Mさん

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2020年10月に出産をしたばかりの新米ママ・Mさんは翌年4月、首にできたしこりが気になり、検査を受けた結果、血液のがん「悪性リンパ腫」と診断されました。現在も病気と闘う日々を送っています。そんな彼女が重要性を訴えているのが、病気の早期発見早期治療です。果たして、どのようにしてがんが発覚し、現在どのような治療を受け、何を拠り所として闘病を続けているのか。リアルなお話を伺いました。

※本記事は、個人の感想・体験に基づいた内容となっています。2021年8月取材。

体験者プロフィール:
Mさん(仮称)

1992年生まれ、28歳。夫と息子(0歳)と3人暮らし。首のしこりが気になり検査。しこりは良性だったが、生検で産後6ヶ月の時に悪性リンパ腫と診断を受ける。首周辺と心臓付近のリンパにもがんがあると診断され、現在は抗がん剤での治療中。(2021年8月現在)

記事監修医師:
楯 直晃(リアラクリニック 院長)
※先生は記事を監修した医師であり、闘病者の担当医ではありません。

首のしこりが気になり受診したのがはじまり

編集部

病気が判明した経緯について教えてください。

Mさん

2021年4月にリンパ節の生検のために一部切除し、しこりを3つ取り出しました。そして5月に、悪性リンパ腫と診断されました。つまり血液のがんですね。

編集部

どのような検査をしましたか?

Mさん

最初にエコー、CT、血液検査、針生検を受けたのですが、結果は良性と診断されました。ですが、その後も倦怠感が続き、痛み止めを飲み続けていたため4月に再度受診してエコー、造影剤を投与してのCT、血液検査をおこないました。そしてリンパ節を生検のため摘出し、悪性リンパ腫と診断されたという流れです。

編集部

病院に行こうと思ったきっかけは何ですか?

Mさん

自身で顔から首にかけてリンパマッサージをしていた時に、鎖骨の上にしこりを2つ見つけました。それが気になって病院へ行ったのが最初の動きです。

編集部

しこりに痛みなどはなかったのですか?

Mさん

医師からも「痛みや気になる症状はありますか」と聞かれたのですが、特にしこりを触っても痛みはなく、変わった症状もありませんでしたね。加えて、口頭による問診がありましたので、2020年10月に出産してからの半年間で一気に10kgの体重が落ちたことや、夜中に2度パジャマを着替えるほどに寝汗をかいていたこと、熱が出る前のような節々の痛みと倦怠感があったこと、そのため毎日痛み止めを飲んでいたことを伝えました。

編集部

産後に体調が悪かったんですね。

Mさん

そうですね。産後のホルモンバランスの乱れによる体調不良だと思っていたので、医師から質問をされた時は「それがしこりに関係あったの?」と意表を突かれましたが、私の症状を聞いた医師の顔色が変わり、すぐに検査をおこなうことになりました。

家族やSNSのつながりに励まされる闘病の日々

編集部

どのように治療を進めていくと医師から説明がありましたか?

Mさん

「ABVD療法」という4種の抗がん剤を組み合わせた治療法を用いて、2回投与を1クールとし、合計6クールおこなうと説明を受けました。入院はせず、2週間に1回病院で抗がん剤を投与。日帰りで自宅療養ができました。抗がん剤を打つ前には、吐き気止めを錠剤と点滴で投与すると言われ、少し安心したのを覚えています。

編集部

病気が判明したときの心境について教えてください。

Mさん

医師に「血液のがんです」と言われた時はやはりショックでした。医師からは「7~8割は治ります、ただ今後5年間必ず生きられるかどうかはわからない」と言われ、もしかしたら数年で自分の命が終わるかもしれないと想像すると怖かったです。余生を考えたのは、はじめてでした。

編集部

病気が判明した時に、最初に思い浮かんだのは?

Mさん

一番最初に思い浮かんだのは、やはり息子のことです。そして、幼いうちに母親を亡くすようなつらい体験を、絶対にさせたくないと思いました。これまで当たり前だった日常が、息子にとって家族との貴重な思い出になるんだと気づかされましたね。

編集部

治療開始するにあたり、大変なことはありましたか?

Mさん

治療を開始する前は、抗がん剤の副作用でどれくらい寝たきりになるか不安でした。夫も仕事があり、私の両親も夫の両親も遠方に住んでいるので、どうやって子育てと治療をしようかと考える日々でした。調べていくうちに地域の子育て支援や、福祉サービスによるベビーシッター、保育園を利用する方法も見つけましたが、体調が優れない中での手続きや、夫が残業になった場合のお迎えなど、難しい点がたくさんありました。

編集部

今はご家族がお手伝いしてくださっているとお伺いしましたが。

Mさん

はじめは家族に迷惑をかけたくないと思っていましたが、家族に状況を話すと、進んで「手伝いに行く」と言ってくれました。現在は家族が育児を手伝いに来てくれているので、安心して治療に励んでいます。

編集部

普段の生活の様子は変わりましたか?

