Hannibal Hanschke / Reuters
Hannibal Hanschke / Reuters

テスラのイーロン・マスクCEOは、NHTSAによるテスラのFSDベータ搭載車の約5万4000台のリコールを報じたAP通信の記者をロビイストだと非難しています。また熱狂的なマスクファンらは、記者をTwitterで攻撃しています。

問題のFSDベータのリコール内容は、この完全自動運転(Full Self Driving)を自称するソフトウェアが「Assertive Mode」において一時停止標識のある交差点で一時停止しない「ローリングストップ」をするようプログラムされていたのを修正するというものでした。具体的には、FSDベータ版を使用した状態で一時停止標識のある交差点に差し掛かったとき、テスラ車は周囲に他の車両や歩行者がいなければ完全に停止せず、そのまま通過するようになっていました。

一時停止標識を完全に停止せずに通過する行為は、ぶっちゃけ人間のドライバーでも多くの人がやってしまっている行動ですが、道交法に照らし合わせれば明らかに違反行為です。とはいえ、いくら多くの人がそれをやっているからと言って、あえてそれをプログラムに組み込むようなことを運輸省道路交通安全局(NHTSA)が許可できるはずもなく、リコールによってこの機能を削除するようテスラに迫りました。

したがってリコールについては完全にNHTSAの判断が正しいと言えますが、マスク氏はAP通信の記事の見出しとなっていた「Tesla recall: ‘Full Self-Driving’ software runs stop signs(「完全自動運転ソフトウェア」が停止標識を通過する)」が特に気に入らなかったように見受けられます。

ただ、マスク氏がツイートで主張した「there were no safety issues(安全上の問題はなかった)」という言葉は、ある意味マスク氏の認識の甘さを露呈しているように思えます。NHTSAはリコール通知文書に「safety risk」と記しているうえ、たとえテスラがこの機能による事故やけが人の発生を認識していないとしても、一時停止標識があるところで一時停止しなければ道交法違反に違いはありません。さらにマスク氏はツイートで、標識のところでは時速2kmまで減速すると述べていますが、実際には時速9kmで通過した事例が報告されています。

またAP通信の記者についても、この記者はAPで16年記事を書いているベテラン記者で、認知されるようなロビイストとのつながりは確認できないとElectrekは伝えています。とすれば、マスク氏によるロビイストだとの主張は、ただの感情的な非難に過ぎません。

盲目なマスク〜テスラファンたちは、マスク氏のツイートに反応し、こぞってこの記者を非難しはじめています。彼らにとっては記者が過去にはNHTSAの問題を報告する記事を書いていたこともある事実などは関係ないようです。

またマスク氏自身も、NHTSAの発表をソースにした記事に文句を言う前に、テスラの広報部門を解散させた自身の判断を改める必要があるはずです。広報部門があれば、このような問題は発生した際にしっかりとテスラとしての主張、言い分を織り込んだリコール発表のリリースをNHTSAよりも先に出せたはずです。

Source:Elon Musk(Twitter)

via:Electrek