HKT48が語る、デビュー10周年を経て見つめる「未来」と劇場への想い
11月26日に劇場公演デビュー10周年を迎えたHKT48が、4年ぶりの2ndアルバム『アウトスタンディング』をリリースする。
【写真をもっと見る】HKT48の矢吹奈子、田中美久、運上弘菜、本村碧唯、松岡菜摘
11thシングル「早送りカレンダー」(2018年)から、14thシングル「君とどこかへ行きたい」(2021年)までの全シングル曲と、今年6月にHKT48を卒業した宮脇咲良の卒業ソング「思い出にするにはまだ早すぎる」を全形態に収録。アルバムリード曲は、IZ*ONEでの活動を終えHKT48に復帰した矢吹奈子が単独センターを務める「突然Do love me!」。J-POP meets ファンクなサウンドでHKT48の「これから」を示す軽快な曲に仕上がっている。今回は3期生の矢吹、田中美久、4期生の運上弘菜、10年の歩みを知る1期生の本村碧唯、松岡菜摘に話を聞いた。
―2ndアルバムのリード曲「突然Do love me!」は、いい意味で予想を裏切られるというか、今までのHKT48のイメージとは異なる曲だなと思いました。
矢吹:珍しく女の子目線での気持ちを歌った曲だと思います。今までは男の子の気持ちを歌った曲がHKT48には多かったので。女の子から男の子に向かって積極的にいく歌詞だから、秋元(康)先生からメンバーへ、活動に対して「自分から積極的に向かって行ってもいいんだよ」っていうメッセージが込められてるのかなって思っています。
松岡:イントロから疾走感があってボルテージが上がります。コンサートの一曲目が似合いそう。11年目に入る節目だということもあって、明るくて、爽やかでポップな感じ。ダンスもポップでかわいいよね。
矢吹:かわいい。リズム的にも一緒に踊りたくなるような曲です。
松岡:掛け声もあったり。
本村:早く声を出せるようになったらいいけど。
矢吹:今はできないですけど、いつか声を出せるようになったら、必ずパフォーマンスしたいです。
田中:いいなぁ……。
一同:?(笑)
田中:歓声が聞こえるライブを想像してみたら、いいなぁと思って(笑)。ファンの皆さんがまた声を出せるようになってコンサートでこの曲をやったら、さらに盛り上がるんだろうなって。
―この曲は矢吹さんの、8年ぶりのセンター曲なんですよね。
田中:8年ぶりかぁ!
矢吹:そうですね。「ウインク(ウインクは3回目)」以来の単独センターなので。8年……。
―8年ぶりに戻ってきたHKT48のセンターはどうですか?
矢吹:「ウインク」の時はデビューしてすぐだったので、良くも悪くもプレッシャーとかなかったんですよ。何も考えられなかったというか、先輩たちしかいない中だったので緊張しかなくて。今回センターって言われた時とは、感情的にはまったく違いますね。今回は、HKT48に帰ってきて自分の中で欲が増したというか、センターに立ちたいって思ってたので嬉しかったです。ちょっと不安もあったんですけど、この選抜のみんなでミュージック・ビデオを撮りながら、みんなを引っ張っていけるセンターになれたらいいなって思いました。
矢吹奈子(Photo by Masato Moriyama)
復帰した矢吹奈子の存在感
―IZ*ONEで経験したことをHKT48にフィードバックしたいという気持ちもありました?
矢吹:韓国でたくさんのことを学んで成長できたので、HKT48にも生かせたらなとは思っていました。でも……どうなんだろう。変わった感じしますか?
松岡:とっても変わった感じがする。今までの奈子は、どっちかっていうとついてきてくれる感じだったんですけど、HKT48に帰ってきて、引っ張ってくれるようになった。たくましくなって帰ってきたなって印象です。
田中:振り付けのレクチャーに私たちはリモートで参加して、奈子だけ先生に直接教わっていたので、ミュージックビデオの撮影当日に奈子がみんなに細かい振りを教えてくれたんです。それってちゃんと自分ができてないと教えられないじゃないですか。そこは本当にすごいなって思ったし、成長してるなって感じて。なんか上から目線みたいになってるんですけど(笑)、本当に尊敬する存在です。
運上:奈子さんが帰ってきてくださって、センターになってくださったのが本当に今のHKT48にとってありがたいです。注目してくださる方もすごく多くなるし、今回の曲も奈子さんがセンターで引っ張ってくださったからできた曲だと思います。自分もセンターポジションを経験していますが、これまで自分は何してきたんだろうって反省しちゃうくらいしっかり教えてくださるので、もっと吸収したいなって思ってます。
運上弘菜(Photo by Masato Moriyama)
―強力なメンバーが復帰したことで、勢いに弾みがつくと思いますし、すごく前向な2ndアルバムになりましたよね。1stアルバムはデビュー当時の元気でやんちゃなHKT48のイメージが強く出ていたと思うけど、2ndアルバムに収められた全形態共通曲を聴くと、HKT48の多様性がよく出ていますよね。曲のアプローチも様々ですし。
松岡:今回明るい曲が久々で、ここ5年くらいのシングルはかっこいい曲が多かったんです。「意志」とか「3-2」とか、デビュー当時にはなかった曲だった。HKT48の歴史の前編が1stアルバムだとしたら、後編が2ndアルバムだと思います。
矢吹:HKT48はなんでも挑戦するというか、かわいい系でもかっこいい系でも、どんな系統でももっといろんなジャンルに挑戦したいです。どんな方向で行く、というよりも、とにかく色々やってみたいなと思ってます。
―矢吹さんは自分が演者としてステージに立ってHKT48のみんなと一緒にパフォーマンスしてる時に、HKT48のポテンシャルの高さを実感することもありますか?
