劇場公演デビューから丸10年を迎えたHKT48。写真は14年のNHK紅白歌合戦で披露した「メロンジュース」の衣装。「早替え」が話題になった

写真拡大

福岡市を拠点に活動するHKT48が2021年11月26日、劇場デビューから丸10年を迎えた。本拠地の西日本シティ銀行HKT48劇場(福岡市中央区)で2日間にわたって「10周年記念特別公演」を開き、初期の「手をつなぎながら」公演(11〜13年)の1曲目「僕らの風」から、最新アルバム「アウトスタンディング」(21年12月1日発売)のリード曲「突然 Do love me!」まで100曲を披露。10年にわたる歴史を一気に振り返った。

公演では、3年ぶりの新規メンバー募集とコンサートツアーの開催も発表された。「チームH」キャプテンの松岡菜摘さん(25)は、若手メンバーの成長に触れる中で

「まだまだ10周年は...私的には納得いっていないというか、もっともっとHKT48だったら上にいけるんじゃないかと私は信じていたいので...」

などとあいさつ。この1〜2年、コロナ禍で活動が制約されたHKT48だが、新たな動きが発表されたことで、反転攻勢の11年目につなげたい考えだ。

2021年も大きかったコロナの影響

10周年のHKT48にとっても、この1年のコロナ禍の影響は大きかった。この1年を振り返ると、21年2月にメンバーが出演だけではなく演出や脚本などの「裏方」もこなすオンライン演劇プロジェクト「HKT48、劇団はじめます。 」(劇はじ)を上演。アイドルとしては異例の活動だとして話題になった。5月には新曲「君とどこかへ行きたい」を発売し、7月にはHKT48の楽曲をランキング形式で発表する「リクエストアワー」と呼ばれるコンサートを開いた。

1期生の卒業が目立った1年でもあった。日韓合同ユニットIZ*ONE(アイズワン)で活躍してきた1期生の宮脇咲良さん(23)と3期生の矢吹奈子さん(20)が5月にHKT48に復帰。そのうち宮脇さんは直後に卒業を発表し、6月の卒業コンサートを経て活動の場を韓国に移した。宮脇さん以外にも、同期の森保まどかさん(24)が5月に卒業、村重杏奈さん(23)も年内の卒業が決まっている。矢吹さんの復帰で田中美久さん(20)とのコンビ「なこみく」が復活する一方で、3人の1期生の穴をいかに補うかも課題だ。

3回行ったコンサート(森保さん卒業コンサート、宮脇さん卒業コンサート、リクエストアワー)では、定員の半分以下での開催を余儀なくされた。8月には多くのメンバーが新型コロナウイルスに感染し、一時期は活動休止状態に陥った。

「大好きなHKT48がここで終わらずに、10年、20年って...」

松岡さんの発言があったのは、11月26日の公演終盤、6期生のオーディションが発表された直後だ。HKT48が新規メンバーを募集するのは、18年の5期生オーディション以来3年ぶり。若手メンバーの成長に触れる中で、次のように話した。

「もっとみんなで上に上に、お互い引っ張り合って、まだまだ10周年は...私的には納得いっていないというか、もっともっとHKT48だったら上にいけるんじゃないかと私は信じていたいので、大好きなHKT48がここで終わらずに、10年、20年って、私が卒業したりしても、『ああ、みんな頑張ってるんだ』って思えるようなグループを自分たちで残していけるように頑張りたいなと思います」

11月27日の終演直後に報道陣の取材に応じた松岡さんは、「納得いっていない」理由のひとつにコロナ禍の影響もあるとした上で、AKB48は10周年までにドームコンサートを実現したことに触れた(AKB48は13年に福岡PayPayドーム(当時は福岡ヤフオク!ドーム)などでドームコンサートを行い、HKT48は姉妹グループの一員として出演)。その上で、次のように真意を説明した。

「私たちも『いつか立ちたい』という気持ちがあったんですけど、いつからか、こう言えなくなったというか...。それも、ちょっと自分たちにとって悔いというか、やっぱり1期生として、みんながもっと大きな夢を言えるようなグループを10年かかって私たちが作ってこれなかったので...。でも、まだまだここで終わらせたくはないな、という気持ちがあるし、後輩たちもすごく頼もしく育ってくれているので、みんなで力を合わせてもっともっと大きな目標を言えるようなグループになりたい、という気持ちで言いました」

「『家にいなきゃいけない状況で何ができるか』を葛藤した1〜2年」

新メンバー募集に加えて、HKT48にとっての明るい材料が、19年以来3年ぶりのコンサートツアーだ。22年4月の横須賀公演を皮切りに4公演を予定している。松岡さんにとっては「『家にいなきゃいけない状況で何ができるか』を葛藤した1〜2年だったので、やっとちょっとずついろんなことができるようになっていて、今日を迎えてからの嬉しいニュース」だ。

19年のツアーでは、3時間弱のコンサートのうち30分ほどかけて上演した寸劇「寸劇戦隊・指(ゆび)レンジャー」が話題になった。松岡さんいわく、「寸劇隊長」の村重さんが卒業してしまうため、「どうなるんだろう」。それでも「『ちょっと変わってるよね』みたいなのは、やっぱりやっていきたい」と意気込んだ。一緒に取材に応じた「チームKIV」キャプテンの本村碧唯さん(24)も「あほなことしたいけどね!」と笑顔を見せた。

19年のツアーのサブタイトルは「あの支配人からの、卒業。」だった。「支配人」だった指原莉乃さん(29)の卒業から2年半が経つ今、グループは指原さんから「卒業」できたのか。後輩メンバーの成長を背景に、松岡さんはグループとしての独り立ちに自信を見せた。

「やっぱり気持ちはずっとお姉ちゃんだったり、お母さんみたいな感情なので、気持ち的には卒業できてはいないんですけど...。でも、後輩たちがすごく、ぐんぐんぐんぐん伸びていっているのを見ると、そういう意味では卒業できているんじゃないかなというか...。パワーはどんどん膨らんでいるんじゃないか、というのは自分たちの中からは感じています」

「福岡の人ってあんまりアイドルに興味ないのかなっていう部分が...」

HKT48は20年春に運営会社がAKS(現・ヴァーナロッサム)から独立し、「マーキュリー」として運営されている。新会社は地元重視を打ち出しており、西日本シティ銀行やJR九州といった福岡を代表する企業の広告に起用され、ファン以外にも知られる機会が増えてきた。

ただ、松岡さんは

「福岡の人ってあんまりアイドルに興味ないのかなっていう部分が...、やっぱり10年前もそうですけど、今もあって...」

とも話す。HKT48のファンは「関東の方が多いのかなと思うときもある」として、まだ福岡に浸透する余地はあるとみている。松岡さんも福岡県出身。「地元を元気にしていくという思いで、まだまだ盛り上げていけたら」と意気込んだ。本村さんによると、広告での露出が増えるにつれて、友人や知人から「見たよ!」と伝えられる機会も増えたといい、「そういうのがもっともっと増えていけたらいいと感じます」と話した。

(J-CASTニュース編集部 工藤博司)