障害のある人も、ない人も。一緒につくる「バリアフリーな社会」とは?
持続可能な社会をつくるための「SDGs」という言葉が注目されています。一見難しそうに感じますが、じつは私たちの暮らしのなかに取り入れられることがたくさんあります。今回のテーマは「バリアフリーな社会」について。SDGsに詳しいフジテレビの木幡美子さんに、身近にできることについてつづってもらいました。
目の不自由な方とともにつくる「音声ガイド」ができるまで
木幡さんも参加する「ラジオ・チャリティ・ミュージックソン」募金活動の様子
アナウンサー時代にやっていた仕事のひとつに「解説放送」というものがあります。目の不自由な方々にもテレビを楽しんでいただきたいと、副音声を使って映像に説明をつけるものです。
たとえば、「男性がドアをあける」とか「海で遊ぶ子どもたち」など、画面に登場する人の動作や風景などをナレーションで補います。リモコンの「音声切換」ボタンを押すと、通常の音声に加えてこの解説放送を聞くことができます。残念ながらすべての番組につけられるわけではなく、まだ十分とは言えませんが、解説放送つきの番組は年々増えています。
また、映画にも「音声ガイド」というものがあり、フジテレビが制作する映画のほぼすべてに、解説放送と字幕がついています。
●だれでも安心して映画を楽しめる「ユニバーサルシアター」
東京・北区にあるシネマ・チュプキ(※チュプキ=アイヌ語で自然の光)は、目の不自由な人も耳の不自由な人も、車いすの人も、だれもが安心して映画を楽しむことができるユニバーサルシアター。駅からの送迎もしてくれるとあって定期的に訪れる人も多いそうです。
私も音声ガイドを聞きながら映画を観たことがありますが、ストーリーが理解しやすくなり、これはすべての人にとって役に立つサービスだと感じました。
●目の不自由な方の生の意見でできあがる「音声ガイド」
また、音声ガイドの制作過程では、目の不自由な方に聞いてもらい、その説明で本当に理解できるか、映像がイメージできるかどうか、意見をもらうのです。
その作業に立ち会ったことがあるのですが、最初はガイドで楽しむ映画ってどんな感じなんだろうと思っていましたが、視覚障害者の皆さんが本当に楽しそうに参加していて、しかも「私たち、公開前に見られるなんてラッキーですね!」と根気のいる作業にもかかわらず前向きに取り組んでくださったのが印象的でした。
さらに、私の「声」を認識してくれて、「テレビで聞いたことがある」と言って下さったのです!「テレビを見て下さっているんですね?」と聞いたところ、「よく見るよ」と。
心の目でしっかりと見てくれているんだ、と感じました。その時から、私の中で障害が「ある・ない」をあまり意識しなくなりました。だれもがなにかのマイノリティ。みんなで助け合えばいいんだと。
では、具体的に私たちになにができるのでしょう。
【皆さんにもできること〜目の不自由な方のために】
視覚障害者を見かけたら…
・「なにかお手伝いできることはありますか?」と声をかける
(大丈夫ですか? ではなく、自分にできることはありますかという聞き方がよい)
・迷っている、困っているかどうかを見極める力を養う
・突然体に触れるのは驚かせてしまうのでさけましょう
・誘導を希望された場合は、左右どちらに立った方がいいかを確認し、肩やひじを相手につかんでもらう
・半歩前を歩く
・段差が少しでもある場合は、「段差があります」「一段下がります」などイメージできるように伝える
・階段はとくに危険ですので、一段先を一定のリズムで進む
・振り向いたり、急に止まったりしない
・「目的地が10mくらい先に見えてきました」などまわりの様子を言葉で説明するとさらによい
・相手の手を引っぱったり、後ろから押すなどは不安にさせてしまうのでNG
<駅のホームで転落事故・踏切での事故を防ぐために>
・危険を感じたら迷わず呼びかける
・「盲導犬(白杖)の人、止まって」とその人が自分のことだとわかる言葉「+止まって」を言う
・音訳ボランティアをやってみる(書籍や雑誌、新聞の内容を音声にして伝える)
・光を閉ざした“純度100%の暗闇”体験ダイアローグ・イン・ザ・ダークに参加してみる
●「音の出る信号機」を増やすために
目の不自由な方たちが安心して街を歩けるために役立っているのが「音の出る信号機」。じつは、これを増やすことに私たちも貢献できるんです。ニッポン放送では、目の不自由な方の社会参加につながるよう毎年11月〜翌年の1月末まで「ラジオ・チャリティ・ミュージックソン」というキャンペーンを通じて募金を呼びかけています。
その中心となるのは、クリスマス・イヴの正午から24時間にわたって生放送でお届けしている特別番組で、コロナ前は私たちフジ・メディア・ホールディングス各社有志で募金活動に参加していました。お預かりした募金で設置した音の出る信号機は、現在3,245基になりました。
●検定をとおして、より理解を深める方法も
また、障害者に対する理解を深めるために、ユニバーサルマナー検定というものがあります。
適切な声がけやコミュニケーションを行うために、まずは多様な人々の特徴や心理状況を知ることから始めようというもので、私も5年前に3級を受講しましたが、はじめて知ることが多く大変ためになりました。
ユニバーサルマナー検定のサイトを見ると、受講の方法も(1)eラーニング、(2)オンライン、(3)会場で受けるなど多様な選択肢があるようです。
全社員で受講する会社もあるとか。まずは知ることから、ですね!
だれもが生きやすい社会のために、みなさんにもできることはたくさんあります。新型コロナウイルスの流行もあってか、なんとなく人と距離をおきがちで、他人に無関心になっていませんか。でも、困っている時はお互いさま!
とにかく、ほんの少しだけ意識を変える、アクションを起こしてみることが大事です。
次回も多様性理解・ダイバーシティ・インクルージョンというテーマでお届けします。