矢吹:あります。グループを自画自賛するみたいで恥ずかしいんですけど、本当にみんな表現力が豊かだから、どの曲でも似合うなって思います。
アルバムの中で思い入れのある曲
―田中さんはアルバムに収録されている曲で、特に思い入れのある曲はありますか?
田中:「わたしのふるさと」っていうソロ曲(通常盤 TYPE-Cに収録)は、3年前の総選挙ランクインをきっかけに、自分で作詞・作曲させていただいた楽曲なんです。どのシングルのカップリングにも入ってない曲で、YouTubeだけで聴ける曲なんです。それが今回のアルバムに入っていて、すごくびっくりしたし嬉しかったです。
―作詞・作曲には時間かかりました?
田中:地元が熊本なんですけど、想い入れのある熊本に向けて書いた曲なので、時間はかかったかなと思います。
―地元への想いは伝えられましたか?
田中:はい! 地元の方から「元気付けられました」って言葉をたくさんいただきましたし、ファンの方にも「熊本の良さを知れました」と声をいただきました。
田中美久(Photo by Masato Moriyama)
―本村さんは、思い入れのある曲はありますか?
本村:「How about you? / Lit charm」(通常盤 TYPE-Bに収録)です。私が自分でやりたいって考えて結成させていただけたダンスユニットの曲で、センターをやらせてもら えたんです。初めてのセンターだったのでファンの方もすごく喜んでくれましたし、私にとっても思い出深いです。
―松岡さんは?
松岡:私もユニットっていう点で被っちゃうんですけど、「キスの花びら / Chou」です。このユニットも私が考えて結成させていただけたんですが、選抜だけとかセンターだけじゃなく、いろんなメンバーにチャンスがあるって意味で、後輩たちにも、みんなが動いたらやりたいことが形になるよってことを伝えたくて、私とか碧唯が動いたので、そういう意味ではアルバムに残せてよかったなって思います。
―運上さんはどうですか?
運上:私は「早送りカレンダー」から選抜に入らせていただいているので、1stアルバムには4期生の曲以外、ほとんど参加できなかったんです。今回のアルバムには自分の声が入った曲を収録していただいているので、ファンの方には喜んでもらえるのかなって思います。思い入れのある曲だと、初めてのユニットで歌った「あっけない粉雪」という新曲がアルバムには入ってるので、それがすごく嬉しいです。
―1stアルバムを出した時(2017年)と比べてみると、今回のアルバムを取り巻く時代や状況はまったく違いますよね。こうやってHKT48が10年間続いてきたことに関してはどう思いますか?
本村:体感では一瞬のような感じなんですよね。
矢吹:でもしっかり歴史があるってことを、10周年という節目で振り返れているので。自分たちだけじゃ10年も続けられていないし、もちろん先輩グループがあるおかげではあるんですけど、後輩メンバーがたくさん入ってきてHKT48の歴史を作ってくれて、応援してくださる方がいる。HKT48のファンの方たちは、推しメンだけっていうよりも最初に箱推しでHKT48を好きになってくださることが多いので、そういうふうにまずはグループを好きになっていただけるような存在であり続けたいなって私は思います。
松岡:私も10年って考えれば長いと思うけど、体感的にはそんな感じは全然しなくて。もうそんなに経ったんだって感じです。今回のアルバムは後輩のメンバーたちが歌ってる曲がすごく増えたなぁって思います。選抜メンバー以外にもすごく魅力的なメンバーがたくさんいて、みんな頑張って一緒に進んでる感じがこのアルバムに出てるんじゃないかなって、収録曲が並んでるのを見て感じましたし、私も嬉しかったです。
―10年でアルバム2枚っていうのも、冷静に考えたらすごいですよね。シングルを主体としているグループとはいえ。
矢吹:今回「アルバム作るんだ!」って、私たち的には変化球でした。そろそろシングルがリリース出来れば嬉しいなって思ってたらまさかのアルバムだったので、私たちもびっくりしてます(笑)。
HKT48の普遍的な「強み」
―矢吹さんは一度グループから離れてますけど、客観的な目線で見てHKT48のいいところってどういうところだと思います?