Mさん

抗がん剤により免疫力が下がり、普通の風邪でも肺炎などになる可能性があると主治医から説明を受けました。なので、普段から人混みは避け、手洗い・うがい、アルコール消毒を徹底しています。

編集部

治療中の心の支えはなんでしたか?

Mさん

私はがんが見つかり、前向きに治療をすることをSNSで公表しました。すると、連絡をとっていなかった友達や同じように病と闘う方たち、これまでの人生では出会うことのなかった方達から応援メッセージをいただくようになりました。自分の想像を遥かに超える、たくさんの人たちの優しさに触れ、今では治療がつらい時の大きな心の支えです。痛みがあるときも、メッセージを読んでいると、不思議と痛みが和らぐので、応援には本当に励まされています。

編集部

ほかにも治療中に始めたことはありますか?

Mさん

友達のすすめで「やりたいことリスト」を書くようになりました。目の前のつらい治療から離れて、未来の楽しいことを想像するのは効果的です。治療は、楽しいことを経験するまでの過程にすぎないと思えるようになりました。

息子を抱きしめるなどの普通のことが幸せ

編集部

現在の体調や生活などの様子について教えてください。

Mさん

私の場合は、抗がん剤を打つと5日間は吐き気とだるさが出ます。6日目以降は吐き気は和らぎますが、今度は背部の痛みがつらくなります。体調が回復するまでに10日ほどかかり、15日目には次の抗がん剤を投与するという毎日。元気な3~4日の期間が唯一の救いで、目が覚めて体が軽いと幸せを感じます。息子を抱きしめたり、大好きな料理をしたり、散歩をしたりと、普通のことが心を満たしてくれますね。

編集部

医師から転移などの話はありましたか?

Mさん

その後、骨髄穿刺(こつずいせんし)と生検をおこないましたが、現在は骨髄への転移はないと診断されています。

編集部

もし昔の自分に声をかけられたら、どんな助言をしますか?

Mさん

がんが見つかるまでの産後半年間は、ずっと倦怠感と寝汗に悩まされていました。当時は、勝手に世の中の産後のママはみんなこうなんだと思い込み、自己判断で痛み止めを飲んで毎日をやり過ごしていましたね。はじめての育児に子どものことで精いっぱいでしたが、今思えばもう少し自分を大切にして、早めに病院で相談していれば結果は違ったかもしれないよと言いたいです。でも無痛だったしこりを放置せず、数日後には病院へ行った点は良かったと思います。

編集部

「悪性リンパ腫」を意識していない人々に一言お願いします。

Mさん

自分の人生に「がん」というワードが出て来るなんて思いもしませんでした。家族にがんを患った人もいないので、正直ドラマの中の遠い世界に感じていたんです。でも、実際には誰の身にも起こりえます。私は、20代でがんが見つかりました。若いから大丈夫と過信せず、定期的に健康診断を受け、気になる症状がある時はすぐに病院へ行ってほしいです。

編集部

若いからといって過信せずというのは必要ですね。

Mさん

そうですね。私は、自分でリンパマッサージをしているときに偶然しこりを見つけました。見えない部分にがんがある可能性もあるので、病院で検査するのが1番ですが、自分で首筋や脇の下、股間節のあたりにあるリンパにしこりがないかセルフチェックすることをおすすめします。

編集部

医療従事者に望むことはありますか?

Mさん

私は治療にあたり不安がいっぱいでしたが、主治医は分かりやすく病気の説明や治療方針を説明してくださり、それだけでも不安は取り除かれました。また身体のことだけでなく、子育てとの両立も一緒に考えてくださり、副作用の出方についても考慮した助言をいただきました。がんに限らず、病は心にも影響すると思うので、心と身体の両方に寄り添っていただけると私たちは嬉しいです。

編集部

最後に、読者に向けてのメッセージをお願いします。

Mさん

がんの種類はさまざまですし、読者さんの身に潜んでいる可能性もあります。なので、普段から頑張っている自分をいたわるような気持ちで、病院で健康診断を受けてほしいです。今私と同じように病と闘っている人たちは、毎日つらく苦しい治療と向き合っていると思いますが、一緒に頑張りましょう。

編集部まとめ

悪性リンパ腫という、血液のがんと診断されても明るく乗り越えようと日々闘病されているMさん。家族の支えや手助け、そしてSNSでつながる励ましの輪が病気や治療を乗り越えられる原動力となっています。しこりが気になり病院へ行ったことがきっかけで早期に治療をはじめることができたMさん。「気になったら病院へ」と早期発見への強いメッセージがそこにはあります。

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