愛犬と人が快適に暮らす家づくり。断熱、調湿、保温性を考慮して冬の寒さ対策を
新しく建てる家は、愛犬も快適な家にしたい。そう考えるなら、冬の寒さ対策が重要です。小型犬、短毛の犬種や、抜け毛の少ないシングルコートの犬種は、寒さに弱いからです。一級建築士で愛犬のための家を数多く設計してきた筒井紀博さんが、犬はもちろん人間にとっても快適な家づくりのポイントを教えてくれました。大事なのは断熱性が高く、温度変化の少ない家にすること。そして、調湿・保温性のある建材を使うこと。愛犬のためにも、ぜひ参考に。
愛犬と快適に暮らすための家づくりのポイントは5つ
寒い冬でも快適に愛犬と暮らせる家づくりのポイントは大きく分けて5つあります。それは以下のポイントです。
愛犬がうれしい家づくりのポイント
1.断熱性の高い窓にする
2.室内の温度変化の少ない家
3.調湿効果のある建材を選ぶ
4.床材は保温性のあるタイプに
5.冬も快適な植栽計画を立てる
では、さっそく解説していきます。
1.断熱性の高い窓に。おすすめは犬にも優しい木製サッシ
寒さが苦手な愛犬にとって、断熱性能の高い家は必須です。ただ、いくら壁の中の断熱材の仕様をよくしても、いちばん熱が逃げやすいのは窓です。
最近では各メーカーが樹脂製サッシなどの断熱性能の高いサッシをつくっており、これらをうまく利用することが大切。
とくにおすすめしたいのは「木製サッシ」です。
愛犬たちが直接出入りする窓、触れる窓はどうしてもなめたりかんだりする可能性があります。そのようなときでも無塗装の木製サッシに自然塗料を塗布した窓を採用していれば、安心です。
また、ガラス選びも重要なポイント。
住宅においては、最近はペアガラスが標準となり、以前に比べると断熱性能は格段に向上してます。
しかし、このガラスにも「断熱仕様」と「遮熱仕様」がといった仕様の違うものがあります。さらにトリプルガラスを採用した寒冷地仕様のガラスなどもありますので、建築を計画される地域や立地条件などを考慮し、ガラス選びをすることが重要になります。
2.低い位置で生活する犬は、温度変化が少なく均一な家が快適
夜、エアコンを切って寝たら、朝起きたときに寒くてふとんから抜け出せない。こんな経験は、どなたでもあると思います。
じつは、犬にとってもこの寒暖の差が苦手。昨今の住宅は、高気密高断熱の仕様となり、以前の住宅に比べると熱も逃げにくくなっていますが、さらに空調効率を高めるために、「蓄熱層」を設けると効果的です。
たとえば床下にコンクリートを打ち、温水パネルを設置したり、水の蓄熱層を設けたりする方法があります。これにより、一度温まったたら冷めにくくなり、家全体を均一の温度に保ちやすくなります。
愛犬たちは人よりも低い位置で生活しているので、家全体が均一の室温にすることは重要です。
また、床暖房を採用する場合には必ず床暖房対応のラグやマットを使うようにしましょう。通常のラグやマットだと熱がこもってしまい、床暖房の機器を壊してしまう恐れがあるからです。
3.壁や天井には、調湿効果のある珪藻土や自然素材の塗料がおすすめ
一般的に室内の湿度は40%〜60%くらいがよいとされています。また、犬たちにとっては50%〜60%くらいがよいと言われています。
ところが冬場は、どうしても湿度が下がりがち。そこで加湿器を利用される方も多いと思いますが、湿度が60%を超え、高くなりすぎると結露が起き、建物にはあまりよろしくない環境となってしまいます。また、ダニやカビも発生しやすくなるのです。
ですから室内に湿度計を置き、こまめに湿度をチェックすることが大切。
また、室内の仕上げ材を調湿効果のある建材にすれば、湿度が高くなりすぎないよう、コントロールすることも可能です。
壁や天井材におすすめしたいのが、珪藻土や帆立貝や卵の殻などを利用した、自然素材の塗料です。ただ、気をつけてほしいことがあります。
それは調湿効果をうたっている商品のなかにも、吸湿はできても放湿が苦手な素材があることです。これはカビの原因にもなりますので、ご注意ください。
4.床材は保温性があり、硬すぎず肉球にひっかかるものを!
愛犬との家づくりにおいて、よく取り上げられるのは床材です。
滑りにくく、傷がつきにくい商品が各メーカーから「ペット対応商品」として出ていますが、これらの商品、大型犬になるとさすがに傷だらけにされてしまいます。
中型犬や大型犬、小型犬でも運動量の多い犬種では、床に傷はつきます。したがって大前提として、傷がついても味わいになる床材を選ぶといいでしょう。そのうえで、冬場にポイントとなるのは保温性のある床材。
さらに硬すぎず肉球にひっかかる素材であれば、愛犬の足腰にも優しくて安心できます。
床材でおすすめしたいのはパイン材やアルダー材などの密度の低い無垢材。また、無垢の木タイルもいいでしょう。塗料は、なめても安全な天然由来のものを採用してください。小型犬であればコルク材もおすすめです。
じつは、いちばん好ましいのは三和土(タタキ)です。自然素材ですのでなめても安心ですし、調湿消臭効果もあります。ただし、メンテナンスはそれなりに大変ですので、採用される場合はそれなりの覚悟が必要です。
5.冬も快適な植栽。犬にとって害のある植物もあるので注意を!
外構工事も家づくりにおいては重要な要素となります。
犬は外で遊びたがる子が多いので、庭も室内も自由に走り回ることのできる住まいが、理想的です。そして、庭に植栽が入ると、建物に命が宿ったような雰囲気が醸し出されます。
植栽計画では「落葉樹」と「常緑樹」の配置の工夫が必要です。たとえば、南側の窓の前に落葉樹を植えれば、夏場は熱と光をさえぎり、冬場は温かい日差しを取り込んでくれます。
また、常緑樹はプライバシーを確保しやすく、目隠しとして利用すること可能です。落葉樹だけでは冬場が寂しい風景になりがちなので、うまく常緑樹を織り交ぜながら計画されるとよいでしょう。
ただし、犬にとって害のある植物もあるので、注意してください。よく見かける植物としては、ツツジやクリスマスローズなどが、よくないとされています。