矢吹:実はすごく大事なことなんですけど、メンバーが仲いいところとか? 広い楽屋でも、自然と輪になってるというか。それぞれ離れていても、気づいたらみんなでお話ししてることが多いですね。それってやろうと思ってできることじゃないと思うので、HKT48ならではの良さかなと。あとは、後輩がどんどん前に出てくるようになって、後輩たちの気持ちがちゃんと前に伝わってくるのがいいところだと思います。
―根本的なところは10年前と変わってないというか。
松岡:そうですね。その雰囲気って、もともとさっしー(指原莉乃)が作ってくれたものだったりするので、それは今も変わらず。いい意味であまり上下関係が存在しなくて、大家族のような感じです。
―HKTファミリーですね。しかも九州に根ざして活動していて、地元の人たちにも家族の力を還元できるわけだから、いい循環ですよね。
矢吹:それができていたら嬉しいです。
―コロナ禍になる前、コンサートや握手会を通してファンと直接コミュニケーションできていた頃を今振り返るとどういう気持ちになりますか?
運上:毎週・毎月会えるのが当たり前だったのに、突然パタって会えなくなって、コンサートもだし、握手会もできなくなってしまって。不安はありましたけど、それでも変わらずに応援してくださる方がいたので、本当にファンの方の愛に感謝しています。
―その時は何が支えだったんですか?
運上:SNSだったり、無観客のライブ配信もしていたので、それをファンの方が見てくださって「よかったよ」ってコメントしてくださったり。その一つひとつに支えられた時期はありました。
―田中さんはどうですか?
田中:会えない期間に気持ちが沈んでしまうこともありましたけど、逆にその期間があったからこそ、日々普通だと思っていた日常がありがたく思えるっていうか、当たり前じゃないんだなってことに気付かされました。
―劇場公演が再開してから、元通りになってきてるなって感じはあります?
田中:そうですね。今はお客さんを半分にしてやらせていただいてるんですけど、
もはやその、ファンの方が目の前にいてパフォーマンスをしている光景すら珍しく思えてきて。これでまたコールできたりするようになったら……。
矢吹:感動しそう。
田中:涙が出てきそう。どのアーティストさんもそうだと思うんですけど、エンタメ業界も今すごく大変だと思うから、これを乗り越えたらすごく明るくなるんじゃないかなと思いました。
―大変な時に周りに仲間がいたことは、やっぱり助けられたなって思いますか?
田中:本当にそれは思いました。会えない時にファンの方も元気をくださったり、HKT48のメンバーもすごく仲がいいので、自粛期間はメンバー同士で電話しあったり。メンバーだけど友達みたいな存在です。明るい心でお互いを支え合っているところが、HKT48でよかったなって思いました。
オンライン演劇の舞台裏
―Zoomを使ったオンライン演劇「オンライン演劇公演『HKT48、劇団はじめます。」にも取り組みましたよね。しかも本村さんは衣装・美術のスタッフとして参加しました。
本村:美術はとても大変でした(笑)。役者を務めたメンバーの家に全部セットを集めなきゃいけなかったので、会える時に渡したり、家まで歩いて持って行ったり。大変だったんですけど、見てくださってる方が細かいこだわりに気づいて、反応してくれたことがすごく嬉しくて。だから頑張れました。
―アイドルは表舞台に立ってパフォーマンスをする立場だけど、そうじゃない裏方の役割を果たしたわけですよね。
本村:私たちがお仕事をいただいて、パフォーマンスする前の段階ですごく大変なことが行われてるんだなってことを実感できて、もう感謝しかなかったです。こんなに大変だったんだって。私たちの1日のためにたくさん話し合いして、これだけ考えてくれてたんだってことをそれからすごく考えるようになりました。いつも本当にすごいなぁって思いながら細かいところまで見ようって、いろんなところに注目するようにしてます。
本村碧唯(Photo by Masato Moriyama)
―松岡さんはどうですか?
