えた朱易は泣いた。団体戦女子フリーでは、演技途中ですでに泣いていた。女子シングルのSP。朱易は泣かなかった」と好対照だった3つの演技に言及した。

 記事では生い立ちなどを改めて紹介。団体戦について、コーチが「試合経験がなくて、力が出せなかった」と擁護し、高いジャンプ能力を持っていると強調したことを伝えた。一方で「試合で転倒し、ジャンプが跳べなかったのは事実であり、試合が終わらないうちに泣き始めた。どんな説明も、ミスの前では意味がない。朱易にとって、自分を証明する方法はただ一つ。試合でしっかりと戦うことだった」と言及した。

中国ネット上も好意的な意見「今のままでも優秀」「これからも頑張って」

 その上で「そして今日、朱易はついに弱い自分に打ち勝ち、笑顔で試合を終えた」と奮闘を報じた。中国女子フィギュアは世界との差があることに触れながらも「こうした状況の下、若い女子フィギュア選手は重責を担っている。若い選手にとって、一時の挫折は前進する道で避けて通れない試練だ。団体戦で2度涙を流した後、朱易は今日、ついに笑顔で自分の試合を終えた」と労った。

 団体戦まで「代表権は父親のコネ」など根も葉もない噂も含め、批判が殺到していた中国版ツイッター「ウェイボー(微博)」でも一転して好意的な声が多く上がった。

「今のままでも優秀だと思います。五輪に出られれば勝ち。変な記事で変なことを言って世の中を乱すのはやめてほしい。どんな種目でも参加して、舞台に出られれば成功で、そこから努力を続ければきっとうまく行きます。がっかりしないで。頑張って」
「今日、わざわざSPの試合を見ました。私たちの差は目で見ればすぐわかります。これから4年間、中国フィギュアが頑張って全体的にレベルアップすることを願っています。あれこれ非難したり、文句を言っても進歩はしません。若い朱易がさなぎから蝶になるときがきっと来ます」
「大丈夫。これからも頑張って。あなたの一番いい時はまだ来ていない」

 なかには「もう若くない。次の五輪にはきっといない」という心ない声が上がっていたものの、大会を通じて朱易に対する世論が少なからず変わったことは確かなようだ。

(THE ANSWER編集部)