小川先生

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「イボ」といっても、いろいろな種類があります。なかにはウイルス感染によって発症するイボもあり、うっかりすると、他人に感染させてしまったり、全身に症状が広がったりすることも。一体、ウイルス性イボはどのように治療すれば良いのでしょうか。正しい対処法について、あさかリードタウン皮フ科の小川先生に教えていただきました。

監修医師:
小川 智広(あさかリードタウン皮フ科 院長)

2011年、東京慈恵会医科大学卒業。東京慈恵会医科大学附属青戸病院(現・東京慈恵会医科大学葛飾医療センター)、自治医科大学附属病院皮膚科などを経て、2020年12月あさかリードタウン皮フ科開設。これまで慈恵医大のいぼ外来、レーザー外来、光線治療専門外来、自治医大の脱毛症外来、腫瘍外来など数多くの専門外来に従事。それらの経験を生かし、手術・処置・レーザー治療も含め、クリニックで提供可能な医療に尽力。年齢問わず気軽に受診できる地域の「かかりつけ医」として親しまれている。

イボにもいろいろな種類がある

編集部

そもそも「ウイルス性イボ」とはなんですか?

小川先生

正しくは、ウイルス性疣贅(ゆうぜい)といい、ヒト乳頭腫ウイルス(ヒトパピローマウイルス/HPV)というウイルスが皮膚に感染することでおこるイボのことを意味します。

編集部

イボがウイルスに感染することでできるとは知りませんでした。

小川先生

ひと口にイボといっても、実はいろいろな種類があるのです。大きく分けて、イボにはウイルスに感染してできるタイプのものと、そうでないタイプのものがあります。ウイルス以外のタイプでは、紫外線や加齢もイボの原因になります。

編集部

それらの総称が「イボ」なのですね。

小川先生

そうです。HPVによって発症したウイルス性イボは、さらに細かく分類されます。そのなかで代表的なものが、尋常性疣贅。これは表面がざらざらした白色や褐色のイボで、主に、手指や足の裏などにできます。

編集部

他にも種類があるのですか?

小川先生

はい。扁平疣贅(へんぺいゆうぜい)は多くの場合、顔や腕などにできる平たいイボで、若い女性に多くみられます。また、足底疣贅は文字通り、足の裏にできやすいイボのことです。ミルメシアともいわれます。そのほか、先端が尖っていて外陰部や肛門のまわりにできる尖圭(せんけい)コンジローマもあります。

ウイルス性イボの発症と自覚症状

編集部

そもそもなぜ、HPVに感染するのですか?

小川先生

主に傷口などからウイルスが侵入し、皮膚感染することが原因と考えられています。ただ「傷口」といっても目に見えない擦り傷やかすり傷程度のものも含むので、いつ感染したか自覚がないというケースも少なくありません。

編集部

他人にうつしてしまうこともあるのでしょうか?

小川先生

一度体内にウイルスが侵入すると、患部を触った手で体のほかの部位を触ることでイボが広がったり、周囲の人に感染を拡大させてしまったりします。

編集部

ウイルスの潜伏期間はあるのですか?

小川先生

一般に、ウイルスに感染してから症状がでるまでは1~6カ月とされています。イボのできはじめは、小さく少し盛り上がっている程度ですが、時間が経つとどんどんウイルスが増殖し、イボが大きくなっていきます。ひとつだけポツンとできることもありますが、多発したり、つながってできたりすることもあります。

編集部

ウイルス性イボができると、どのような自覚症状がありますか?

小川先生

大抵の場合、痛みやかゆみはありません。ただし大きなイボの場合は、押すと痛みを感じることもあります。そのため、足の裏にできる足底疣贅は、タコや魚の目と勘違いされることも少なくありません。

編集部

ウイルス性イボは自然治癒するのですか?

小川先生

ウイルス性のイボは、皮膚の免疫力が高ければ、自然治癒することもあります。しかし、なかなか治らないことが多いのが実際のところです。特に、免疫力が弱い人、アトピー性皮膚炎の人、慢性疲労の人、虚弱体質の人、高齢者などは免疫力が低下しているため、なかなか治りづらいこともあります。

ウイルス性イボは液体窒素で凍らせて治療する

編集部

ウイルス性イボはどのように治療するのですか?

小川先生

よく行われるのが、液体窒素による凍結療法(冷凍凝固療法)です。これは、ウイルスが感染した皮膚を、マイナス196度の液体窒素で凍らせる治療法。皮膚の細胞ごと、ウイルスを破壊するのです。

編集部

治療効果はいかがですか?

小川先生

イボの大きさや、イボのできた部位にもよりますが、おおむね良好です。手のひらなど皮膚の薄いところは数回の治療で良くなることもあります。ただし、足の指や足の裏など皮膚の厚いところにできたイボは1~2週間に1度治療を行い、治るまでに数カ月かかることもあります。また、イボの個数や発症部位にもよりますが、人によっては完治するまで年単位で時間がかかることもあります。

編集部

ほかには、どのような治療がありますか?

小川先生

角質を軟化させ、皮膚を白くふやかしながらイボも小さくしていくサリチル酸絆創膏や軟膏など、塗り薬を使うこともあります。そのほか、漢方薬のヨクイニンを処方することもあります。

編集部

それらの治療は保険で行えるのですか?

小川先生

凍結療法や塗り薬、ヨクイニンは保険が適用になります。しかし、保険適用外を含めればもっとたくさんの治療法があるので、なかなか治らないという場合は、医師に相談してみると良いでしょう。

編集部

ウイルス性イボの予防のために、気をつけた方がよいことはありますか?

小川先生

まずは、ウイルスの侵入口になってしまう傷を作らないということ。それから、イボができたら自分でいじったり触ったりすると、かえって悪化してしまうこともあるので、気をつけましょう。イボがまだ小さいうちなら、治療は軽いもので済みますから、できるだけ早めに受診するようにしましょう。

編集部

最後にメッセージをお願いします。

小川先生

イボの治療は、長いと1年以上かかることもあります。その人の免疫力や、イボができた部位、個数などにもよりますが、「イボの治療は根気よく治すことが大事」と覚えておいてもらいたいですね。実際、長年治療されている方で、なかなか治らないと思っていたら、あるとき急に改善したということもあります。それは、その人の免疫力が上がり、治療の効果が一気に現れ始めたということです。ぜひあきらめず、医師の指示にしたがって治療に取り組んでもらえればと思います。

編集部まとめ

イボの治療は長い期間をかけて取り組むことが大切。自己判断で治療を中断したり、途中であきらめたりせず、根気よく治療を続けましょう。思ったような効果が出ないと思ったら、医師に相談を。場合によってはセカンドオピニオンを求めてみるのもいいかもしれません。

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