松岡:私は俳優として2カ月くらい参加したんですけど、脚本を書いてるメンバーとか、裏方のメンバーは私より2、3カ月以上前から動いてて。稽古もメンバーがしてくれたんですよ。それも不思議な感じでちょっとソワソワしたけど、でもメンバーで作ったからこそ、今ちょっと言いにくいことを言ってくれてるのかなとか、気づくこともありました。あとは、1カ月くらい何もできない状態だったのが、やっとなんかできる!ってみんなの気持ちが一つになって進められたので、熱量もあった。あの時期にできたことはHKT48にとってすごく大きかったんじゃないかなと思います。
松岡菜摘(Photo by Masato Moriyama)
―そういうことを経験して、HKT48として表現の幅広さがまた広がったんじゃないですか。
松岡:びっくりしました。私は衣装とかも作れないし、美術とかもできないので、みんなこんなことできるんだ!って。
―いろんな個性が発揮できる機会があるのはいいですよね。では最後に、皆さんに劇場への想いをあらためて聞かせてもらえますか。
運上:私にとって劇場は、すごく特別なステージなんだなってより一層思いました。はじまりの場所だし、HKT48にとっても、これからもずっと大切にしていきたい場所です。
本村:私たちが初めてステージに立って、ファンの皆さんに近くで会えることを学んできた場所です。劇場がなかった時、やりたい時に何もできない状況を経験したので、今また新しい劇場がオープンして、ステージに立てて、こんな恵まれた環境があることは本当によかったなと思っているので、これからも大切にしていきたいです。私たちのおうちでもファンの方が帰ってくるおうちでもある場所にしていきたいなって思います。
田中:劇場を一つのホームだと思っているので、ファンの皆さんにとっても劇場がそういう場所になったらいいなって思います。原点でもあるし、新しく入ってきたメンバーたちも劇場でチャンスを掴める場でもあるので、ありがたい場所です。
矢吹:みんなも言ってたんですけど、おうちかなって思います。韓国に行ってみてあらためて感じたのは、やっぱり劇場っていう帰ってくる場所があるのは、すごく心強いことなんだなと。劇場があるからこそ落ち着いて帰ってこれる。そんな気がします。大切な場所です。
松岡:今週公演に行けるから仕事がんばるね!って言ってくれるファンの方も多いですし、逆に私たちも応援してくれる皆さんがいるから頑張れる。相思相愛じゃないですけど、いい関係性を築いていける場所なんじゃないかなって。皆さんに感謝を返せる場所であり、私たちが守っていきたい場所だなと思います。
―劇場があって常に舞台ができることは強みだと思うし、そこからまたいろんなことを発信できそうですね。10周年を経て、劇場とともにHKTイズムを継承していってください。
全員:がんばります!
Photo by Masato Moriyama
<INFORMATION>
『アウトスタンディング』
HKT48
EMI Records
12月1日発売
【通常盤CD】
TYPE-A
01. 突然 Do love me!02. 早送りカレンダー03. 意志04. 3-205. 君とどこかへ行きたい - つばめ選抜06. 君とどこかへ行きたい - みずほ選抜07. ぶっ倒れるまで08. 仮想恋愛09. カモミール / 10%10. キスの花びら / Chou11. 思い出にするにはまだ早すぎる12. SNS WORLD / 栄光のラビリンスCM選抜2021
TYPE-B
01. 突然 Do love me!02. 早送りカレンダー03. 意志04. 3-205. 君とどこかへ行きたい - つばめ選抜06. 君とどこかへ行きたい - みずほ選抜07. Just a moment / 幸せDAパンケーキ08. 大人列車はどこを走ってるのか? / 8%09. How about you? / Lit charm10. この道 / 森保まどか11. 思い出にするにはまだ早すぎる12. あっけない粉雪
TYPE-C
01. 突然 Do love me!02. 早送りカレンダー03. 意志04. 3-205. 君とどこかへ行きたい - つばめ選抜06. 君とどこかへ行きたい - みずほ選抜07. わたしのふるさと / 田中美久08. 会いたくて嫌になる / やっぱりみたらし団子09. 真っ赤なアンブレラ / 5期生10. 青春の出口11. 思い出にするにはまだ早すぎる12. 全然 変わらない
TYPE-D
01. 突然 Do love me!02. 早送りカレンダー03. 意志04. 3-205. 君とどこかへ行きたい - つばめ選抜06. 君とどこかへ行きたい - みずほ選抜07. 天使はどこにいる? / fairy w!nk08. 季節のせいにしたくはない09. いつだってそばにいる10. シンデレラなんていない11. 思い出にするにはまだ早すぎる12. HAKATA吸血鬼
【劇場盤 / ジェネレーション盤CD】
01. 突然 Do love me!02. 早送りカレンダー03. 意志04. 3-205. 君とどこかへ行きたい - つばめ選抜-06. 君とどこかへ行きたい - みずほ選抜-07. 僕の思いがいつか虹になるまで / さくらはなみく08. 誰より手を振ろう09. おしゃべりジュークボックス / 栄光のラビリンスCM選抜202010. UFO募集中11. 思い出にするにはまだ早すぎる
