グラフィックデザイナーの西出弥加さんと訪問介護の仕事をする光さん夫妻は、夫婦ともに発達障害という特性をもちながら結婚。そして、結婚早々から別居という道を選んでいます。お互いに居心地のいい暮らしのために離れて暮らしていますが、今回は、夫が愛知県から東京都へ車で会いにきたお話についてつづってくれました。


夫の光さんと妻の弥加さん

運転が苦手だった発達障害の夫が、妻のために350キロかけて運転



発達障害同士で結婚した私たちは、お互いが居心地がいいようにするため別居中です。2〜3か月に一度、夫が東京に住む私のところに会いに来てくれます。いつもは新幹線を使うのですが、先日はわざわざ車で来てくれました。


じつは、夫はもともと運転が苦手で、教習所で講習の受け直しを何度もしたことがあったそうです。

私も最初は心配で、自分が運転した方が良いのではと思ったのですが、私のほうが10年以上ペーパードライバーだったため、自信がもてませんでした。
ということで、交通量が劇的に少ない場所で一度夫に運転を任せてみたのです。運転を頼んだ初日は田んぼ道を走ってくれたのですが、想像以上に丁寧な運転をするので安心できたというわけです。
それから毎日運転をしてくれて、次第に都会の道もスイスイ走れるようになりました。夫はいつも人一倍、安全運転を心がけていました。

結婚して3年目、何十回と長距離運転をしてくれた夫は、頼むといつも嫌な顔一つせずに笑顔で引き受けてくれました。以前は何でも私がやらねばと思っていたのですが、一つずつ任せていくことも大切だと思いました。
さすがに発達特性が強くてあまりにも運転ができない場合は私がしていたと思いますが、夫は運転に関しては家事よりずっと得意でした。

家事はキッチンが水浸しになったりなぜか野菜などが飛んでくるので、料理をするときは私が横にいて、できるだけ単純作業のみ頼んでいます。
「これができないのだから、これも苦手だろう」と勝手に決めつけず、まずは一度、安全な環境を確保して任せてみることは大切だなと、この数年で実感できました。

<文・イラスト/西出弥加 構成/西出光>

【西出弥加さん・光さん】



妻の弥加さんは東京在住の絵本作家、グラフィックデザイナー。1歳のときから色鉛筆で絵を描き始める。20歳のとき、mixiに投稿したイラストがきっかけで絵本やイラストの仕事を始める。オフィシャルブログ「私とリトルさやの徒然日記
」、Twitterは@frenchbeansaya