http://www.hkt48.jp/
【写真をもっと見る】HKT48の矢吹奈子、田中美久、運上弘菜、本村碧唯、松岡菜摘
11thシングル「早送りカレンダー」(2018年)から、14thシングル「君とどこかへ行きたい」(2021年)までの全シングル曲と、今年6月にHKT48を卒業した宮脇咲良の卒業ソング「思い出にするにはまだ早すぎる」を全形態に収録。アルバムリード曲は、IZ*ONEでの活動を終えHKT48に復帰した矢吹奈子が単独センターを務める「突然Do love me!」。J-POP meets ファンクなサウンドでHKT48の「これから」を示す軽快な曲に仕上がっている。今回は3期生の矢吹、田中美久、4期生の運上弘菜、10年の歩みを知る1期生の本村碧唯、松岡菜摘に話を聞いた。
矢吹:珍しく女の子目線での気持ちを歌った曲だと思います。今までは男の子の気持ちを歌った曲がHKT48には多かったので。女の子から男の子に向かって積極的にいく歌詞だから、秋元(康)先生からメンバーへ、活動に対して「自分から積極的に向かって行ってもいいんだよ」っていうメッセージが込められてるのかなって思っています。
松岡:イントロから疾走感があってボルテージが上がります。コンサートの一曲目が似合いそう。11年目に入る節目だということもあって、明るくて、爽やかでポップな感じ。ダンスもポップでかわいいよね。
矢吹:かわいい。リズム的にも一緒に踊りたくなるような曲です。
松岡:掛け声もあったり。
本村:早く声を出せるようになったらいいけど。
矢吹:今はできないですけど、いつか声を出せるようになったら、必ずパフォーマンスしたいです。
田中:いいなぁ……。
一同:?(笑)
田中:歓声が聞こえるライブを想像してみたら、いいなぁと思って(笑)。ファンの皆さんがまた声を出せるようになってコンサートでこの曲をやったら、さらに盛り上がるんだろうなって。
―この曲は矢吹さんの、8年ぶりのセンター曲なんですよね。
田中:8年ぶりかぁ!
矢吹:そうですね。「ウインク(ウインクは3回目)」以来の単独センターなので。8年……。
―8年ぶりに戻ってきたHKT48のセンターはどうですか?
矢吹:「ウインク」の時はデビューしてすぐだったので、良くも悪くもプレッシャーとかなかったんですよ。何も考えられなかったというか、先輩たちしかいない中だったので緊張しかなくて。今回センターって言われた時とは、感情的にはまったく違いますね。今回は、HKT48に帰ってきて自分の中で欲が増したというか、センターに立ちたいって思ってたので嬉しかったです。ちょっと不安もあったんですけど、この選抜のみんなでミュージック・ビデオを撮りながら、みんなを引っ張っていけるセンターになれたらいいなって思いました。
矢吹奈子(Photo by Masato Moriyama)
復帰した矢吹奈子の存在感
―IZ*ONEで経験したことをHKT48にフィードバックしたいという気持ちもありました?
矢吹:韓国でたくさんのことを学んで成長できたので、HKT48にも生かせたらなとは思っていました。でも……どうなんだろう。変わった感じしますか?
松岡:とっても変わった感じがする。今までの奈子は、どっちかっていうとついてきてくれる感じだったんですけど、HKT48に帰ってきて、引っ張ってくれるようになった。たくましくなって帰ってきたなって印象です。
田中:振り付けのレクチャーに私たちはリモートで参加して、奈子だけ先生に直接教わっていたので、ミュージックビデオの撮影当日に奈子がみんなに細かい振りを教えてくれたんです。それってちゃんと自分ができてないと教えられないじゃないですか。そこは本当にすごいなって思ったし、成長してるなって感じて。なんか上から目線みたいになってるんですけど(笑)、本当に尊敬する存在です。
運上:奈子さんが帰ってきてくださって、センターになってくださったのが本当に今のHKT48にとってありがたいです。注目してくださる方もすごく多くなるし、今回の曲も奈子さんがセンターで引っ張ってくださったからできた曲だと思います。自分もセンターポジションを経験していますが、これまで自分は何してきたんだろうって反省しちゃうくらいしっかり教えてくださるので、もっと吸収したいなって思ってます。
運上弘菜(Photo by Masato Moriyama)
―強力なメンバーが復帰したことで、勢いに弾みがつくと思いますし、すごく前向な2ndアルバムになりましたよね。1stアルバムはデビュー当時の元気でやんちゃなHKT48のイメージが強く出ていたと思うけど、2ndアルバムに収められた全形態共通曲を聴くと、HKT48の多様性がよく出ていますよね。曲のアプローチも様々ですし。
松岡:今回明るい曲が久々で、ここ5年くらいのシングルはかっこいい曲が多かったんです。「意志」とか「3-2」とか、デビュー当時にはなかった曲だった。HKT48の歴史の前編が1stアルバムだとしたら、後編が2ndアルバムだと思います。
矢吹:HKT48はなんでも挑戦するというか、かわいい系でもかっこいい系でも、どんな系統でももっといろんなジャンルに挑戦したいです。どんな方向で行く、というよりも、とにかく色々やってみたいなと思ってます。
―矢吹さんは自分が演者としてステージに立ってHKT48のみんなと一緒にパフォーマンスしてる時に、HKT48のポテンシャルの高さを実感することもありますか?
矢吹:あります。グループを自画自賛するみたいで恥ずかしいんですけど、本当にみんな表現力が豊かだから、どの曲でも似合うなって思います。
アルバムの中で思い入れのある曲
―田中さんはアルバムに収録されている曲で、特に思い入れのある曲はありますか?
田中:「わたしのふるさと」っていうソロ曲(通常盤 TYPE-Cに収録)は、3年前の総選挙ランクインをきっかけに、自分で作詞・作曲させていただいた楽曲なんです。どのシングルのカップリングにも入ってない曲で、YouTubeだけで聴ける曲なんです。それが今回のアルバムに入っていて、すごくびっくりしたし嬉しかったです。
―作詞・作曲には時間かかりました?
田中:地元が熊本なんですけど、想い入れのある熊本に向けて書いた曲なので、時間はかかったかなと思います。
―地元への想いは伝えられましたか?
田中:はい! 地元の方から「元気付けられました」って言葉をたくさんいただきましたし、ファンの方にも「熊本の良さを知れました」と声をいただきました。
田中美久(Photo by Masato Moriyama)
―本村さんは、思い入れのある曲はありますか?
本村:「How about you? / Lit charm」(通常盤 TYPE-Bに収録)です。私が自分でやりたいって考えて結成させていただけたダンスユニットの曲で、センターをやらせてもら えたんです。初めてのセンターだったのでファンの方もすごく喜んでくれましたし、私にとっても思い出深いです。
―松岡さんは?
松岡:私もユニットっていう点で被っちゃうんですけど、「キスの花びら / Chou」です。このユニットも私が考えて結成させていただけたんですが、選抜だけとかセンターだけじゃなく、いろんなメンバーにチャンスがあるって意味で、後輩たちにも、みんなが動いたらやりたいことが形になるよってことを伝えたくて、私とか碧唯が動いたので、そういう意味ではアルバムに残せてよかったなって思います。
―運上さんはどうですか?
運上:私は「早送りカレンダー」から選抜に入らせていただいているので、1stアルバムには4期生の曲以外、ほとんど参加できなかったんです。今回のアルバムには自分の声が入った曲を収録していただいているので、ファンの方には喜んでもらえるのかなって思います。思い入れのある曲だと、初めてのユニットで歌った「あっけない粉雪」という新曲がアルバムには入ってるので、それがすごく嬉しいです。
―1stアルバムを出した時(2017年)と比べてみると、今回のアルバムを取り巻く時代や状況はまったく違いますよね。こうやってHKT48が10年間続いてきたことに関してはどう思いますか?
本村:体感では一瞬のような感じなんですよね。
矢吹:でもしっかり歴史があるってことを、10周年という節目で振り返れているので。自分たちだけじゃ10年も続けられていないし、もちろん先輩グループがあるおかげではあるんですけど、後輩メンバーがたくさん入ってきてHKT48の歴史を作ってくれて、応援してくださる方がいる。HKT48のファンの方たちは、推しメンだけっていうよりも最初に箱推しでHKT48を好きになってくださることが多いので、そういうふうにまずはグループを好きになっていただけるような存在であり続けたいなって私は思います。
松岡:私も10年って考えれば長いと思うけど、体感的にはそんな感じは全然しなくて。もうそんなに経ったんだって感じです。今回のアルバムは後輩のメンバーたちが歌ってる曲がすごく増えたなぁって思います。選抜メンバー以外にもすごく魅力的なメンバーがたくさんいて、みんな頑張って一緒に進んでる感じがこのアルバムに出てるんじゃないかなって、収録曲が並んでるのを見て感じましたし、私も嬉しかったです。
―10年でアルバム2枚っていうのも、冷静に考えたらすごいですよね。シングルを主体としているグループとはいえ。
矢吹:今回「アルバム作るんだ!」って、私たち的には変化球でした。そろそろシングルがリリース出来れば嬉しいなって思ってたらまさかのアルバムだったので、私たちもびっくりしてます(笑)。
HKT48の普遍的な「強み」
―矢吹さんは一度グループから離れてますけど、客観的な目線で見てHKT48のいいところってどういうところだと思います?
矢吹:実はすごく大事なことなんですけど、メンバーが仲いいところとか? 広い楽屋でも、自然と輪になってるというか。それぞれ離れていても、気づいたらみんなでお話ししてることが多いですね。それってやろうと思ってできることじゃないと思うので、HKT48ならではの良さかなと。あとは、後輩がどんどん前に出てくるようになって、後輩たちの気持ちがちゃんと前に伝わってくるのがいいところだと思います。
―根本的なところは10年前と変わってないというか。
松岡:そうですね。その雰囲気って、もともとさっしー(指原莉乃)が作ってくれたものだったりするので、それは今も変わらず。いい意味であまり上下関係が存在しなくて、大家族のような感じです。
―HKTファミリーですね。しかも九州に根ざして活動していて、地元の人たちにも家族の力を還元できるわけだから、いい循環ですよね。
矢吹:それができていたら嬉しいです。
―コロナ禍になる前、コンサートや握手会を通してファンと直接コミュニケーションできていた頃を今振り返るとどういう気持ちになりますか?
運上:毎週・毎月会えるのが当たり前だったのに、突然パタって会えなくなって、コンサートもだし、握手会もできなくなってしまって。不安はありましたけど、それでも変わらずに応援してくださる方がいたので、本当にファンの方の愛に感謝しています。
―その時は何が支えだったんですか?
運上:SNSだったり、無観客のライブ配信もしていたので、それをファンの方が見てくださって「よかったよ」ってコメントしてくださったり。その一つひとつに支えられた時期はありました。
―田中さんはどうですか?
田中:会えない期間に気持ちが沈んでしまうこともありましたけど、逆にその期間があったからこそ、日々普通だと思っていた日常がありがたく思えるっていうか、当たり前じゃないんだなってことに気付かされました。
―劇場公演が再開してから、元通りになってきてるなって感じはあります?
田中:そうですね。今はお客さんを半分にしてやらせていただいてるんですけど、
もはやその、ファンの方が目の前にいてパフォーマンスをしている光景すら珍しく思えてきて。これでまたコールできたりするようになったら……。
矢吹:感動しそう。
田中:涙が出てきそう。どのアーティストさんもそうだと思うんですけど、エンタメ業界も今すごく大変だと思うから、これを乗り越えたらすごく明るくなるんじゃないかなと思いました。
―大変な時に周りに仲間がいたことは、やっぱり助けられたなって思いますか?
田中:本当にそれは思いました。会えない時にファンの方も元気をくださったり、HKT48のメンバーもすごく仲がいいので、自粛期間はメンバー同士で電話しあったり。メンバーだけど友達みたいな存在です。明るい心でお互いを支え合っているところが、HKT48でよかったなって思いました。
オンライン演劇の舞台裏
―Zoomを使ったオンライン演劇「オンライン演劇公演『HKT48、劇団はじめます。」にも取り組みましたよね。しかも本村さんは衣装・美術のスタッフとして参加しました。
本村:美術はとても大変でした(笑)。役者を務めたメンバーの家に全部セットを集めなきゃいけなかったので、会える時に渡したり、家まで歩いて持って行ったり。大変だったんですけど、見てくださってる方が細かいこだわりに気づいて、反応してくれたことがすごく嬉しくて。だから頑張れました。
―アイドルは表舞台に立ってパフォーマンスをする立場だけど、そうじゃない裏方の役割を果たしたわけですよね。
本村:私たちがお仕事をいただいて、パフォーマンスする前の段階ですごく大変なことが行われてるんだなってことを実感できて、もう感謝しかなかったです。こんなに大変だったんだって。私たちの1日のためにたくさん話し合いして、これだけ考えてくれてたんだってことをそれからすごく考えるようになりました。いつも本当にすごいなぁって思いながら細かいところまで見ようって、いろんなところに注目するようにしてます。
本村碧唯(Photo by Masato Moriyama)
―松岡さんはどうですか?
松岡:私は俳優として2カ月くらい参加したんですけど、脚本を書いてるメンバーとか、裏方のメンバーは私より2、3カ月以上前から動いてて。稽古もメンバーがしてくれたんですよ。それも不思議な感じでちょっとソワソワしたけど、でもメンバーで作ったからこそ、今ちょっと言いにくいことを言ってくれてるのかなとか、気づくこともありました。あとは、1カ月くらい何もできない状態だったのが、やっとなんかできる!ってみんなの気持ちが一つになって進められたので、熱量もあった。あの時期にできたことはHKT48にとってすごく大きかったんじゃないかなと思います。
松岡菜摘(Photo by Masato Moriyama)
―そういうことを経験して、HKT48として表現の幅広さがまた広がったんじゃないですか。
松岡:びっくりしました。私は衣装とかも作れないし、美術とかもできないので、みんなこんなことできるんだ!って。
―いろんな個性が発揮できる機会があるのはいいですよね。では最後に、皆さんに劇場への想いをあらためて聞かせてもらえますか。
運上:私にとって劇場は、すごく特別なステージなんだなってより一層思いました。はじまりの場所だし、HKT48にとっても、これからもずっと大切にしていきたい場所です。
本村:私たちが初めてステージに立って、ファンの皆さんに近くで会えることを学んできた場所です。劇場がなかった時、やりたい時に何もできない状況を経験したので、今また新しい劇場がオープンして、ステージに立てて、こんな恵まれた環境があることは本当によかったなと思っているので、これからも大切にしていきたいです。私たちのおうちでもファンの方が帰ってくるおうちでもある場所にしていきたいなって思います。
田中:劇場を一つのホームだと思っているので、ファンの皆さんにとっても劇場がそういう場所になったらいいなって思います。原点でもあるし、新しく入ってきたメンバーたちも劇場でチャンスを掴める場でもあるので、ありがたい場所です。
矢吹:みんなも言ってたんですけど、おうちかなって思います。韓国に行ってみてあらためて感じたのは、やっぱり劇場っていう帰ってくる場所があるのは、すごく心強いことなんだなと。劇場があるからこそ落ち着いて帰ってこれる。そんな気がします。大切な場所です。
松岡:今週公演に行けるから仕事がんばるね!って言ってくれるファンの方も多いですし、逆に私たちも応援してくれる皆さんがいるから頑張れる。相思相愛じゃないですけど、いい関係性を築いていける場所なんじゃないかなって。皆さんに感謝を返せる場所であり、私たちが守っていきたい場所だなと思います。
―劇場があって常に舞台ができることは強みだと思うし、そこからまたいろんなことを発信できそうですね。10周年を経て、劇場とともにHKTイズムを継承していってください。
全員:がんばります!
Photo by Masato Moriyama
<INFORMATION>
『アウトスタンディング』
HKT48
EMI Records
12月1日発売
【通常盤CD】
TYPE-A
01. 突然 Do love me!02. 早送りカレンダー03. 意志04. 3-205. 君とどこかへ行きたい - つばめ選抜06. 君とどこかへ行きたい - みずほ選抜07. ぶっ倒れるまで08. 仮想恋愛09. カモミール / 10%10. キスの花びら / Chou11. 思い出にするにはまだ早すぎる12. SNS WORLD / 栄光のラビリンスCM選抜2021
TYPE-B
01. 突然 Do love me!02. 早送りカレンダー03. 意志04. 3-205. 君とどこかへ行きたい - つばめ選抜06. 君とどこかへ行きたい - みずほ選抜07. Just a moment / 幸せDAパンケーキ08. 大人列車はどこを走ってるのか? / 8%09. How about you? / Lit charm10. この道 / 森保まどか11. 思い出にするにはまだ早すぎる12. あっけない粉雪
TYPE-C
01. 突然 Do love me!02. 早送りカレンダー03. 意志04. 3-205. 君とどこかへ行きたい - つばめ選抜06. 君とどこかへ行きたい - みずほ選抜07. わたしのふるさと / 田中美久08. 会いたくて嫌になる / やっぱりみたらし団子09. 真っ赤なアンブレラ / 5期生10. 青春の出口11. 思い出にするにはまだ早すぎる12. 全然 変わらない
TYPE-D
01. 突然 Do love me!02. 早送りカレンダー03. 意志04. 3-205. 君とどこかへ行きたい - つばめ選抜06. 君とどこかへ行きたい - みずほ選抜07. 天使はどこにいる? / fairy w!nk08. 季節のせいにしたくはない09. いつだってそばにいる10. シンデレラなんていない11. 思い出にするにはまだ早すぎる12. HAKATA吸血鬼
【劇場盤 / ジェネレーション盤CD】
01. 突然 Do love me!02. 早送りカレンダー03. 意志04. 3-205. 君とどこかへ行きたい - つばめ選抜-06. 君とどこかへ行きたい - みずほ選抜-07. 僕の思いがいつか虹になるまで / さくらはなみく08. 誰より手を振ろう09. おしゃべりジュークボックス / 栄光のラビリンスCM選抜202010. UFO募集中11. 思い出にするにはまだ早すぎる
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